初見の人が最初の失敗をする場所は、作者の想定と同じか
遊びをつくる執筆にClaudeを使用しています。

自作のアクションゲームを、遊ぶ人の後ろから見ている場面を考えてみます。作者は「最初の穴は、ジャンプの練習として用意した」と思っています。ところが初めて遊ぶ人は、穴の手前で落ちず、その少し前の足場で何度もやり直しているかもしれません。もしそうなら、作者が配置した難しさと、遊ぶ人が実際に感じる難しさの間にずれがあることになります。 作者は遊び方も敵の位置も知っているので、自分の目で「最初に失敗しそうな場所」を判断することはほとんどできません。そこでこの記事では、予想を先に書き、初見の人の最初のミスの場所を記録し、両者を並べて比べる実験を設計します。結果は書きません。読者が自分の作品で行えば、手元で答えが出る形にします。 確かめたいのは次の2点です。
「最初の失敗」を先に決めておく
観察を始める前に、何を失敗として数えるかを決めます。ここが曖昧だと、記録がそろいません。
この実験では、最初の失敗を「ゲームが『うまくいかなかった』と伝える最初の出来事」と定義します。具体的には、ライフが減る、ミス表示が出る、やり直しになる、ゲームオーバーになる、といったものです。作品によって何が該当するかが違うので、自作の作品で「失敗の合図」を事前に書き出してください。
もう一つ、失敗とは別に「迷い」も記録します。迷いは、プレイヤーが3秒以上、何も操作せずに画面を見ている状態です。3秒は目安です。作品のテンポが遅ければ延ばして構いません。ただし、全員の観察で同じ値を使ってください。
迷いを分けるのは、操作が分からない人にはミスが起きないことがあるからです。何も押さなければ、失敗の合図は出ません。「失敗の記録がない」ことと「うまくいっている」ことは同じではありません。
観察の窓は、起動から30秒を基本にします。30秒以内に最初の失敗がなければ、「30秒以内に失敗なし」を結果として記録します。これも有効なデータです。どうしても見たい場合に限り、60秒まで延ばしてください。その場合も、全員を同じ長さにそろえます。
準備:予想を先に紙に書く
準備するものは次のとおりです。
- 観察する作品(自作で、公開前または手元で動く状態のもの)
- 初めてその作品を遊ぶ人、3〜5人
- 予想シート(紙でもメモアプリでも構いません)
- 観察者用のタイマー(後述のコードで足ります)
- 画面を録画する許可。録画できれば、あとで見直せます。
協力者は、ゲームを作らない人を混ぜると差が見えやすくなります。作者や制作仲間は、ゲームの約束事を知っているため、初見の条件になりません。
最も大事なのは、観察の前に予想シートを埋めておくことです。見た後に書くと、結果に引っ張られます。シートには次を書きます。
- 最初の失敗が起きそうな場所(ステージ、場面、画面上の位置、起動から何秒後か)
- その原因の予想(操作が分からない、見えなかった、難しすぎる、など)
- その失敗は意図した難しさか。それとも想定していなかった事故か。
3の区別がこの実験の肝です。たとえば「最初の穴で落ちる」は、設計上の難しさとして意図している場合があります。一方、「画面の端にある操作説明が見つからずに落ちる」は、意図とは別の理由で起きた失敗です。
予想は一箇所に絞らず、起こりそうな順に上位3つまで書いてください。1つに絞ると、外れたときに「全く見ていなかった」のか「惜しかった」のかが分からなくなります。
公式作品で練習したい場合は、仮の予想を立てるだけでも構いません。たとえば「紙ひこうき郵便」は、風船にぶつかると紙が傷み、3回で終了する作品です。自分が作者なら最初の失敗をどこに置くと考えるか、遊ぶ前に書いてみます。その後に遊んで、書いた予想と見比べます。仕様の細部は、作品を開いて確かめてください。
手順と記録の取り方
観察の手順
- 協力者に、作品の名前以外の説明をしないと伝えます。「操作方法は画面で分かる範囲で試してください」とだけ言います。
- 観察者は協力者の斜め後ろに座り、画面と手元が見える位置を取ります。観察者用の端末は別に用意します。
- 協力者がゲームを起動したら、観察者はすぐタイマーを開始します。
- 失敗の合図が出たら「ミス」、3秒以上の停止があれば「迷い」を、その時刻に印します。
- 協力者が質問してきても答えません。「どうなると思いますか」と聞き返す程度にとどめます。黙って見ていることが、この実験の条件です。
- 30秒たったら、その場で観察を止めます。続けるかどうかは、事前に決めた長さに従います。
- 終わったら、「最初に困ったのはどこですか」と短く聞きます。観察の記録と比べるためです。
観察者用のタイマーは、次の最小構成で足ります。協力者の画面とは別のページとして、観察者の端末で開きます。Enterで開始し、Mでミス、Sで迷い、Eで一覧を表示します。
<pre id="out">Enterで開始</pre>
<script>
let t0 = null;
const log = [];
function mark(label) {
if (t0 === null) return;
const sec = (performance.now() - t0) / 1000;
log.push(sec.toFixed(1) + "秒 " + label);
}
addEventListener("keydown", (e) => {
const k = e.key.toLowerCase();
if (e.key === "Enter" && t0 === null) {
t0 = performance.now();
document.getElementById("out").textContent = "計測中";
}
if (k === "m") mark("ミス");
if (k === "s") mark("迷い");
if (k === "e") {
document.getElementById("out").textContent =
log.length ? log.join("\n") : "記録なし";
}
});
</script>ゲーム本体のキーと競合しないよう、必ず別の端末で開いてください。手書きのメモと、ストップウォッチの併用でも問題ありません。
記録する項目
1人につき1行で、次の項目を残します。
- 協力者、書き方:A、B、C のように匿名の記号
- 最初の失敗の時刻、書き方:起動からの秒数。なければ「なし」
- 最初の失敗の場所、書き方:場面・ステージ・画面上の位置
- 失敗の種類、書き方:ライフ減、やり直し、ゲームオーバーなど
- 最初の迷いの時刻と場所、書き方:3秒以上の停止があった時点
- 本人の説明、書き方:終了後に聞いた一言
- 予想との関係、書き方:一致、近い、ずれ(判断は次の章で行います)
単位は秒と場面名にそろえます。場所は「左から3つめの足場」のように、後から他の人が見ても特定できる書き方にしてください。「序盤」のような曖昧な表現は避けます。
回数は、協力者1人につき1回です。同じ人に2回目を遊んでもらうと、もう初見ではなくなるため、記録の対象にしません。
結果の読み方
記録がそろったら、予想シートと並べて、一人ずつ次の3つに分類します。
- 一致:予想した場所とほぼ同じ場所で、最初の失敗が起きた。
- 近い:同じ場面だが、位置や原因が違った。
- ずれ:予想に入れていなかった場所で起きた。または30秒以内に失敗がなかった。
分類したら、「ずれ」と「近い」の中身を見ます。ここからは判断の基準です。
意図した難しさの外で起きている場合。 失敗の原因が「操作が分からない」「見つけられなかった」「何が危険か伝わらなかった」なら、難しさの問題ではなく、伝え方の問題の可能性が高くなります。この場合は、ゲームのバランスを調整するのではなく、表示や導入を直す方向で考えます。
意図した難しさの手前で起きている場合。 練習用の穴の前で失敗が出るなら、その手前に別の障壁があるはずです。ジャンプの操作が見つからない、画面の端に説明がある、といった要素を探します。
30秒以内に失敗がなかった場合。 簡単すぎる、あるいは迷いが長かったという2つの可能性があります。迷いの記録と照らして区別してください。迷いが多いのに失敗がないなら、操作が通じていません。迷いが少ないのに失敗がないなら、最初の難度が低い可能性があります。それが意図どおりなら、問題はありません。
人によって場所が割れた場合。 3〜5人の観察では、割合は出せません。どの場所が複数人で重なったかだけを見ます。2人以上で同じ場所が出たなら、次に直す候補として扱います。1人だけの場所は、個人の癖かもしれないため、保留にします。
直した後に同じ手順で別の初見の人に頼めば、改善の方向を確かめられます。ただし、協力者は毎回新しい人にしてください。
起こりやすい誤り
- 予想を後から書く。 見た後に書いた予想は、結果に合わせて形が変わります。必ず観察の前に書いてください。
- 助け舟を出す。 「そこは矢印キーです」と一言言うだけで、最初の失敗の場所が変わります。質問されても黙ります。
- 作者や制作仲間に頼む。 ゲームの約束事を知っている人は、初見の条件を満たしません。
- 失敗だけを見る。 迷いを記録しないと、操作が通じず何も起きなかった人が「失敗なし」に紛れます。
- 人数が少ないのに割合を出す。 3〜5人で「6割が〜」とは言えません。重なった場所を探すにとどめます。
- 記録の言葉が曖昧。 「序盤で失敗」では、後で比べられません。場面名や位置で書きます。
- 観察中に原因を決めつける。 原因は、終了後の本人の説明と合わせて判断します。観察中に推測で書き込むと、記録に作者の解釈が混ざります。
次の行動
まず、自作の作品で「失敗の合図」を書き出し、最初に失敗が起きそうな場所を3つまで予想シートに書いてください。その後、ゲームを作らない人を3人探し、30秒の観察を1回ずつ行います。予想と記録を並べて、「一致・近い・ずれ」に分けたところから、次に直す箇所が見えてきます。

