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音楽理論ゼロでゲーム音楽を作る:ループに向く進行

遊びをつくる

執筆にClaudeを使用しています。

一枚の紙からボールや足場、旗のある小さなゲーム世界が立ち上がるペーパークラフト
記事のテーマをもとに制作したAI生成イラスト。

ゲームに音楽をつけたいけれど、楽譜も読めないし、コードの仕組みもよくわからない。そういう人でも、「ループしても不自然でない音楽」は作れます。必要なのは音楽理論の体系ではなく、ループ再生という条件に絞った少数の判断基準です。 ゲーム音楽のループとは、曲の末尾が先頭に戻ったとき、つながって聞こえる状態のことです。映画音楽と違い、プレイヤーが同じ画面に何分いるかわからない以上、ループは必須の設計条件になります。この記事では「どう終わらせるか」「何小節で回すか」「どの音の並びを選ぶか」という三つの問いに絞り、理論を知らなくても判断できる基準を示します。 使うツールは問いません。DAW(音楽制作ソフト)でも、AIで生成した素材でも、無料の打ち込みツールでも、この記事の考え方はそのまま使えます。

この記事の目次
  1. ループが「浮く」原因はほぼ一つ
  2. 理論なしで使える「ループ向き進行」の選び方
  3. 小節数と長さの決め方
  4. 実際の作業手順
  5. ループの確認で見落としやすい点
  6. 次の行動
  7. 参考資料

ループが「浮く」原因はほぼ一つ

曲の終わりと始まりがつながらない最大の原因は、終止感の強さです。

クラシック音楽や歌謡曲では、曲の最後に「終わった」と感じさせる和音の動きを置きます。これを「完全終止」と呼びますが、ループ再生では逆効果です。「終わった」と感じた直後に先頭の音が来ると、脳が「また始まった」と認識してしまいます。

逆に言えば、終止感を弱くするか、終わりを「次への助走」に見せかけるだけで、ループの不自然さはほぼ解消できます。音楽理論を学ばなくても、「この最後の音は、先頭の音に向かって動こうとしている感じがするか」という耳の確認だけで判断できます。

具体的な症状として、次のどれかに当てはまる場合はループが浮きやすいです。

  • 最後の音が長く伸びて静止している
  • 最後のフレーズが「下に落ちる」動きで終わっている
  • 音量が末尾に向かってフェードアウトしている

フェードアウトはゲームBGMでは特に注意が必要です。音量が下がりきった状態から先頭のフルボリュームに戻ると、音量の段差がはっきり聞こえます。

理論なしで使える「ループ向き進行」の選び方

コード進行(和音の並び)を自分で考えるとき、ループに向くパターンを選ぶ基準は一つです。最後のコードが先頭のコードに「戻りたがっている」かどうか。これは耳で確認できます。

実際に試しやすい進行を三つ挙げます。どれも4コードで1ループを構成できます。

進行A:循環コード型

「Am → F → C → G」のような、終わったら最初に戻る形。最後のGは次のAmに向かいたがる性質があり、ループしても違和感が出にくいです。キーや楽器を変えても同じ構造が使えます。

進行B:ペダルポイント型

低音(ベース)を一つの音に固定したまま、上の音だけ動かす方法です。低音が変わらないため、どこで折り返しても基盤が同じに聞こえます。RPGのフィールド音楽に多い構造です。DAWでベーストラックを単音リピートに設定するだけで試せます。

進行C:モーダル型(主音に戻らない)

一般的な曲は「ド」に向かって解決しようとします。これをあえて避け、「レ」や「ラ」を中心にした音の並びにすると、終止感が薄れてループしやすくなります。AIで生成した音楽素材でも、「ドリアンスケールで」「エオリアンで」と指定するとこの性質を持った素材が得られます。

どれを選ぶかは雰囲気との相性で決めてください。循環型は親しみやすい、ペダルポイント型は緊張感が持続する、モーダル型は浮遊感や古風な印象になりやすいです。

小節数と長さの決め方

ループの長さは、短すぎると繰り返しに気づかれ、長すぎると制作コストが上がります。

ゲームジャンルごとのおおよその目安として、次のように考えると判断しやすいです。

  • タイトル画面・メニュー、最低限の長さの目安:16〜32小節(約30秒〜1分)
  • フィールド・探索、最低限の長さの目安:32〜64小節(約1〜2分)
  • 戦闘・アクション、最低限の長さの目安:16〜32小節(テンポが速いため体感長め)
  • パズル・待機、最低限の長さの目安:32小節以上、または生成系で無限展開

これはあくまで「気づかれにくさ」の目安です。モーダル型の進行で変化が少ない曲なら、短くても繰り返しに気づかれにくくなります。逆にメロディが印象的な曲は同じ長さでも繰り返しが目立ちます。

小節数は必ず2の倍数(4、8、16、32…)にします。音楽の拍感は2や4で区切られているため、奇数小節でループさせると先頭に戻ったとき「拍がずれた」ように聞こえます。これは理論ではなく、耳で確認すればすぐわかります。

実際の作業手順

ここでは「ツールに音を打ち込んで書き出す」前提で、ループ設計の順番を示します。

  1. 先頭のコード(和音)と音を決める。 ループが戻ってきたときに最初に聞こえる音です。明るい・暗い・緊張感、の方向だけ決めれば十分です。
  2. 進行A・B・Cのどれかを選び、4〜8コードで1ループを仮組みする。 音の高低差が大きすぎないように注意します。ゲームBGMは会話音や効果音と重なるため、音域は中域に集めるほうが埋もれにくいです。
  3. 末尾の音を先頭につなげて再生する。 DAWならループ再生ボタンで確認できます。「終わった感じ」がするなら、最後のコードをひとつ前のコードに変えてみます。
  4. メロディを重ねる場合、末尾のメロディ音が先頭のメロディ音へ「進もうとしている」かを耳で確認する。 降りてきて止まる形より、上がりかけて止まる・または同じ高さで保留する形のほうがループしやすいです。
  5. 音量の最初と最後を揃える。 DAWのオートメーション(音量の変化を記録する機能)で、先頭フレームと末尾フレームの音量値が同じになるよう調整します。

書き出し形式はOGGまたはMP3が一般的です。WAVはファイルサイズが大きく、ブラウザゲームでは読み込みに影響することがあります。公式ドキュメントで対応フォーマットを確認してから書き出してください。

ループの確認で見落としやすい点

仕上げ前に次の三点を確認します。よくある失敗の多くはここで防げます。

リバーブの尾引き問題。 リバーブ(響き・残響のエフェクト)を使っていると、音の本体が終わった後も残響音が続きます。DAWでループ再生するとき、残響が消えるより先に先頭に戻ると、残響と先頭の音が重なります。対処法は二つ。ループの末尾に「残響が消えるだけの無音区間」を含めるか、ループポイントをリバーブがかかった状態のまま先頭に戻るよう設定するかです。後者はゲームエンジン側でループポイントを細かく指定できる場合に有効です。

テンポ変化の有無。 曲の途中でテンポを上げ下げすると、ループ点のテンポと先頭のテンポが合わなくなります。ゲームBGMでは、テンポは固定するのが基本です。

ステレオの左右バランス。 末尾で左に傾いた音が、先頭では中央に戻ると微妙な違和感が出ます。ループ再生しながらメーターを見て、先頭と末尾のバランスが近い値かを確認してください。

次の行動

今日作業する場合は、まず「進行A(循環コード型)」で4コード8小節のループを一本作り、DAWでループ再生して終止感が残らないか耳で確認してみてください。確認できたら、音量・残響の処理を整えてブラウザで読み込み、実際のゲーム画面と合わせた状態でもう一度聴き直します。作ったゲームをアソバース(https://aso-verse.com)に投稿する際は、ZIPにBGMファイルをまとめてHTMLから参照する形で登録できます。

参考資料

  • Web Audio API(MDN Web Docs)
  • HTML5 Audio仕様(W3C)
  • 各DAW公式マニュアル(ループポイント設定の項)