キングを攻めに使う終盤:守りの駒が攻めに変わる瞬間
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序盤から中盤まで、キングは隅に隠れて守られる駒でした。ところがクイーンが盤から消えた終盤では、同じキングが「最も頼れる攻撃駒」に変わることがあります。キングの前進を迷っているうちに、相手のキングに先に中央を取られる場面を考えてみます。逆に、前に出た瞬間に王手つきのフォークを受ける場面もあります。この差を決めるのは、勘ではなく数個の条件です。 この記事は、その条件を二つの練習問題で確かめ、さらに自分の対局の中で「出てよい局面」を見つける手順までを扱います。配置は完全に言葉で示します。盤の用意が面倒な場合は、問題を読んで頭の中で動かすだけでも解けます。
キングが前に出てよい四つの条件
練習問題の前に、判断の物差しを用意します。次の四つがそろうほど、キングは安全に攻めへ回れます。
- 相手に遠くから王手をかけられる駒(クイーン、ルーク、ビショップ)がほとんど残っていません。
- 進む先のマスが、相手のナイトやポーンの利きに入っていません。フォークの形にもなっていません。
- 前に出る目的が言葉で言えます。「相手のポーンを取る」「自分のポーンの前を空ける」「相手キングを押し返す」のどれかです。
- 相手キングとの位置関係を数えています。後で出てくる「オポジション」や「正方形」がこれにあたります。
目的が言えない前進は、条件3を満たしていません。まずこの四つを頭に置いて、問題に進みます。
問題1:6段目に立つキング
次の局面を考えます。
- 白:キングが e6、ポーンが e5
- 黒:キングが e8(駒はこれだけです)
- 手番:白
ポーンを進めたくても、e6 には自分のキングが立っています。そこで問いは「どのキング移動なら必ず勝てるか」です。ヒントは、キングがポーンの前の「キーとなるマス」に着くことです。
解答
1.Kd6 が勝ち筋です。1.Kf6 も左右対称で同じ効果があります。1.Kd6 で、黒キングは e7 と d7 に入れなくなります。黒の選択肢は Kd8、Kf7、Kf8 に限られます。
主な変化は次のとおりです。
- 1...Kd8 2.e6 Ke8 3.e7 Kf7 4.Kd7 と進み、次に e8 でクイーンになります。
- 1...Kd8 2.e6 Kc8 3.e7 Kb7 4.e8=Q です。
3.e7 の局面で黒に動ける手が Kf7 だけ残る点にも注目してください。ここでステイルメイト(相手に合法手がなく、王手でもない引き分け)にならないかを確かめるのが、この種の問題の最大の確認事項です。
覚えておく原則は「ポーンの前の6段目(黒なら3段目)にキングがいれば、手番に関係なく勝てる」です。ポーンが a・h ファイルのときは例外が多く、別の扱いになります。この原則はポーンが5段目にある場合の話です。
ここでキングは、ポーンを守るだけでなく、ポーンの道を作って相手キングを押し出す攻撃役になっています。
問題2:正方形に入っているキング
次は、キングが相手のポーンを狩れるかどうかの問題です。
- 白:キングが e3(駒はこれだけです)
- 黒:キングが h8、ポーンが b4
- 手番:白
黒のポーンは b1 まで3手で到達します。白キングは間に合うでしょうか。
解答と「正方形の考え方」
間に合います。1.Kd3 b3 2.Kc3 b2 3.Kxb2 です。黒番から始まる場合でも、1...b3 2.Kd3 b2 3.Kc2 b1=Q+ 4.Kxb1 で、黒キングが遠い h8 にいるため取り切れます。
この判断は「正方形のルール」で素早くできます。ポーンの現在地から昇格マスまでの辺で正方形を描き、キングがその中に入れば追いつけます。b4 のポーンなら b1 と b4 を含む4×4の範囲(b〜e ファイルの1〜4段目)です。e3 はその中に入っています。
比較として、白キングを f3 に変えた局面を考えます。f3 は正方形の外です。白番なら 1.Ke3 b3 2.Kd3 b2 3.Kc2 b1=Q+ 4.Kxb1 で間に合います。しかし黒番では 1...b3 2.Ke3 b2 3.Kd2 b1=Q となり、新しいクイーンが生まれます。同じ駒の配置でも、手番ひとつで結果が変わります。
正方形のルールは、キングが前に出てよい条件4(位置関係を数える)の具体形です。「ここまで出れば間に合う」という見積もりを、盤上のマス数で事前に済ませられます。
自分の対局で「出てよい局面」を見つける
上の局面そのものを盤に置く機能は、現在の案内では確認できません。そこで、対局の中で似た局面に出会う練習にします。「灯りのチェス」は3段階の相手、ヒント、一手戻す、取った駒の表示、全棋譜の表示に対応しているので、この練習に向いています。同じ画面でのふたり対局なら、人と相談しながら進められます。
手順は次のとおりです。
- 対局中、クイーンの交換が起きたら、その手番号を棋譜から読み取ります。
- 交換後の局面で、手を指す前に四つの条件を声に出して確認します。
- キングを前に出すか迷ったら、一手戻すで出す場合と出さない場合の両方を試し、棋譜で比べます。
- 対局が終わったら、次の項目をノートに書き留めます。
- クイーンが消えた手番号
- その後3手以内にキングが前進したか
- 相手キングとの距離(何マス離れていたか)
- 結果
- 同じ設定で複数局分を集めます。局数に決まりはありませんが、1局だけで傾向を決めないでください。
灯りのチェスの記録は画面を開いている間だけ残ります。棋譜はノートや別のメモに写してから閉じてください。
結果の読み方
- キング前進の局で、前進後に駒を取られたり、王手つきのフォークを受けたりしていれば、条件1か2を確認し損ねています。
- 前進せずに負けた局では、相手キングが先に中央へ出た手番を棋譜から探します。そこが「出るべきだった場面」の候補です。
- ヒントを使った局と使わなかった局は、分けて記録すると比較しやすくなります。
起こりやすい誤り
- 目的のない前進:中央に出るだけで安心してしまいます。取りたいポーンや通したいポーンを先に決めます。
- 王手の筋を見落とす:相手にルークが1枚残る場合、キングが同じ段か筋に出ると王手の連続を受けやすくなります。出る前にその筋を確認します。
- ステイルメイトの見落とし:勝ち局面で相手に動ける手を残さずに追い込むと、引き分けになります。灯りのチェスは標準の終局判定に対応しているので、盤の上でもこの引き分けは起こります。問題1の 3.e7 で黒に Kf7 が残るかを数える習慣をつけます。
- オポジションと正方形の混同:オポジション(キング同士が1マスおいて向き合う関係)は押し合いの技術です。正方形はポーンへの間に合いの見積もりです。問われているのがどちらかを先に分けます。
次の行動
次の対局では、クイーンが消えた時点でいったん手を止め、四つの条件を声に出して確認してください。出る場合は目的を一言で言ってから指します。終わったら、棋譜からクイーンが消えた手番号とキングが動いた手番号を、ノートに書き写しておきます。


