公開から一年、最初の版を遊び直すと何が見えるか
遊びを届ける執筆にClaudeを使用しています。

公開から一年がたった自作ゲームの、最初のZIPファイルを見つけた場面を考えてみます。いまの版は、何度も手を入れたので細部まで頭に入っています。ところが初版は、どんな画面から始まり、どこで詰まりやすく、何を遊ばせたかったのかを、思い出せる範囲でしか語れません。 この記事で確かめたいのは、初版と現在を同じ条件で並べたとき、何が見えるかです。機能が増えたのか、迷う箇所が減ったのか、あるいは変えたつもりのない核がずれていないか。記憶で振り返ると「良くなったはず」という結論に寄りがちなので、並べて遊ぶための準備と読み方を順に示します。結果は作品ごとに違うため、答えは読者自身の比較から出ます。
初版を「遊べる状態」で取り出す
最初に確認するのは、初版そのものが手元に残っているかどうかです。アソバースでは公開内容の更新ができますが、更新前の版を公開中の画面から取り出せるとは案内されていません。初版は自分の手元にあるものを探します。
探す順番の例は次のとおりです。
- 投稿時にアップロードしたZIPまたはHTMLファイル(ダウンロードフォルダや外付けの保存先)
- バージョン管理(Gitなど)を使っていた場合の、最初の公開に対応する記録
- 制作用フォルダのバックアップ
どれも見つからない場合は、今回の比較は諦めて、今日から保管を始めるのが現実的です。公開のたびにZIPを日付つきで残すだけで、来年は同じ比較ができます。
見つかったら、フォルダを分けて開きます。アソバースのアップロードは直下の index.html が入口で、素材は相対パスで読む決まりなので、ZIPを展開してその index.html をブラウザで開けば、おおむね動くはずです。外部サーバーに依存する作りにしていた場合は、動かない部分が出ます。その場合は「動かない理由」も初版の記録として書き留めておきます。
比較用に、現在の版も別フォルダにコピーして同じ方法で開きます。公開ページで遊ぶ現在の版と、手元で開く初版とでは、表示される枠や環境が少し違います。条件をそろえるために、両方を手元のファイルから開くのが公平です。
初回の3分を並べる
比べる場面は、遊び始めてからの最初の3分に絞ります。プレイヤーが続けるか離れるかを決めやすいのが、この時間帯だからです。
自分では測れない理由
作った本人は、画面のどこを押せばよいかを知っています。そのため、初版の迷いやすさを自分の操作から測ることはできません。ここは初めて見る人に頼みます。
- 初版を遊ぶ人と現在の版を遊ぶ人は、別の人にします。同じ人が両方を遊ぶと、2回目は経験の差が結果に混ざります。
- 説明はしません。「遊んでみてください」とだけ伝え、横で口を挟みません。
- 画面録画を残します。許可を得たうえで、操作と表情が見える形にします。
記録するもの
1人につき1版を1回、可能なら各版2〜3人で行います。人数が少ないので、数字は傾向を見るための材料にとどめます。記録の単位は次のとおりです。
- 最初の操作までの時間、単位:秒、見るポイント:起動から最初の入力までの長さ
- 手が止まった箇所、単位:回数と場所、見るポイント:5秒以上動きがなかった場面
- 想定外の操作、単位:回数と内容、見るポイント:作者が意図しなかった押し方
- 3分後の状態、単位:続けている/やめた、見るポイント:本人の言葉もメモ
読み方の目安
- 初版のほうが最初の操作まで早い場合:現在の版で足した説明や選択画面が、入口を重くしている可能性があります。
- 現在の版のほうが手が止まる回数が少ない場合:足した案内が効いていると読めます。ただし、止まる場所が別の箇所に移っただけではないかも確かめます。
- 両方で同じ場所で止まる場合:一年間気づかなかった未解決の課題です。次の更新の最優先候補になります。
プレイ回数の数字を使って比べたくなることもあります。アソバースのプレイ回数は作品の起動を実測した回数で、人数ではありません。同じ端末と作品の30分以内の再起動は重複として除かれます。更新前後の増減は、公開ページの見え方や掲載位置などの影響も受けるため、「版の良し悪し」を示す証拠にはなりません。補助的な材料として扱います。
足したもの、引いたもの、直したもの
初版と現在の差を、感覚ではなく分類して書き出します。ファイルの差分ツールを使うか、両方を遊んで気づいた違いを一つずつ挙げます。分類は次の4つです。
- 足した、問い:新しい機能や画面は、誰のどの困りごとに答えたか、確かめ方:追加した日の理由を探す
- 直した、問い:直したのは作者の不満か、遊んだ人の不満か、確かめ方:修正前の挙動を初版で再現する
- 説明を増やした、問い:説明がなくても伝わる設計にできなかったか、確かめ方:説明を隠して初見の人に遊んでもらう
- 消した、問い:消した要素を、今の版が代わりに満たしているか、確かめ方:初版でその要素が果たした役割を書く
「足した」の欄だけが長くなるのは、よくある偏りです。引いたものを記録することで、一年間の判断の癖が見えます。
比較の軸を考える例として、アソバースの公式作品を見ます。13本の公式作品は、v1.1で難易度・ヒント・記録などが拡張されたと案内されています。たとえば「かたちのあいだ」には、次の一手のヒント(最短とは限りません)、一手戻す(手数は減りません)、時計の一時停止があります。これらは「詰まったときの出口を用意する」という方向の足し算だと、設計から読み取れます。一方で、初版がどうだったか、足したことで遊び味がどう変わったかは、確認済みの情報にありません。気になる場合は作品を開いて、ヒントを使う場合と使わない場合で手触りがどう違うかを確かめてください。
自作でも同じ問いを立てられます。助けを足したとき、助けなしで遊べる道は残っているか。「小さな軌道」が予測の点線を消して挑めるようにしている点は、足した助けを任意にする設計の一例です。
変わらなかった核を一行で書く
差分を並べたあとは、逆の問いを立てます。変わらなかったものは何か。
手順は簡単です。初版を遊んだ直後と、現在の版を遊んだ直後に、「このゲームは何をする遊びか」を一文で書きます。できれば初見の人にも、遊んだあとに同じ一文を書いてもらいます。
読み方の例は次のとおりです。
- 二つの一文がほぼ同じ:核は保たれています。追加した機能は、その核を支える方向に働いています。
- 二つの一文が違う:どちらが意図した姿かを決めます。意図せず変わっていたなら、機能追加の積み重ねで中心がずれた可能性があります。
- 初見の人の一文が作者の一文と違う:作者の意図が画面から伝わっていません。タイトル、最初の画面、説明文を見直す材料になります。
一文を書くときは「〜を〜して〜を目指す」のように、動詞を入れます。「楽しいパズル」では比較になりません。
もう一つ、アソバースの「紹介文と遊び方を作成」で作れる下書きは、公開済みURLや検証済みのアップロードを読み取って作られるものです。これを現在の版で試して出てきた説明と、自分で書いた一文を比べると、外から見た姿とのずれが見える場合があります。ただし、下書きは「この文章を使う」を押すまで反映されないため、比較の材料として眺めるだけで構いません。回数制限(利用者ごとに1時間3回)もあるため、使う回数は絞ります。
古いセーブと、遊び直す人への配慮
一年たつと、初版時代のセーブデータを持つプレイヤーがいるかもしれません。保存形式を変えたとき、古いデータを読めなくなると、続きから遊べなくなります。
アソバースの公式作品では、古い保存(version 1)を新しい形式(version 2)へ移行する扱いが案内されています。自作でも同じ考え方が使えます。保存データに版番号を含め、読み込み時に新しい形式へ変換する関数を一つ置く形です。次は仮の例で、公式作品の実装とは関係ありません。
<script>
// 仮の保存形式:初版は { score }、現行版は { version: 2, best }
function migrate(data) {
if (!data || typeof data !== "object") {
return { version: 2, best: 0 };
}
if (data.version === 2) {
return data;
}
// 版番号なし、または version 1 の古いデータ
return { version: 2, best: Number(data.score) || 0 };
}
console.log(migrate({ score: 120 }));
console.log(migrate({ version: 2, best: 300 }));
console.log(migrate(null));
</script>ブラウザで開いてコンソールを見ると、古い形式も新しい形式も同じ形で返ることを確かめられます。実際の作品に組み込む前に、初版が書き出していた実データを入力して試してください。
保存先にも注意が要ります。アップロードした作品内の localStorage と sessionStorage は一時メモリー用の互換処理で、長期の保存先としては想定されていません。進行を残したい場合は、アップロード作品に自動で追加されるSDKのクラウドセーブ(作品ごとにJSONで128KiBまで)を使う設計にします。URL投稿の作品は、作者がSDKを読み込むと使えます。使い方の詳細は、現在の案内で確認してください。なお、ゲストの進行は端末内に保存され、ログイン後のアカウントへ自動では混ざりません。初版時代に遊んでいた人の進行が、端末側に残っている場合があることも頭に置いておきます。
次の行動
まず、初版のファイルが手元にあるかを確認し、なければ今日の版をZIPで日付つきに保管してください。見つかったら、初見の人に初版と現在の版を1回ずつ別々に遊んでもらい、最初の3分の記録と「何をする遊びか」の一文を集めます。そのうえで、足したもの・直したもの・消したものを表に書き出し、変わらなかった核と照らし合わせてください。
