生成した絵に一筆足すと、どこで「作品」に見えるか:加筆の種類を比べる実験設計
遊びをつくる執筆にClaudeを使用しています。

ゲームのカバー画像やタイトル画面を、画像生成で作る場面を考えてみます。プロンプトを何度か直して、ほぼ思い描いたとおりの絵が出ました。ただ、どこか「出てきた絵」のままで、自分の作品の顔にはなりきっていません。そこで隅に小さな印を描き足したら、少し自分のものに見えた気がします。この「気がする」を、確かめられる形にするのが今回の実験です。 問いは「どんな加筆が、見る人に『誰かが決めて作った絵』という印象を与えるのか」です。同じ一筆でも、破綻を直すのか、署名を入れるのか、小物を足すのか、あえて消すのかで、受け取られ方は変わりそうです。この記事では結果を示しません。読者が自分の絵と自分の周囲の人で行えば答えが出るように、準備・手順・記録・読み方・誤りやすい点を並べます。
「作品に見える」を3つの観点に分けて測る
「作品になる瞬間」のままでは測れません。見る人に答えてもらえる3つの問いに分解します。
- 意図:誰かが考えて決めた絵に見えるか。
- 続き:この絵の世界の続き(ゲームや次の場面)を見たいか。
- 使いたい:自分のゲームのカバーやタイトル画面に使いたいか。
どれも1〜5点で答えてもらいます。この3つは別々に動く可能性があります。たとえば「意図は感じるが、使いたいとは思わない」という結果も、ありうるものとして最初から想定しておきます。
比べる対象は、次の6種類の加筆と、加筆なしの元画像(以下「0」)です。
- A 直し、内容:指の本数、文字のような模様、不自然な影など破綻の描き直し、狙い:違和感の除去
- B 印、内容:隅に小さな記号や署名を入れる、狙い:作者の存在の明示
- C 輪郭、内容:主役の輪郭の一部を手描きの線でなぞる、狙い:手の跡の提示
- D 質感、内容:影の部分にハッチングや点描を重ねる、狙い:画面の手触りの変化
- E 小物、内容:絵の世界に合う物を一つ足す(灯り、鳥、足跡など)、狙い:物語の示唆
- F 引き算、内容:不要な部分を背景色で塗って消す、または暗くする、狙い:視線の整理
足し算ばかりでなく引き算を入れておくのが、この設計のポイントです。「描き足すほど作品らしくなる」という思い込みを、条件のひとつとして検証できます。
準備:元画像、道具、見る人
元画像は、生成した絵を1枚選びます。加筆の余地が6種類ぶん見つかる絵が向いています。主役がいて、背景があり、影や空白があり、少し破綻が混じっている絵です。結果が絵に左右されないよう、できれば別の絵でもう1セット行います(後述)。
道具は、普段使っているお絵描きソフトで構いません。手元になければ、下の最小のHTMLを edit.html として保存し、ブラウザで開くと使えます。画像を読み込み、色と太さを選んで描き、1つ戻して、PNGで保存できます。外部通信はしません。
<canvas id="c" style="max-width:100%"></canvas><br>
<input type="file" id="f" accept="image/*">
<input type="color" id="col" value="#ffffff">
<input type="range" id="w" min="1" max="30" value="4">
<button id="u">戻す</button><button id="s">保存</button>
<script>
const c=document.getElementById('c'),x=c.getContext('2d');
let hist=[],drawing=false;
function snap(){hist.push(x.getImageData(0,0,c.width,c.height));if(hist.length>30)hist.shift();}
f.onchange=e=>{const i=new Image();i.onload=()=>{const k=Math.min(1,900/i.width);c.width=i.width*k;c.height=i.height*k;x.drawImage(i,0,0,c.width,c.height);hist=[];};i.src=URL.createObjectURL(e.target.files[0]);};
function p(e){const r=c.getBoundingClientRect();return[(e.clientX-r.left)*c.width/r.width,(e.clientY-r.top)*c.height/r.height];}
c.onpointerdown=e=>{snap();drawing=true;const[a,b]=p(e);x.beginPath();x.moveTo(a,b);x.lineWidth=+w.value;x.lineCap='round';x.strokeStyle=col.value;c.setPointerCapture(e.pointerId);};
c.onpointermove=e=>{if(!drawing)return;const[a,b]=p(e);x.lineTo(a,b);x.stroke();};
c.onpointerup=()=>drawing=false;
u.onclick=()=>{const h=hist.pop();if(h)x.putImageData(h,0,0);};
s.onclick=()=>{const a=document.createElement('a');a.download='edit.png';a.href=c.toDataURL('image/png');a.click();};
</script>背景を塗りつぶす引き算(F)では、色選択で周囲の色に近い色を選びます。このコードにスポイトはないので、近い色は目で合わせます。
見る人は5人以上を目安に集めます。人数は多いほど安定します。ゲームを作る人ばかりに偏ると「絵の描き込みを見る目」が強く出るため、遊ぶ側の人も混ぜます。見る人には、どれが加筆かを伝えません。
手順:面積と時間をそろえて7枚を作る
加筆の種類を比べたいのに、塗った量や時間が違うと、その差が結果に混ざります。そこで2つの条件をそろえます。
- 面積:元画像を縦3×横3の9マスに分けたと想像し、加筆が触れてよいのは2マス以内とします。目安であり、厳密な測定は不要です。大事なのは6種類で同じ基準を守ることです。
- 時間:1種類につき3分のタイマーを使います。終わったら、たとえ途中でも手を止めます。
作業の流れです。
- 元画像を複製して、「0」を含め計7枚の保存先を作ります。
- A〜Fを1つずつ、必ず元画像から始めて加筆します。前の加筆の上に重ねないでください。
- 各画像を A.png のような名前で保存し、加筆した場所(9マスのどこか)をメモします。
- 見せる前に、画像をA〜Fと0とは無関係な番号(1〜7)に付け替えます。対応表は自分用に取っておき、見る人には出しません。
- 見る人ごとに、見せる順番をランダムにします。サイコロやくじで構いません。毎回同じ順番だと、最初の絵が基準になってしまいます。
記録の取り方と結果の読み方
見る人には1枚ずつ、数秒から十数秒ほど見てもらってから、3つの問いに1〜5点で答えてもらいます。加えて、自由記述で「最初に目が行った場所」を一言書いてもらいます。記録は次の表のように、1行1回答で取ります。
見る人ID / 画像番号 / 意図 / 続き / 使いたい / 目が行った場所
元画像を変えて2セット行えば、画像の個性による偏りを見られます。同じ見る人に両方答えてもらう場合は、日を空けるか、間に別の作業をはさむと記憶の影響が減ります。
読むときの手順は次のとおりです。
- 見る人ごとに、各画像の点数から「0」の点数を引きます。人によって点のつけ方の癖が違うため、人の内側で差を取ります。
- 画像の種類ごとに、差が正だった人、ゼロだった人、負だった人を数えます。人数が少ないうちは平均より符号の数のほうが信頼できます。
- 3つの問い(意図・続き・使いたい)を別々に見ます。
判断の目安を挙げます。実際の結果がこのとおりになるとは限りません。
- どの種類も0との差がほぼない場合は、一筆の影響より元画像の影響が大きいか、加筆が小さすぎて伝わっていません。面積の条件を少し広げて、もう一度試す価値があります。
- 意図だけ上がり、使いたいが上がらない場合は、作者の手は見えても、見た目の好みには寄与していません。カバーに使うなら別の加筆を探します。
- 引き算(F)が上がった場合は、足すより整理するほうが効く絵だったと考えられます。生成画像は情報が多くなりやすいので、読み取れる範囲の仮説として覚えておきます。
- 自由記述の「目が行った場所」が、加筆した場所と重なる場合は、その加筆が視線を誘導しています。逆に、加筆から離れた場所が挙がるなら、加筆は目立っていません。
- 見る人の間で正負が割れた場合は、加筆の効果が見る人の好みに左右されます。想定する遊び手に近い人の回答を重視します。
起こりやすい誤り
- 加筆のうまさが混ざる:描き込みの上手下手は、加筆の種類の差として読めてしまいます。同じ種類を2回描いて、出来のばらつきを見ておくと安全です。
- 加筆が探されてしまう:「どれかに手を入れました」と伝えると、見る人が間違い探しを始めます。伏せたまま質問に答えてもらいます。
- 自分の好みが結果の解釈に入る:期待した種類が上がったときに、強く信じすぎないでください。人数が少ないうちは偶然の可能性が残ります。
- 画面条件が違う:スマートフォンとパソコンで見え方が変わります。見せる画面の大きさはそろえます。
- 元画像が1枚だけ:その絵に特有の結果かもしれません。最低でも別の絵でもう1セット行います。
生成画像の利用条件も、実験とは別に確認しておきます。商用利用や公開の可否は、使うツールの規約と最新の案内で決まります。著作権上の扱い(生成物に手を加えた部分がどう評価されるかを含む)は断定できないため、公式の情報や専門家に確認してください。
次の行動
まず、自分のゲームのカバー画像かタイトル画面になりそうな生成画像を1枚選び、A〜Fと0の7枚を作ってみてください。見る人を5人集められなければ、まず2人から始めても構いません。差の符号を数えるだけで、次に加筆する場所の見当が付きます。
結果が出たら、効いた加筆を採用したカバーをアソバースの投稿画面に入れて、公開前の「表示の確認」で実際の見え方を見てみてください。公式13作品のカバー画像も生成したアートワークで、ゲーム画面のスクリーンショットではないと案内されています。カバーとゲーム画面の距離をどう扱うかも、実験の次の問いになります。

