ゲーム内の実在地名・企業名の扱い方
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「渋谷を舞台にしたゲームを作りたい」「架空の飲料メーカーに実在企業を思わせる名前をつけたい」――こうした場面で、どこまで許されるのかを事前に整理しておくことは、ゲーム公開後のトラブルを防ぐうえで重要です。 実在の地名と実在の企業名は、法律上の扱いが大きく異なります。地名は原則として誰も独占できませんが、企業名やブランド名には商標権・不正競争防止法などの権利が絡みます。「有名だから使えない」とも「フィクションだから何でもよい」とも言い切れず、個別の使い方によって判断が分かれます。この記事では、その判断の軸を実務に使えるかたちで整理します。 なお、著作権・商標権・不正競争防止法の解釈はケースバイケースです。具体的な案件については、専門家または各権利者への確認を最優先にしてください。
この記事の目次
地名の扱い:原則は自由、ただし「表現の仕方」に注意が必要です
「渋谷」「大阪城」「富士山」といった地名自体には、著作権も商標権も原則として存在しません。場所の名称は社会の共有財産として扱われており、ゲームの舞台として使うこと自体は問題になりにくいです。
ただし、「地名を使うこと」と「その地名の場所を特定の方法で描写すること」は別です。気をつけるべき点は主に三つあります。
- 実在の施設・建物をそのまま描く場合:建物の外観には意匠権や著作権が絡む場合があります。特に現存する商業施設の外観を詳細に再現すると、設計者や所有者の権利に触れる可能性があります。
- 地名と誹謗・侮辱を結びつける場合:「○○市は犯罪の温床」のような描写は、名誉毀損や侮辱に関わる表現上のリスクがあります。
- 地域ブランドの商標:「○○産」「○○焼き」など地域ブランドを冠した名称には、地域団体商標として登録されているものがあります。ゲーム内の架空の商品名に使う場合でも、登録商標と同一・類似する使い方は注意が必要です。
ゲームの舞台として地名を使うだけなら、通常は問題になりません。「この街を探索するゲーム」という設定に「渋谷」と書くことは広く行われています。問題が起きやすいのは、実在の施設や地域ブランドと組み合わせたときです。
企業名・ブランド名の扱い:商標権と混同リスクが核心です
企業名・ブランド名は、商標として登録されているケースが多く、地名とは扱いが異なります。商標権は、登録された区分(商品・サービスのカテゴリ)の中で同一・類似の名称を無断で使用することを禁じる権利です。
ゲームの中で実在企業名を使う場面は大きく三種類に分かれます。
架空の企業名に実在企業を連想させる名前をつける場合
「○○コーポレーション」という架空の悪の組織に、実在企業を想起させる名前を使うのは最もリスクが高いパターンです。商標の類似性だけでなく、不正競争防止法上の「著名表示冒用行為」(有名なブランドへのただ乗り・希薄化)や、名誉毀損に発展する可能性があります。架空の組織・会社名は、実在企業と明確に区別できる名称を選ぶことが基本です。
実在企業名をそのまま登場させる場合
ゲーム内のキャラクターが「○○株式会社に就職した」と話す程度の言及は、名称を否定的に使っていなければ直ちに問題になるわけではありません。しかし、実在企業が「スポンサー」「監修」「提携先」であるかのような誤解を与える表示や、企業のロゴ・シンボルを無断で使うことは避ける必要があります。
ロゴやシンボルマークには著作権が存在します。パッケージや画面に実在企業のロゴを表示するのは、明示的な許可なしには行わないのが原則です。
「モデルにした」と明示せず似せる場合
実在のコンビニエンスストアに似た架空のチェーン名、実在のSNSに似た架空のサービス名など、明確に名称を変えても「どう見てもあの企業だ」とわかる描写は、混同を生む可能性があります。日本の不正競争防止法は、著名な商品等表示と「類似」した表示の使用を規制する条文を含んでいます。「名前を変えたから大丈夫」と断言できないケースがある点を覚えておいてください。
判断の軸:使う前に確認する三つの問い
権利関係を整理するうえで、次の三つを順番に確認することが実務的に有効です。
- その名称は商標登録されているか? 特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で商標を検索すると、登録の有無と区分を確認できます。ゲーム・エンターテインメントの区分(第41類など)に登録があるかどうかを必ず確かめます。
- 否定的・侮辱的な文脈で使っていないか? 企業名を悪役・犯罪・不祥事と結びつけた描写は、名誉毀損のリスクが高まります。フィクションであることを明示しても、リスクがゼロになるわけではありません。
- 企業と提携しているかのような誤解を与えないか? ゲームのタイトルやメニュー画面に企業名を目立つ形で表示すると、公式コラボと混同される恐れがあります。その企業の関与がない場合は、誤解を招く位置や見せ方を避けます。
この三つを確認したうえで、「問題がある可能性がある」と判断したら、名称を架空のものに変えるか、企業の広報・法務窓口に問い合わせるかの二択になります。
安全に実在感を出す代替アプローチ
実在の地名・企業名を使わなくても、ゲームのリアリティを高める方法はあります。
地名は実在、施設は架空にするという分け方が実用的です。「渋谷を舞台にした探偵ゲーム」と書きつつ、ゲーム内に登場する喫茶店やビルはすべて架空の名称にするアプローチです。地名の親しみやすさと、権利上のリスク低減を両立できます。
企業名は業種・業態で表現する方法もあります。「大手電機メーカー」「国内最大のSNS企業」のように固有名詞を出さずに描写すると、プレイヤーは文脈でリアリティを感じながら、特定企業との混同も生じにくくなります。
パロディ表現は慎重に扱うことも重要です。海外では著名なパロディ判例があり、批評・風刺目的であれば認められる文化的背景がありますが、日本の商標法・著作権法の枠組みではパロディに関する明文規定が整備されていません。「笑いをとるためのパロディ」がそのまま免責になるとは考えないほうが安全です。
次の行動
使いたい名称が商標登録されているかどうかは、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で無料で検索できますので、まずそこから確認してみてください。企業名・ブランド名の使用に迷う場合は、架空の名称に置き換えることが最もシンプルな対処です。法的判断が必要な案件は、弁理士や弁護士など専門家への相談を検討してください。
参考資料
- 特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)— 特許庁
- 不正競争防止法(経済産業省)
- 商標法(特許庁)
- 文化庁「著作権制度の解説資料」

