マガジン

ゲームの収益を記録する:売上・経費・時間の管理表

遊びを届ける

執筆にClaudeを使用しています。

遊ばれた回数、好意、感想を表す三種類の小さな札を比べる人の手。
記事のテーマをもとに制作したAI生成イラスト。

ゲームを個人で作って公開するとき、「どれくらい稼げているか」を把握している人は意外と少ないです。広告収益やアプリ内課金、投げ銭など収入の窓口が複数あると、月末に合算してはじめて「思ったより少ない」と気づくことになります。 記録の目的は確定申告の準備だけではありません。「このゲームに費やした時間に対して、時給換算でいくら戻ってきているか」が見えると、次の作品に投じるリソースの判断が具体的になります。記録がなければ感覚だけで動くことになり、赤字のプロジェクトを惰性で続けるリスクが高まります。 この記事では、個人ゲーム開発者が最低限維持できる管理表の設計と、そこから読み取れる判断基準を説明します。ツールは表計算ソフトを前提にしますが、考え方はどのツールにも応用できます。

この記事の目次
  1. 管理表に記録すべき3つの軸
  2. 管理表の構造:最小限の列構成
  3. 時間単価から読み取れる判断基準
  4. 失敗しやすい記録のパターン
  5. 確定申告との接続
  6. 次の行動
  7. 参考資料

管理表に記録すべき3つの軸

管理表には「売上」「経費」「時間」の3列が必要です。この3つが揃わないと、利益の計算も時間単価の計算もできません。

売上は入金ベースで記録します。広告ネットワークの支払いサイクルは月末締め翌月末払いが多く、実際の入金は発生月より遅れます。「いつ稼いだか(発生ベース)」と「いつ振り込まれたか(入金ベース)」を混在させると月次の数字が歪むため、どちらかに統一して記録します。個人の場合は入金ベースの方が通帳と照合しやすく、確認ミスが減ります。

経費は支払ったすべての費用を記録します。素材購入、使用したサービスの月額料金、ドメインやホスティングの年間費用(月割り計算で計上)、有料のAIツールの利用料などが対象です。「ゲーム制作に使ったかどうか」が判断の基準で、迷う費用は使途を備考欄に書いておくと申告時に役立ちます。

時間は作業ログとして記録します。ゲームのデザイン・実装・テスト・宣伝・サポート対応など工程を分けて記録すると、後で「どの工程に時間がかかっているか」を分析できます。ストップウォッチアプリを使うか、開始・終了時刻を書くだけでも十分です。

管理表の構造:最小限の列構成

以下は1シートで運用できる列の例です。行は1作業・1取引を1行として記録します。

  • 日付、内容:発生日または入金日、記入例:2026-10-15
  • ゲーム名、内容:対象作品、記入例:迷宮パズルZ
  • 区分、内容:売上/経費/時間、記入例:売上
  • 金額(円)、内容:税込または税抜を統一、記入例:3,200
  • 時間(分)、内容:作業の場合のみ、記入例:90
  • 内訳・メモ、内容:媒体名、作業内容など、記入例:Google AdSense 10月分

売上・経費・時間を同じシートに入れることで、ゲーム名でフィルタをかけるだけで1作品の全状況が確認できます。別シートに分けると集計は楽になりますが、入力が分散してメンテナンスが滞りやすいです。最初はシンプルな1シート構成を強くお勧めします。

集計は月次で行います。各ゲームの「当月売上合計 − 当月経費合計」が粗利になります。さらに「粗利 ÷ 当月作業時間(時間換算)」を計算すると時間単価が出ます。この数字が最も重要な指標です。

時間単価から読み取れる判断基準

時間単価は作品の優先順位を決めるための数字です。たとえば月の売上が1,000円でも、関与した時間が2時間なら時間単価は500円です。一方、売上5,000円でも作業時間が20時間なら250円です。絶対的な売上額だけを見ると前者が「弱いゲーム」に見えますが、時間あたりの生産性は前者の方が高いことになります。

判断の目安として、次の3段階を参考にしてください。

  1. 維持フェーズ:時間単価が目標ラインを下回っているが、コンテンツの追加や宣伝で伸びる余地がある。改善施策を試しながら3〜6か月様子を見ます。
  2. 縮小フェーズ:複数の施策を試しても時間単価が上がらない。新規の作業時間を最小化し、ゲームは公開したまま自然収益だけを受け取ります。
  3. 撤退フェーズ:経費が売上を上回っている月が続く。サービス料金を解約し、維持コストをゼロにします。

「目標ライン」は人によって異なります。副業として月3万円を目指している場合、週10時間を投じるなら時間単価750円が損益分岐点になります。この数字をシートの上部に書いておくと、毎月の集計結果と対比できます。

失敗しやすい記録のパターン

記録が続かない原因の大半は「入力のタイミングを後回しにすること」です。1週間分をまとめて入力しようとすると、作業時間の記憶は薄れ、少額の経費の領収書は行方不明になります。売上は媒体の管理画面から引き出せますが、時間だけは記録しなければ永遠に失われます。

推奨する習慣は「作業を終えた直後に時間を記録する」ことです。スマートフォンのメモアプリに「ゲーム名・作業内容・分数」だけを残しておき、週に一度まとめて管理表に転記するだけで十分です。

経費の記録で多いミスは「年払いのサービスを忘れること」です。AIツールや素材サービスの年間プランは更新月にだけ経費が記録されるため、月次の集計が偏ります。年払い費用は支払い時に1件登録しつつ、月割り計算した金額を別セルで管理しておくと月次比較が正確になります。

複数プラットフォームに同じゲームを公開している場合は、「ゲーム名」の列に「ゲーム名_媒体名」の形式で記録します。どの媒体が収益の主力かを分析できると、宣伝リソースの配分に使えます。

確定申告との接続

収益が一定の基準を超えた場合、確定申告が必要になることがあります。基準や手続きの詳細は国税庁の公式情報や税理士に確認してください。記事ではその判断に踏み込まず、管理表として準備しておくべき点だけを挙げます。

申告で求められるのは「年間の収入と経費の根拠」です。管理表に日付・金額・内訳が記録されていれば、そのまま集計して提出資料の下地になります。銀行明細や領収書との照合ができるよう、入金ベースで記録するか、銀行明細の振込日を備考欄に書き添えておくと後で楽になります。

使用した機材(PCなど)は按分計算(あんぶんけいさん:事業使用割合に応じて経費を分ける考え方)が必要になる場合があります。これも確定申告の時期に専門家や公式ガイドを参照して判断してください。

次の行動

まず今月分の売上・経費・時間を表計算ソフトの1シートに書き出し、粗利と時間単価を計算してみてください。数字が出るだけで、次の作品に時間を使うべきかどうかの判断が変わります。アソバースでゲームを公開している場合は、公開中の作品ごとに行を分けて記録すると、どの作品が時間あたりで最も効率よく機能しているかが見えてきます。確定申告に関わる処理は、国税庁の公式サイトや税理士に個別に確認することをお勧めします。

参考資料

  • 国税庁「副業に関する所得の確定申告」公式ガイド
  • 国税庁「家事按分の考え方」(個人事業者向け)