速さの上限を決める:これ以上速いと遊べない点を探す
遊びをつくる執筆にClaudeを使用しています。

落ちてくるものを避けるゲーム、流れてくる記号に合わせて押すゲーム、針が緑の範囲に来た瞬間に止めるゲームなど、動きの速さが面白さを支えるゲームは多くあります。作っていると、つい「もう少し速くしたほうが盛り上がるはず」と数値を上げ続けたくなります。ところが、ある点を越えると面白さは急に消えます。プレイヤーが下手になったわけではなく、人の操作が物理的に追いつかなくなるからです。 この記事の問いは、「その点はどこにあり、どう測れば見つかるか」です。作者本人は何百回も遊んでいるので、自分の感覚で決めた上限は、初めて遊ぶ人にとってはたいてい速すぎます。そこで、速度を段階的に上げながら成功率を記録し、成功率が崩れる位置を数字で見つける実験を設計します。結果はこの記事には書きません。手順どおりに行えば、自分のゲームの答えが出る形にしています。 途中で、アソバースの公式作品が速さの問題をどう避けているかも、確認済みの範囲で読み取ります。
「遊べない」には三つの崩れ方がある
速すぎて遊べない状態は、一つではありません。測る前に、何が崩れているのかを分けておくと、記録の読み方が変わります。
- 入力が間に合わない:見えてはいるのに、指や操作が追いつきません。反応が遅れたミスです。
- 情報が読み取れない:何が起きているのか把握する前に状況が進みます。動きの方向や色の違いを見分けられず、そもそも判断の材料がありません。
- 運に感じる:見えて操作もできるものの、上手い下手と結果が結びつきません。何をしても当たる、何をしても外れる状態です。
三つは同じ速度で同時に起きるとは限りません。たとえば、画面が小さい端末では「読み取れない」が先に来て、キーボードでは「入力が間に合わない」が先に来る、ということもあり得ます。そのため記録には、成功か失敗かだけでなく、失敗の種類のメモを残します。
「上限」を、このゲームを遊びとして成立させる速度の最大値と定義します。ここで言う「成立」とは、最初に遊ぶ人が数回で「いまのは自分のミスだ」と思える状態です。理由が分からない失敗が増え始めた点が、上限に近づいた合図になります。
公式作品の設計から読み取れる、速さの扱い方
アソバースの公式作品のうち、速さや時間の圧力が関わる作品の確認済みの仕様から、上限の問題への向き合い方を読み取ります。ここで述べるのは仕様から読み取れる範囲です。実際の速度の値や調整の経緯は確認されていないので、数値は作品を開いて確かめてください。
時間制限のない入口を用意する(時計じかけの台所)
6つのレシピで、材料をレシピ順に入れ、火にかけ、針が緑の範囲に来たら止めて配膳します。時間制限なしの「見習い」と、1皿28秒・配膳6秒・ミス3回までの「本番」があります。同じ操作を、時間の圧力なしで覚えられる段階と、制限つきの段階に分けているわけです。
「針が緑の範囲に来たら止める」操作の難しさは、針の速さと緑の幅の組み合わせで決まります。緑の範囲に針がとどまる時間は、おおよそ「緑の幅 ÷ 針の速さ」です。この時間が短くなるほど、止めるタイミングは厳しくなります。針の実際の速さや緑の幅は確認済み事項にないため、作品を開いて、緑の中に針がいる時間を自分で数えてみるのが確実です。
時間あたりの密度で3段階を作る(紙ひこうき郵便)
海辺は36秒で5通、丘は40秒で8通、山は44秒で10通を集め、最後の6秒で赤い郵便受けへ向かいます。風の異なる3ルートがあり、風船にぶつかると紙が傷み、3回で終了します。
仮に最後の6秒を郵便受けに使うとして、手紙を集める時間で割ると、次のようになります。
- 海辺、集める時間(仮定):30秒、手紙の数:5通、1通あたりの時間:6秒
- 丘、集める時間(仮定):34秒、手紙の数:8通、1通あたりの時間:約4.25秒
- 山、集める時間(仮定):38秒、手紙の数:10通、1通あたりの時間:3.8秒
最後の6秒の使い方は確認済み事項の範囲では「郵便受けへ」とあるだけなので、この表は計算の練習としての目安です。ここから読み取れるのは、一本の速度つまみを回すのではなく、時間・手紙の数・風の違いを組み合わせて、「忙しさ」の段階を作っているという点です。風船にあたる回数に上限(3回)を置くことで、一度のミスで終わらない余裕も作っています。
速さを遊ぶ人が選べる(雨音のピアノ)
3音から8音へ育つフレーズの記憶ゲームでは、お手本の速さを選べます。速さの上限が人によって違うことを、作り手が一つの値で決めず、遊ぶ人に委ねている設計と読めます。自作ゲームでも、上限を一点に決められないなら、選択式にする手があります。
速さの代わりに「見直しの代価」で調整する(こだまの森)
光る葉の順番を覚えて返すゲームで、聴き直しは15点減、間違いは30点減で、3回間違えると終了します。ここは速さではなく、見直しや失敗にコストをつけることで緊張感を作っています。速度を上げられないとき、あるいは上げたくないときの別の手段として参考になります。
相手の応答時間を抑える(灯りのチェス)
CPUの思考時間は約450msに制限されています。これは遊ぶ人の操作の速さではなく、相手の返しの速さの話です。待たされすぎないテンポを意識した制限と読めます。ただし、450msを選んだ理由は確認済みではないため、体感は作品を開いて確かめてください。
上限を測る手順
ここからが実験の設計です。目的は、速度の段階ごとに成功率を出し、崩れる位置を見つけることです。
準備するもの
- 速度を一つの数値で変えられる状態にしたゲーム(難しさの要素は速度以外を固定します)
- 速度を段階として切り替える仕組み(たとえば、基準値の80%、100%、120%、140%、160%と、等間隔で並べます)
- 記録用の表(紙でも表計算でも構いません)
- 計測に協力してくれる人(自分を含めて3人以上が目安です)
- 同じ端末と同じ画面サイズ。端末が変わると結果が変わるため、まず一つの環境に固定します
手順
- 速度の段階を決めます。最初の段階は、誰でも確実にこなせるほど遅い値にします。
- 各段階で、1人あたり同じ回数(たとえば5回)遊んでもらいます。回数は最初に決め、途中で変えません。
- 各回で、成功か失敗かを記録します。失敗なら、三つの崩れ方のどれに近いかを一言メモします。「間に合わなかった」「何が起きたか分からなかった」「どうしようもなかった」の三択で十分です。
- 段階の順番は、全員が同じ順で遅い順から進むのではなく、人によって並べ替えます。一部の人は速い段階から始めます。慣れの影響を分けるためです。
- 各段階の成功率を、全員分まとめて計算します。
記録の取り方と結果の読み方
記録は「人 × 段階 × 回」の単位で取ります。最終的には、段階ごとの成功率のグラフを描きます。手描きの折れ線で十分です。
- 80%、成功回数:、試行回数:、成功率:、失敗の種類の内訳:
- 100%、成功回数:、試行回数:、成功率:、失敗の種類の内訳:
- 120%、成功回数:、試行回数:、成功率:、失敗の種類の内訳:
- 140%、成功回数:、試行回数:、成功率:、失敗の種類の内訳:
- 160%、成功回数:、試行回数:、成功率:、失敗の種類の内訳:
この表の空欄が、自分で埋める答えです。読み方は次の三つに分けて考えます。
- 成功率がなだらかに下がる場合:どの速度でも「少し難しくなる」だけで、明確な上限はありません。上限は成功率の基準(たとえば半分)で決めます。基準は事実ではなく、ゲームの性格に合わせて作り手が決めるものです。
- ある段階で急に下がる場合:そこが物理的な限界に近い点です。下がる直前の段階が、実質の上限です。失敗の内訳が「間に合わなかった」に偏っているなら、入力の限界です。「何が起きたか分からなかった」に偏っているなら、見せ方の限界なので、速度を下げる前に表示を見直す余地があります。
- 人によってばらつく場合:全員を同じ値に合わせると、一部の人は遊べません。雨音のピアノのように速さを選べる設計か、見習いのように時間制限のない入口が候補になります。
採用する速度は、崩れる点の手前に置きます。上限ぎりぎりに置くと、少し疲れた日や小さな画面で遊べなくなります。たとえば「成功率が急に下がる段階の一つ手前を、最も速い難易度にする」のように、余裕を残してください。残す幅は目安で、ゲームごとに自分で決めます。
起こりやすい誤り
- 自分一人で測る:作者は誰よりも慣れているので、上限が高く出ます。必ず初めて遊ぶ人を混ぜてください。
- 遅い順に全員が進める:後の段階ほど練習が積み上がり、成功率が高く出ます。並べ替えは必須です。
- 成功か失敗かだけを記録する:原因の種類が分からないと、速度を下げるべきか、表示を直すべきかが決められません。
- 回数が少なすぎる:1段階1回では、たまたまの成功や失敗に左右されます。5回前後は最低限と考えてください。
- 端末差を無視する:画面の更新が遅い端末や、入力の反応が鈍い環境では、同じ速度設定でも体感が変わります。複数の環境で試す場合は、環境ごとに表を分けます。
- 上限そのものを採用する:測れるのは限界であって、気持ちよく遊べる点ではありません。余裕を残す幅は別に決めます。
- 記録が残らない:アソバースの公式作品の多くは、記録や録音が画面を開いている間だけ残ります。自作ゲームで測る場合も、結果は画面の外のメモに書き写してください。
次の行動
自分のゲームで、速度を変えられる数値を一つ決め、基準値の80%から160%まで5段階を用意してください。次に、初めて遊ぶ人を含む3人以上に、各段階5回ずつ遊んでもらい、成功率と失敗の種類を表に記録します。成功率が急に下がる段階が見つかったら、その一つ手前を最高難度にして、遅い入口も一つ用意してみてください。

