ゲームの企画書テンプレート:1枚で伝わる構成
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ゲームのアイデアが浮かんだとき、最初にぶつかる壁は「どう伝えるか」です。長い文書を書いても読まれなかった、口頭で説明したら伝わらなかった、という経験のある人は多いはずです。企画書を1枚に絞る目的は、情報を削ることではなく「判断に必要な要素をすべて同一視野に収める」ことにあります。 1枚の企画書が有効なのは、共同制作者に見せるときだけではありません。自分自身が「何をなぜ作るのか」を問い直す道具にもなります。書けない項目があれば、企画がまだ固まっていないサインです。テンプレートは記入フォームではなく、思考の診断シートとして使うものです。 この記事では、ゲーム企画書の1枚構成に必要な6つの要素と、各項目で何を書くべきか・陥りがちな失敗を具体的に示します。
1枚に収める6つの要素
企画書の目的は「このゲームを作るべきか」を判断させることです。判断に必要な情報は次の6項目に絞れます。
- タイトルとひとこと説明
- コアループ(プレイヤーが繰り返す行動の単位)
- おもしろさの軸(何が楽しいか、一文で)
- プレイヤー像(誰が、どんな場面で遊ぶか)
- スコープ(MVP、つまり最小限の動くかたち)
- 未解決リスク(今わからないこと)
この順番には意味があります。上から読み進めるだけで「何が・なぜ・どこまで・どんなリスクがあるか」の流れになるよう設計されています。
各項目の書き方と失敗しやすい点
タイトルとひとこと説明
ひとこと説明は「既知のゲームや体験に例える」と伝わりやすくなります。「落下する物体をよけながらコインを集める」よりも「縦スクロールのドッジゲーム」のほうが像が結びやすいです。ただし、例えに頼りすぎると「既存ゲームのコピー」と読まれるので、独自点を一語添えます。たとえば「縦スクロールのドッジゲーム、ただし敵も同じ目的で動く」のように。
よくある失敗は、タイトルと説明が矛盾するケースです。タイトルが世界観を示しているのに、説明がルール説明になっているとずれが生じます。説明は世界観ではなく「何をするゲームか」に絞ります。
コアループ
コアループとは「プレイヤーが1プレイ中に何度も繰り返す行動のまとまり」です。アクションゲームなら「移動→障害を回避→報酬を取得→難易度が上がる」のような流れです。これを書く目的は、ゲームの体験密度を確認するためです。ループが長すぎれば開発工数が膨らみ、短すぎれば飽きが早い。
図を1つ使うと効果的です。A4横置きで企画書を作る場合、コアループだけは矢印を使ったフロー図にすると、文章よりも速く読めます。
失敗しやすいのは「できたらいいな機能」をループに混ぜてしまうことです。ランキング機能や実績システムはコアループではなく、後述のスコープ欄に「拡張候補」として記入します。
おもしろさの軸
「プレイヤーがどんな感情を得るか」を一文で書きます。「難しいパズルを解く快感」「予測を裏切られる驚き」「じわじわと強くなる達成感」など、感情の種類まで絞ることが重要です。
この項目が最も書きにくく、最も重要です。「楽しい」「熱中できる」のような言葉では軸になりません。軸が曖昧だと、開発中の判断が揺れます。「この演出は入れるべきか」「このルールは複雑すぎないか」という判断は、すべてここに戻って照らし合わせます。
一文に絞れないときは、企画が複数のゲームを混ぜている可能性があります。その場合は企画を分けるか、一つを捨てる判断が先です。
プレイヤー像
「誰でも」は情報ゼロです。「スマホで5分の隙間時間に遊ぶ20〜30代」「パズルゲームが好きで、攻略情報を調べる習慣がある人」のように、行動や習慣で描写します。プレイヤー像を決めると、UIの複雑さ・セッションの長さ・チュートリアルの必要量が自然に決まります。
ブラウザゲームの場合は特に、プレイ環境(PC・スマホ・タブレット)と操作方法(マウス・タッチ・キーボード)をここに書いておくと、後の技術選定とつながります。
スコープ(MVP)
MVP(Minimum Viable Product)とは「このゲームと言えるための最小限の動くかたち」です。スコープ欄には「MVPに含めること」と「含めないこと」を両方書きます。含めないことを明示することが、プロジェクトを小さく保つための唯一の手段です。
具体的な書き方の例を示します。
含める: コアループ1周が動く・スタート画面とゲームオーバー画面・スコア表示含めない: BGM・ランキング機能・難易度選択・アニメーション演出(動けばよい)
「含めないこと」が書けない企画書は、作り始めると終わりません。スコープを決めることは妥協ではなく、完成させるための設計です。
未解決リスク
これを書く企画書は少数派ですが、最も誠実で実用的な項目です。「技術的に実現できるか確認していない処理」「ゲームバランスが成立するかまだわからない部分」「似たゲームがすでに存在するか調べていない」などを列挙します。
リスクを書く目的は、隠すためではなく「先に対処する順番を決める」ためです。リスクが開発の後半に露見すると、全体の設計が崩れます。
レイアウトの組み方
A4縦1枚を想定する場合、おすすめの配置は次のとおりです。
- 上部中央、内容:タイトル・ひとこと説明、目安の行数:2〜3行
- 左上、内容:コアループ(図または箇条書き)、目安の行数:4〜6行
- 右上、内容:おもしろさの軸・プレイヤー像、目安の行数:各2〜3行
- 左下、内容:スコープ(含める/含めない)、目安の行数:各3〜5行
- 右下、内容:未解決リスク、目安の行数:3〜5行
ツールはSpreadsheet・Figma・Notionのどれでも構いません。重要なのは「1画面スクロールなしで全体を見渡せる」ことです。横にスクロールしないと読めない、印刷したら2枚になる、という状態になったら情報を削ります。
フォントサイズは本文10〜11pt、見出し12〜13ptが目安です。図は入れてもよいですが、説明なしで読めるものだけにします。
完成判定の3つの問い
企画書を書き終えたら、次の3つを自問します。
- この企画書を初めて見た人が、5分以内にゲームの動きを頭の中で再現できるか
- 「何が楽しいか」を1文で他の人に説明できるか
- 今週中にMVPを作り始められるか
3つすべてにYesと答えられれば、企画書として機能しています。どれかにNoがあれば、その項目を書き直します。3番にNoが続く場合は、スコープがまだ大きすぎるサインです。
企画書は一度書いて終わりではありません。作り始めてわかることが増えるたびに、1枚の内容を更新します。バージョン管理よりも「常に最新の1枚」を保つほうが、ブラウザゲームのような短期開発では実用的です。
次の行動
まず空のA4ドキュメントを開き、6項目の見出しだけを書いて保存してください。すべて埋まったとき、それがそのまま制作開始の合図になります。作ったゲームをアソバースに投稿する際も、この企画書のタイトルとひとこと説明がそのままゲームページの説明文の骨格になります。
参考資料
- 『ゲームデザインバイブル』(Jesse Schell 著、翔泳社)
- GDC(Game Developers Conference)公式アーカイブ
- en.wikipedia.org「Game design document」

