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速くすると難しくなる作品と、ならない作品

遊びをつくる

執筆にClaudeを使用しています。

四つの仕掛けを巡って元へ戻る、赤いビー玉の円形コース
記事のテーマをもとに制作したAI生成イラスト。

自作のゲームが少し簡単すぎると感じたとき、まず思いつくのは「速くする」ことです。敵の動きを速める、制限時間を縮める、お手本の再生を速める。どれも一行の数値変更で済みます。ところが、速くしても手応えがほとんど変わらないゲームがあります。逆に、少し速めただけで急に遊べなくなるゲームもあります。 この差は、プレイヤーが何で困っているかで決まります。難しさの源が「間に合うか」にあるゲームでは、速度がそのまま難しさになります。源が「何を選ぶか」にあるゲームでは、速度を上げても考える時間が短くなるだけで、考える中身は変わりません。この記事では、アソバースの公式作品の確認済みの仕様を手がかりに、この違いを見分ける問いを整理します。最後に、自作で確かめるための最小の実験も示します。

この記事の目次
  1. 速くしたら、何が足りなくなるか
  2. 速度がそのまま難しさになる型:時間窓のゲーム
  3. 速度を上げても難しさが動かない型:ターンと資源のゲーム
  4. 中間の型:記憶のゲームは「流れる速さ」に効く
  5. 自作で確かめる:速度つまみ実験の設計
  6. 次の行動

速くしたら、何が足りなくなるか

見分ける問いは一つです。速度を上げたとき、プレイヤーに最初に足りなくなるものは何か。

足りなくなるものは、おおまかに四つに分けられます。

  • 手:狙った瞬間に入力できなくなります。
  • 目:動くものを追いきれなくなります。
  • 記憶:覚えきる前に次の情報が来ます。
  • 判断:選択肢を比べる前に時間が切れます。

「手」と「目」が足りなくなるなら、速度は難しさに直結します。「判断」は、時間制限を付けたときだけ速度の影響を受けます。「記憶」はその中間で、情報が流れる速さに左右されます。

ここで大事なのは、速度が何を指すのかを先に決めることです。ゲーム内で動くものの速さ、制限時間の長さ、お手本が流れるテンポ、相手の応答時間は、それぞれ別の値です。難しさに効くのは、このうちプレイヤーの入力や記憶の「窓」を狭める値だけです。

速度がそのまま難しさになる型:時間窓のゲーム

「紙ひこうき郵便」は、時間窓で難しさが決まる作品の分かりやすい例です。確認済みの仕様では、風の異なる3ルートがあります。

  • 海辺、制限時間:36秒、手紙:5通
  • 丘、制限時間:40秒、手紙:8通
  • 山、制限時間:44秒、手紙:10通

最後の6秒は赤い郵便受けへ向かう時間なので、手紙を集める時間は残りの30秒、34秒、38秒と読めます。単純に割ると、1通あたり海辺は6秒、丘は4.25秒、山は3.8秒です。手紙の置かれ方までは確認事項にないので、あくまで目安の割り算です。それでも、ルートが上がるほど「1通にかけられる時間」が縮む設計だと読み取れます。操縦は左右キー、ドラッグ、矢印ボタンで、風船にぶつかると紙が傷み、3回で終了します。操作の種類は増えません。増えるのは、時間あたりの要求量です。

「時計じかけの台所」は、同じ構造を二段階で見せています。材料をレシピ順に入れ、火にかけ、針が緑の範囲に来たら止めて配膳する、という手順は共通です。時間制限なしの「見習い」と、1皿28秒・配膳6秒・ミス3回までの「本番」で、時間圧だけが違います。設計から読み取れるのは、手順の理解と時間内の実行を別の段階に分けているということです。見習いでは手順を覚え、本番では同じ手順を窓の中で実行します。

この型の特徴は、速度を上げると成功できる窓が狭くなり、その変化が遊び心地に直接出ることです。調整の効きが大きいぶん、少し動かしただけで難しくなりすぎます。

速度を上げても難しさが動かない型:ターンと資源のゲーム

一方、「潮目のオセロ」「灯りのチェス」「月夜の配達」「プリズムの道」は、動く速さがもともと難しさに関わっていません。

「潮目のオセロ」と「灯りのチェス」の難しさは、相手の強さと局面の読みにあります。どちらも相手は3段階から選べます。難しさのつまみは「強さ」で、「速さ」ではありません。「灯りのチェス」ではCPUの思考時間が約450msに制限されています。これは相手の応答の待ち時間の側の値で、プレイヤーが考える難しさを決める値とは別のものと整理できます。CPUの返事を0.2秒にしても2秒にしても、局面の複雑さは変わりません。

「月夜の配達」の難しさは資源にあります。小包は3つ、バッグは2枠、燃料は有限で1区間につき燃料1です。「残り最短距離」や「次の一歩を照らすヒント」、「一歩戻る」があるので、考えるための道具は揃っています。ここで速度を上げても、燃料の足りなさという問題は一切動きません。「プリズムの道」も、鏡の向きと色ガラスの組み合わせという構造が難しさです。「戻す」と「一歩だけのヒント」があるのは、試行錯誤を許す設計だからと読み取れます。

この型で速度を上げたくなったら、先に次の二つを確かめます。

  1. 速くしたい対象は、プレイヤーの思考の時間か、相手や演出の待ち時間か。
  2. 時間制限を入れるなら、それは難しさを足す目的か、ただの急かしになっていないか。

ターン制のゲームに持ち時間を足すと、「判断」の難しさに「手」の難しさが混ざり、別のゲームに近づきます。それが狙いでなければ、速度ではなく、強さ、資源、選択肢の数のほうを動かすのが自然です。

中間の型:記憶のゲームは「流れる速さ」に効く

記憶ゲームは、前の二つの間にあります。「雨音のピアノ」の記憶ゲームでは、フレーズが3音から8音へ育ち、お手本の速さを選べます。ここでの速さは、反応の速さではありません。お手本を聞いたときに頭に残る量に効く値です。速いお手本は、覚える時間を縮めます。

「こだまの森」は、光る葉の順番を覚え、4つの音色で返すゲームです。6・8・10ラウンドの3コースがあり、聴き直しで15点減、間違いで30点減、3回で終了します。ここでは難しさの源が「長さ」と「減点」にあります。聴き直しという逃げ道が用意されているので、速さに追われる設計ではありません。ただし、光る順番の再生テンポがラウンドで変わるかどうかは、確認事項にありません。この部分は作品を開いて確かめてください。

記憶型で速度を動かすときは、「速くすると覚えにくくなる」のか「速くしても長さが同じなら同じ難しさ」なのかを、自分のゲームで切り分ける必要があります。

自作で確かめる:速度つまみ実験の設計

自作ゲームの速度が難しさに直結するかどうかは、簡単な実験で切り分けられます。問いは、速度の倍率を変えたとき、成功率はどう動くかです。

次のコードは、針が往復する帯の緑の範囲で「止める」を押す最小の例です。速さのスライダーが実験の「つまみ」になります。

html
<!doctype html>
<meta charset="utf-8">
<p>速さ <input id="s" type="range" min="1" max="4" step="0.5" value="1"> <span id="v">1</span>倍</p>
<div style="position:relative;width:300px;height:30px;background:#ddd">
  <div style="position:absolute;left:135px;width:30px;height:30px;background:#6c6"></div>
  <div id="n" style="position:absolute;width:4px;height:30px;background:#333"></div>
</div>
<button id="b">止める</button>
<pre id="out"></pre>
<script>
let x = 0, dir = 1, hit = 0, all = 0;
const s = document.getElementById('s');
const n = document.getElementById('n');
s.oninput = () => document.getElementById('v').textContent = s.value;
function tick() {
  x += dir * 2 * s.value;
  if (x > 296 || x < 0) dir = -dir;
  n.style.left = x + 'px';
  requestAnimationFrame(tick);
}
tick();
document.getElementById('b').onclick = () => {
  all++;
  if (x >= 135 && x <= 165) hit++;
  document.getElementById('out').textContent = '速さ' + s.value + '倍 / ' + hit + '/' + all + '回成功';
};
</script>

緑の幅は30pxです。針は1フレームに2×倍率px動くので、緑を通り抜けるフレーム数は 30÷(2×倍率) です。画面が毎秒60フレームだと仮定すると、1倍で約15フレーム(約250ms)、4倍で約3.75フレーム(約63ms)です。倍率が上がると、押せる窓が倍率に反比例して縮みます。

記録の取り方

  • 速さは1倍、2倍、3倍、4倍の4条件にします。
  • 各条件で20回ずつ押し、成功数を記録します。
  • 条件ごとにページを開き直し、成功数と回数をリセットします。
  • 順番による慣れの影響を減らすため、条件を押す順番は日によって変えます。
  • 可能なら複数人で行い、条件ごとの成功率を平均します。

結果の読み方

  • 速さに応じて成功率が大きく下がるなら、このゲームの難しさは時間窓に強く依存しています。速度は強いつまみですが、少しの変更で壊れやすいので、刻みを細かくします。
  • 速さを変えても成功率がほとんど変わらないなら、窓の狭まりは難しさの主因ではありません。別のつまみ(緑の幅、ミスの許容回数、情報の量)を探します。
  • ある倍率から急に落ちるなら、そこが「遊べる限界」の候補です。その手前を上限にします。

起こりやすい誤り

  • このコードは1フレームあたりの移動量で動くので、画面のリフレッシュレートが高い環境では、同じ倍率でも針が速く見えます。本番の作品では、経過時間に基づいて動かす形に直します。
  • 自分で作ったゲームは、自分が慣れているため成功しやすくなります。初見の人の結果と分けて記録します。
  • 速度を変えると同時に、窓の幅や見た目も変えてしまうと、何が効いたのか分からなくなります。つまみは一度に一つだけ動かします。

次の行動

自作ゲームの難しさの源を「手・目・記憶・判断」のどれかで一言にしてみてください。そのうえで、上のコードの要領で速度つまみを一つだけ作り、条件ごとに20回ずつ記録します。「紙ひこうき郵便」と「時計じかけの台所」の見習い/本番の違いや、「潮目のオセロ」の強さの段階を実際に遊んで比べると、自分のゲームがどちらの型に近いかが見えてきます。