最初の公開版に何を入れ、何を入れないか:初版の範囲の決め方
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手元のブラウザゲームがほぼ遊べる状態になり、公開ボタンの前で手が止まる場面を考えてみます。ステージはあと2面作れそうです。効果音も差し替えたく、ハイスコアの保存や難易度の切り替えも気になります。「これが揃うまでは出せない」と思い始めると、公開日は少しずつ先に延びます。 ここで決めたいのは、機能を足す順番ではありません。「初版は何を確かめるための版なのか」という、初版の役割です。役割が決まれば、入れるものと入れないものは機械的に近い形で仕分けできます。 この記事では、初版の範囲を決める手順を、仮定の場面と公式作品の設計から読み取れることを手がかりに組み立てます。実際に公開した結果の数字は出てきません。最後まで読めば、自分のゲームに当てはめて範囲を書き出せる状態になります。
初版の定義を一文で書く
範囲を決める前に、初版の目的を一文で書きます。ポイントは「何を完成させるか」ではなく「何を知りたいか」で書くことです。
- 悪い例:「全10ステージと設定画面とランキングを備えた完成版を出す」
- 良い例:「最初の3ステージだけで、遊び手が操作を理解して先へ進みたくなるかを知る」
後者は、確かめたいことが一つに絞れています。ここでの「3ステージ」「先へ進みたくなる」は仮の例です。自分のゲームでは、確かめたい問いに合わせて言い換えてください。
一文を書くときの条件は三つあります。
- 問いが一つであること。「操作も難易度も世界観も確かめたい」は三つの問いです。
- 遊び手の行動で判断できること。「最後まで遊ばれるか」「もう一度始められるか」のように、観察できる形にします。
- 公開後に直せる範囲であること。直せないものは、初版に入れる前によく考えます。
この一文が、以降の仕分けの物差しになります。
機能を三つの箱に仕分ける
次に、思いついた機能をすべて書き出し、三つの箱に分けます。
- 必須、判断の問い:これがないと、初版の問いに答えが出ませんか、例:基本の操作、最初の数ステージ、失敗と再挑戦の流れ
- あとで、判断の問い:問いの答えを見てから決めても間に合いますか、例:追加ステージ、難易度の切り替え、ヒント、効果音の作り込み
- 入れない、判断の問い:今の環境や条件では実現しにくい、または問いに無関係ですか、例:サーバーが必要な機能、問いと関係しない演出
仕分けで迷いやすいのは「あとで」と「必須」の境目です。次の質問で切り分けます。
- この機能がなくても、遊び手は初版の問いに対する反応を示せますか。示せるなら「あとで」です。
- この機能を後から足すと、既存の作りを大きく壊しますか。壊すなら、初版で土台だけ用意します。たとえば、ステージのデータを配列にまとめておけば、後からステージを足すのは簡単です。
つまり「あとで」の箱に入れるのは、機能そのものであって、機能を受け入れる構造は含みません。構造だけを初版に入れ、中身は後回しにするのが現実的な落としどころです。
公式作品の設計から読み取れる範囲の切り方
アソバースの公式作品には、範囲の切り方を考えるヒントがあります。ここで挙げるのは、確認済みの仕様から読み取れることだけです。意図や経緯は、作品を開いて確かめてください。
機能が使える場面を絞る
「潮目のオセロ」には、理由付きヒントや一手戻す機能があります。ただし、これらが使えるのはひとり対局だけで、友達との招待リンク対局では使えません。機能を足すときに「どのモードに効かせるか」を分けて考えている、と読み取れます。初版でも、ヒントを全モードに入れるのではなく、まず一つのモードに限る判断ができます。
同じ中身で厚みを変える
「時計じかけの台所」には、時間制限なしの見習いと、1皿28秒・配膳6秒・ミス3回までの本番があります。料理やレシピの中身を増やさなくても、制限の有無で遊び方が二つに分かれています。初版で素材が少ない場合、遊びの厚みはルールの側で変えられるという例として参考になります。
上限を決める
「余白の庭」は、置けるものが最大80個です。時間制限もありません。上限が仕様に含まれているので、制作側は「何個まで耐えられればよいか」を決めて作れるはずです。上限をどう決めるかは自作でも使える考え方です。なぜ80なのかは、作品を開いて確かめてください。
保存を入れない判断
13作品のうち、保存があるのは「余白の庭」「WAVE / WAVE」「かたちのあいだ」の3作品です。残る10作品の記録や録音は、画面を開いている間だけ残ります。「こだまの森」の最高記録も、ゲームを開いている間だけです。保存を持たなくても成立する作品が、公式作品の中で多数派になっています。
公開後に足す
公式13作品は、v1.1で難易度・ヒント・記録などが拡張されています。初版の後に機能を広げる流れが、公式作品の側にもあります。ただし、v1.0の中身や、何を理由に拡張したかは確認できません。ここから言えるのは「公開してから足す」という進め方が選択肢になる、という点までです。
アソバースの条件から逆算する
初版の範囲は、自分の意欲だけでなく、公開先の条件でも決まります。ここでは、確認済みの条件を範囲の判断に結びつけます。
対戦機能は初版の外に置く
オンライン対戦は、公式の「潮目のオセロ」と「灯りのチェス」だけです。投稿作品向けの共通対戦APIは未提供で、投稿するコードにサーバー用のものは含められません。投稿作品の「遊び方・最大参加人数」は任意の作者申告であり、共通対戦を有効にするものでもありません。対戦を前提にした設計は、初版では「入れない」の箱に入れるのが現実的です。同じ画面でふたりが交互に遊ぶような形なら、サーバーなしで実現できます。
スコア競争の仕組みを作り込まない
ゲーム内スコアの共通ランキングは未提供です。ランキングはプレイ回数・いいね数・レビュー平均で作品を並べるもので、ゲーム内のスコアは反映されません。スコア送信の仕組みを初版に入れても、共通の場には載りません。ゲーム内で自己ベストを見せるだけなら、「あとで」の箱で十分です。
保存は「あとで」か、仕様を確かめてから
アップロードしたゲームにはSDKが自動で追加され、作品専用のプレイヤーIDとクラウドセーブ(作品ごとにJSONで128KiBまで)が使えます。URL投稿のゲームは、作者がSDKを読み込むと使えます。一方、アップロード作品内のlocalStorageとsessionStorageは一時メモリーの互換処理です。端末への永続保存の手段としては当てにしないほうが安全です。保存が必要になったときは、SDKの案内を現在の公式情報で確認してから設計します。初版では「保存なし」でも成立するかを、まず考えます。
容量とファイルの上限
アップロードは20MiB以内で、ZIP展開後は合計100MiB・1,000ファイル以内、1ファイル30MiB以内です。直下のindex.htmlが入口で、素材は相対パスで参照します。サービスワーカーやSharedArrayBufferを使うマルチスレッドは対象外です。大きな音声や画像を山ほど詰めた初版は、この上限に当たりやすくなります。初版では素材を絞るほうが、アップロードの面でも安全です。
範囲を決める手順
ここまでをまとめ、手を動かせる手順にします。紙でもテキストファイルでも構いません。
- 初版で知りたいことを、一文で書きます。
- 思いついた機能や素材を、思いつくだけ書き出します。この段階では削りません。
- 一つずつ「必須/あとで/入れない」に分けます。分けるときは、前述の二つの質問を使います。
- 「必須」の箱の中で、さらに優先順位をつけます。全部を作る前に時間切れになった場合、どこで切るかを決めておきます。
- 「あとで」の箱の機能のうち、構造だけ先に用意するものに印を付けます。
- 公開先の条件(容量、サーバー不可、対戦・ランキングの扱い)と照らして、「必須」に矛盾がないか確認します。
- 公開の前に、投稿画面の「表示の確認」で自分のゲームが正しく開くかを確かめます。投稿は、入力、表示の確認、公開の3段階です。下書き保存もできるので、仕分けの途中でも状態を残せます。
「必須」の箱には、思ったより少ししか入らないはずです。入りきらないほど多い場合は、初版の問いが大きすぎる可能性があります。その場合は、一文を書き直してください。
失敗しやすい点
「あとで」のつもりが、いつの間にか必須になる
作っているうちに「これも入れたほうがいい」が増えていきます。追加するたびに、一文の問いに照らして「この機能がなくても問いに答えが出るか」を確認します。答えが出るなら、「あとで」に戻します。
公開後の数字を実際より大きく読む
プレイ回数は、作品の起動の実測回数です。人数ではありません。同じ端末・同じ作品で30分以内に再起動した分は、重複として除かれます。初版の反応を読むとき、プレイ回数を「遊んだ人数」とは扱わないでください。レビューは、1アカウントにつき1作品1件で、自作の評価はできません。件数が少ない段階では、一件一件の文章を読むほうが有用です。評価順のランキングは、レビュー3件以上から掲載される条件もあります。
直せないと思い込む
公開後は、公開内容の更新、非公開化、削除ができます。初版に不安があるときは、直せる前提で出すという選択肢があります。ただし、公開にはメールアドレスの確認が必要です。公開当日に慌てないよう、先に確認を済ませておきます。
紹介文の準備を後回しにする
投稿画面の「紹介文と遊び方を作成」は、公開済みURLまたは本人の検証済みアップロードを読み取り、選択言語の下書きを作る機能です。「この文章を使う」を押したときだけ反映され、生成操作だけで公開されることはありません。ただし、利用者ごとに1時間3回という回数の制限があります。生成された下書きは、必ず自分の目で読み、実際の遊び方と合っているかを確認してください。
次の行動
まず、初版で知りたいことを一文で書いてください。次に、いま頭にある機能を「必須/あとで/入れない」の三つに分け、「必須」が片手で数えられる数に収まるかを確かめます。収まらなければ、一文のほうを小さくします。仕分けができたら、投稿画面で下書き保存し、表示の確認まで進めてみてください。

