黒鍵だけで弾く:外れない音の並び
遊びを見つける執筆にClaudeを使用しています。

ピアノの前に座ったものの、どの鍵盤を押せば曲らしく聞こえるのか分からない場面を考えてみます。ドレミの並びを知らなくても、黒鍵だけを適当に押していくと、不思議と音楽らしく聞こえることがあります。その理由を、耳と手で確かめるのがこの記事の目的です。 黒鍵は1オクターブに5つ並んでいます。この5つだけを使った音階は「五音音階(ペンタトニック)」と呼ばれ、世界の多くの音楽で使われてきました。ここで確かめたい問いは、黒鍵だけなら、どの順番で弾いても本当に外れて聞こえないのか。外れないとしたら、なぜかという点です。 道具は、ブラウザで遊べる「雨音のピアノ」です。キーボードの A W S E D F T G Y H U J で弾けるので、ピアノの経験は要りません。結果は読む前に、先に自分の耳で出してください。この記事は答えを書かず、答えの出し方を手順にしています。
先に確かめること:黒鍵のキーはどれか
「雨音のピアノ」のキーは、A W S E D F T G Y H U J の12個です。ピアノの1オクターブは白鍵7つと黒鍵5つの計12鍵です。左から順に白・黒・白・黒・白・白・黒・白・黒・白・黒・白と並ぶので、この12個のキーが1オクターブに当たると考えられます。
その対応だと、黒鍵に当たるのは W、E、T、Y、U の5つです。音名ではド♯、レ♯、ファ♯、ソ♯、ラ♯にあたります。A、S、D、F、G、H、J は白鍵側のキーです。
ただし、画面上の鍵盤の見え方や、どのキーがどの鍵盤を光らせるかは、作品を開いて確かめてください。この記事の手順は、W、E、T、Y、U を押したとき黒い鍵盤が反応することを前提にしています。違っていたら、画面に合わせて読み替えてください。
準備として、次の3つを決めておきます。
- 音色:フェルトとガラスの2種類から一つ選びます。最初はフェルトで始めるのがおすすめです。やわらかい音のほうが、音のぶつかりを聞き取りやすいからです。
- タッチ:3段階から中くらいを選びます。強弱の差が混ざると、音の並びの違いが分かりにくくなります。
- 余韻:最初は短いほうにします。後の手順で長くして、音の重なりを聞き比べます。
手順:黒鍵だけで弾く五つのステップ
ステップ1:5音を一つずつ、ゆっくり押す
W、E、T、Y、U を左から順に、1音ずつ約1秒かけて押します。次の音を押す前に、前の音が消えるまで待ちます。1つ目と2つ目は近く、2つ目と3つ目は少し離れていると感じるはずです。音と音の距離の感覚をつかむのがこのステップの目的です。
ステップ2:順番を入れ替えて弾く
次に、W→T→E→U→Y のように、好きな順で5音を弾きます。ここでは「この順番は気持ち悪い」と感じる並びがあるかどうかを探します。何通りか弾いて、違和感が出た並びはメモしておきます。
ステップ3:終わる音を決めて短いフレーズを作る
次に、4音から8音の短いフレーズを弾きます。最後の音は T(ファ♯)、E(レ♯)、W(ド♯)のいずれかに決めて、3回に分けて弾きます。
- 1回目:最後の音を T にして、短いフレーズを作ります。
- 2回目:途中の音は変えずに、最後だけ E にします。
- 3回目:同じく最後だけ W にします。
「ここで終わった感じがする」「宙に浮いた感じがする」といった印象を、一言で書き留めます。黒鍵の5音は同じなのに、終わる音で印象が変わるかどうかを確かめます。
音楽の説明では、ファ♯から数えると明るい響きの五音音階になり、レ♯から数えると少し陰りのある響きの五音音階になる、と言われます。同じ5音を使っているので、どの音を中心に聞くかの違いです。それが自分の耳にどう聞こえるかが確かめるポイントです。
ステップ4:余韻を長くして、音を重ねる
余韻を長いほうに切り替えて、同じフレーズを少し速めに弾きます。前の音が残っているうちに次の音が重なります。重なった響きが濁って聞こえるか、すっと溶け合うかを聞いてください。
この重なりこそ、五音音階の特徴が出る部分です。白鍵と黒鍵を全部使う場合は、隣り合う音がぶつかって濁りやすくなります。黒鍵だけの場合はどうなるか、ここで確かめます。
ステップ5:録音して聞き返す
「雨音のピアノ」には、30秒・128音までの録音とその場での再生があります。ステップ3か4のフレーズを録音して、弾いた直後ではなく少し時間をおいてから再生してください。弾いている最中は、狙った音を探すことに気持ちが向きがちです。聞き返すと、純粋に音の並びだけを評価できます。
録音は画面を開いている間だけ残ります。ページを閉じたり再読み込みしたりすると消えるので、記録として残したいときは、後述の表に言葉で書き留めておいてください。
外れない理由を音程で見る
黒鍵の5音を半音の数で表すと、隣り合う音の間隔は次の並びになります。
- ド♯ → レ♯、半音の数:2、呼び名:長2度(全音)
- レ♯ → ファ♯、半音の数:3、呼び名:短3度
- ファ♯ → ソ♯、半音の数:2、呼び名:長2度
- ソ♯ → ラ♯、半音の数:2、呼び名:長2度
- ラ♯ → 次のド♯、半音の数:3、呼び名:短3度
間隔は2か3だけで、半音(1)が一つもありません。隣り合う白鍵同士や、白鍵と黒鍵の組み合わせにある半音は、同時に鳴らしたり余韻が重なったりすると濁りやすい関係です。五音音階には、その関係が最初から入っていません。
5音のどの2つを選んでも、半音の差や、6半音の差(三全音と呼ばれる不安定な間隔)は出てきません。ステップ4で音を重ねても濁りにくいはずなのは、このためと考えられます。ただし、濁りにくいことと、旋律として魅力的であることは別の話です。外れにくいだけで、いつも名旋律になるわけではありません。
白鍵を混ぜて差を聞き比べる
「黒鍵だけだと外れない」を確かめるには、白鍵を1つ混ぜた場合との比較が有効です。ブラウザで動く最小のコードを用意しました。下のコードを test.html という名前で保存して、ブラウザで開いてください。外部ライブラリは不要で、通信もしません。
<button id="a">黒鍵だけのフレーズ</button>
<button id="b">一音だけ白鍵に変えたフレーズ</button>
<button id="r">黒鍵からランダム8音</button>
<script>
const black=[61,63,66,68,70,73,75];
let ctx;
function note(m,t){
const o=ctx.createOscillator(),g=ctx.createGain();
o.type="triangle";
o.frequency.value=440*Math.pow(2,(m-69)/12);
g.gain.setValueAtTime(0.0001,t);
g.gain.exponentialRampToValueAtTime(0.3,t+0.02);
g.gain.exponentialRampToValueAtTime(0.0001,t+0.9);
o.connect(g).connect(ctx.destination);
o.start(t);o.stop(t+1);
}
function play(list){
ctx=ctx||new AudioContext();
list.forEach((m,i)=>note(m,ctx.currentTime+0.1+i*0.4));
}
a.onclick=()=>play([61,63,66,68,70,68,66,63]);
b.onclick=()=>play([61,63,66,68,70,69,66,63]);
r.onclick=()=>play(Array.from({length:8},
()=>black[Math.floor(Math.random()*black.length)]));
</script>数字は MIDI ノート番号という音の番号で、61 がド♯、63 がレ♯、66 がファ♯、68 がソ♯、70 がラ♯です。1つ目と2つ目のボタンの違いは、6番目の音だけです。黒鍵の 68(ソ♯)が、白鍵の 69(ラ)に変わっています。ラは直前のラ♯(70)と半音の関係にあります。
試す順番は次のとおりです。
- 「黒鍵だけのフレーズ」を3回聞きます。
- 「一音だけ白鍵に変えたフレーズ」を3回聞きます。
- 違いを感じた場所(何番目の音か)を書き留めます。
- 「ランダム8音」を5回以上押して、どれくらい外れて聞こえるかを数えます。
音が出ないときは、ボタンを押したあとでブラウザの音量とタブのミュートを確認してください。音は、ボタンを押した瞬間に初めて鳴る作りにしています。ブラウザは、利用者の操作の前に音を出すことを制限しているためです。
記録の取り方と結果の読み方
感想が曖昧にならないよう、次の形式で記録します。紙でもメモアプリでも構いません。
- 1、使った音:黒鍵のみ、終わる音:T、余韻:短、印象(一言):、外れた感じ(0〜2):
- 2、使った音:黒鍵のみ、終わる音:E、余韻:短、印象(一言):、外れた感じ(0〜2):
- 3、使った音:黒鍵のみ、終わる音:W、余韻:短、印象(一言):、外れた感じ(0〜2):
- 4、使った音:黒鍵のみ、終わる音:T、余韻:長、印象(一言):、外れた感じ(0〜2):
- 5、使った音:白鍵を1つ混ぜる、終わる音:T、余韻:長、印象(一言):、外れた感じ(0〜2):
「外れた感じ」は、0を「全く感じない」、1を「少し気になる」、2を「はっきり外れた」とします。基準を最初に決めておくと、後から見返したときに比べられます。各条件は最低3回ずつ弾き、毎回同じ点数でなくても構いません。回ごとのばらつきも情報です。
結果は、次のように読んでください。
- 黒鍵のみの試行が0〜1に集まっているなら、「外れにくい」という説明が自分の耳でも確かめられたことになります。
- 黒鍵のみでも2が出た場合は、音の高さではなく、リズムや強弱、速さが原因の可能性があります。タッチを一定にして、同じ速さで弾き直してください。
- 終わる音で印象が変わる場合は、「中心になる音」の感覚が自分の耳にあるということです。変わらない場合も、慣れの問題かもしれないので、日を変えて再度試す価値があります。
- 白鍵を混ぜた試行で外れた感じが増えたなら、半音の関係が濁りの原因だという説明と合います。増えなかったなら、混ぜた音の前後との関係や、速さが影響しているかもしれません。
起こりやすい誤りも挙げておきます。
- キーの対応を確かめずに始めて、白鍵を押していた。W、E、T、Y、U 以外が混じっていないか見直してください。
- 一度に条件を二つ以上変えた。比べるときは、終わる音、余韻、白鍵の混入のうち、一度に一つだけを変えてください。
- 弾いた直後の印象だけで判断した。ステップ5の録音で聞き返すと、見落としに気づけます。
- 音域を途中で変えた。Z と X で音域を動かせますが、比較の途中では変えず、同じ音域で比べてください。
次の行動
まず「雨音のピアノ」を開き、W、E、T、Y、U の5音だけで8音のフレーズを3つ作って録音し、聞き返してください。余裕があれば、フレーズの記憶ゲームにも進めます。3音から8音へ育つフレーズを聞いて、自分で覚えて返すゲームです。お手本の音がどの範囲から選ばれるかは作品側で決まっているので、黒鍵だけとは限りません。作品を開いて、実際に鳴る音を確かめてください。手応えがあれば、「WAVE / WAVE」の16ステップに5音だけを並べる遊び方も、同じ問いの別の確かめ方になります。



