MCPとは何か:ゲーム開発でAIにツールを使わせる仕組み
遊びをつくる執筆にClaudeを使用しています。

AIにコードを書いてもらう体験は、もはや珍しくありません。しかしチャット欄に「このゲームのスコアをファイルに保存して」と頼んでも、AIは実際にファイルを操作できません。AIが返すのはあくまでコードの提案であり、実行するのは人間です。MCP(Model Context Protocol)は、この「提案するだけ」という壁を取り除くための規格です。 MCPは、AIモデルが外部のツールやデータソースを呼び出すための共通のインターフェース仕様で、Anthropicが2024年に公開しました。ひとことで言えば「AIがどのようにツールを呼び出すかを統一したルール」です。この規格に沿ってサーバーを用意すれば、AIはファイルの読み書き・コード実行・APIの呼び出しなど、様々な操作を自分の判断で順番に実行できるようになります。 ゲームを作る立場からすると、MCPが面白いのは「AIに作業の流れごと任せられる」点にあります。「敵キャラのパラメータをJSONで生成して、そのままファイルに保存して、プレビュー用のHTMLも更新して」という一連の手順を、人が都度コピー&ペーストしなくても進められます。この記事では、MCPの仕組みを理解するために必要な概念を整理し、ゲーム開発のどの場面で役立つかを具体的に示します。
MCPが解決している問題
従来のAIアシスタントは「会話」の外に出られませんでした。コードを提案する・説明するという形にとどまり、実際のファイルシステムやAPIには触れられません。開発者はAIの返答を読んで、自分でエディタに貼り付け、ターミナルで実行するという手順を繰り返します。
この手順は小さな作業では問題になりませんが、規模が大きくなると負担になります。たとえばステージデータを50個生成してそれぞれのJSONを保存する、複数のスプライト定義ファイルを読み込んで矛盾を検出する、といった作業では、AIが出力した結果を人が何度も転記することになります。
MCPが提供するのは、AIがこうした「ツールの呼び出し」を宣言し、ホスト(AIを動かす環境)がその呼び出しを受け取り、実際の処理を実行して結果を返す、という一連のやり取りの仕様です。AIそのものが直接ファイルを触るわけではなく、「ツールを呼んでほしい」というリクエストをホストに渡し、ホスト側が実行するという構造です。この分離が安全性の観点でも重要です。
三つの登場人物:ホスト・クライアント・サーバー
MCPを理解するうえで押さえておきたい用語が三つあります。
ホストはAIが動いている環境です。Claude Desktopや各種のAI対応エディタがこれに当たります。ユーザーはホストを通じてAIと会話します。
MCPサーバーはツールを提供するプログラムです。「ファイルを読む」「コマンドを実行する」「特定のAPIを叩く」といった機能を、MCPの仕様に沿った形で公開します。サーバーといっても必ずしもネットワーク越しに動くわけではなく、同じマシン上でローカルプロセスとして起動するケースが多いです。
クライアントはホストの内側にあり、MCPサーバーと通信する役割を担います。ユーザーが意識することは少ないですが、ホストとサーバーをつなぐ橋渡し役です。
ゲーム開発の文脈に置き換えると、「Claude Desktopでゲームの仕様を相談しながら、ファイル操作のMCPサーバーを使ってアセット定義を直接書き出す」という使い方が典型例です。この場合、Claude Desktopがホスト、ファイル操作機能を提供するプログラムがMCPサーバーです。
ゲーム開発の具体的な使い道
MCPが実際に役立つ場面を、HTMLゲームの制作を例に挙げます。
アセットデータの生成と保存
ステージ構成データやキャラクターパラメータをJSONで管理しているとき、AIに「ステージ1から10のデータを生成してstages/ディレクトリに保存して」と依頼すれば、ファイル操作のMCPサーバーを通じてそのまま書き出せます。AIが内容を提案→人が確認→保存、という手順よりも素早く進められます。
コード整合性のチェック
複数のJavaScriptファイルにまたがってゲームロジックを書いているとき、AIにすべてのファイルを読ませて「このキャラクターIDは各ファイルで一致しているか確認して」と頼めます。ファイルを読むMCPサーバーがあれば、AIは自分で複数ファイルを参照しながら矛盾を報告できます。
反復テストの自動化
ゲームロジックの単体テストをNode.jsで書いているなら、コード実行のMCPサーバーを用意することでAIがテストを走らせて結果を確認し、失敗したテストに対して修正を試みるという繰り返しを自律的に行えます。
注意すべき点
ツールを実行できるということは、意図しない操作も起きうるということです。MCPサーバーが触れるディレクトリやAPIの範囲を必要最小限に絞る、重要なファイルは書き込み禁止にする、実行前に確認を求める設定を使う、といった対策は開発環境の設計段階で決めておくべきです。AIが自律的に動く範囲が広いほど、境界の設計が重要になります。
自分で試すための最初のステップ
MCPを初めて試すなら、既存の公開サーバーから始めるのが確実です。Anthropicが参照実装として公開している「Filesystem MCP Server」は、指定したディレクトリのファイルを読み書きする機能を提供しており、Claude Desktopと組み合わせてすぐに試せます。
セットアップの大まかな手順は次のとおりです。
- Claude DesktopのMCP設定ファイル(claude_desktop_config.json)に使用するサーバーのコマンドと引数を記述します。
- Claude Desktopを再起動すると、設定したMCPサーバーが起動し、AIがツールを使えるようになります。
- チャットで「このディレクトリのファイル一覧を教えて」と頼むと、AIがファイル操作ツールを呼び出して結果を返します。
設定ファイルの書き方やサーバーごとのオプションは、各サーバーの公式ドキュメントで確認してください。バージョンによって設定項目が変わることがあるため、最新の手順は公式情報を参照するのが安全です。
自分でMCPサーバーを作ることも難しくありません。Node.jsまたはPythonで公式のSDKを使えば、「特定のゲームエンジンのAPIを叩く」「自社のアセット管理システムと連携する」といった独自ツールを数十行程度のコードで作れます。既存のツールでカバーできない作業が出てきたタイミングで検討する価値があります。
MCPを使うかどうかの判断基準
MCPの導入がコストに見合うのは、次のような条件が重なる場合です。
- AIとのやり取りで発生する転記・コピペの手順が繰り返し発生している
- 参照・更新するファイルやAPIが複数あり、AIに文脈ごと持たせたい
- 作業のパターンが安定していて、AIが判断を誤ったときのリカバリーが容易
逆に、単発のコード生成や、ファイル操作を伴わない設計の相談には、通常のチャットで十分です。MCPはAIに「実行の権限」を与える仕組みである以上、使う範囲をよく考えて導入することが前提になります。
次の行動
まずAnthropic公式のMCPドキュメントとFilesystem MCP Serverの手順書を読み、ローカル環境でファイル読み書きだけを試してみてください。小さな範囲で動作を確認してから、ゲームのアセット生成や整合性チェックへ応用範囲を広げると、安全に使いこなせるようになります。MCPを使って生成・整備したHTMLゲームは、そのままアソバースに投稿できます。
参考資料
- Anthropic MCP公式ドキュメント(Model Context Protocol specification)
- MCP公式GitHubリポジトリ(anthropics/model-context-protocol)
- Claude Desktop ユーザーガイド(MCP設定の項)

