ステイルメイトを狙って引き分ける:勝ち目のない局面の逃げ方
遊びを見つける執筆にClaudeを使用しています。

相手がクイーンを持ち、こちらはキングだけ。ふつうに考えれば負けですが、チェスには「負けずに終わる」ルールが一つあります。ステイルメイトです。手番の側が王手されていないのに、動かせる合法手が一つもない状態を指し、勝敗はつかず引き分けになります。 この記事では、ステイルメイトで終わる配置と詰みで終わる配置の違いを、練習問題で確かめます。クイーンの位置が一マスずれるだけで、結果は勝ちにも引き分けにもなります。ルールを知っていても、盤上で「相手の手が本当にゼロか」を一手ずつ数える習慣がないと、この差は見えません。 後半では、劣勢側がこの形を作るための条件の見つけ方と、ブラウザの「灯りのチェス」で終局の判定を自分の目で確かめる手順を示します。結果の数字は書きません。確かめるのは読者自身です。
この記事の目次
ステイルメイトの条件を三つに分けて数える
ステイルメイトは、次の三つがすべて成り立ったときに成立します。
- 手番の側のキングが、いま王手されていない。
- 手番の側の、動かせる駒がない。キングだけでなく、ポーンや他の駒もすべて動けない。
- 結果として、合法手の数が0である。
詰み(チェックメイト)との違いは、条件1だけです。王手されていて合法手が0なら詰み、王手されていなくて合法手が0ならステイルメイトです。
合法手とは、動かした結果、自分のキングが攻撃される状態にならない手のことです。キングの周囲に空きマスがあっても、そこが相手の駒の効き(攻撃の届くマス)に入っていれば行けません。そのため「周囲8マスのうち、空きマスがすべて相手の効きに入っている」ことが、ステイルメイトの中心的な条件になります。
数え方の順序を決めておくと、見落としが減ります。
- 手番側のキングが王手されているかを先に確認する。
- キングの周囲のマスを一つずつ、「味方の駒がある」「盤の外」「相手の効きがある」のどれかに分類する。
- キング以外の駒がある場合は、その駒の動きも同じように数える。
練習問題1:勝ちを決める手と引き分けにする手
次の局面を考えてみます。座標は、左から右へ筋a〜h、下から上へ段1〜8とし、白が下側から上へ進みます。
局面A(白番)
- 白キング:c7
- 白クイーン:c5
- 黒キング:a8
- 駒はこの3つだけです。
まず、この局面が合法かを確かめます。白番なので、黒のキングが王手されていてはいけません。c5のクイーンからa8へは、筋の差が2で段の差が3なので、縦横斜めのどの直線上にもありません。c7のキングからa8までは筋が2つ離れており、隣り合っていません。したがって黒は王手されておらず、局面は成立します。
問い:白の手を二つ探してください。一つは黒を詰ませる手、もう一つは黒をステイルメイトにしてしまう手です。
解答
詰みの手は Qa5 です。クイーンがc5からa5へ、b5を通って動きます。a5からa8へはa6とa7が空いているので、a筋で王手がかかります。黒キングの逃げ先は a7、b7、b8 の3マスです。
- a7:a筋上にあるクイーンの効き。
- b7:c7の白キングの効き。
- b8:c7の白キングの効き。
黒の他の駒はなく、クイーンを取ることも間に駒を入れることもできません。よって詰みです。
ステイルメイトの手は Qb6 です。クイーンがc5からb6へ、斜めに1マス動きます。黒番になって、先ほどと同じく a7、b7、b8 を確かめます。
- a7:b6のクイーンから斜めに隣り合うマスで、クイーンの効きです。
- b7:b6のクイーンと真上に隣り合っており、さらにc7のキングも隣り合っています。
- b8:b6からb筋を、b7が空いているので通って届きます。c7のキングの効きでもあります。
次に王手の有無です。b6からa8へは、筋の差が1で段の差が2なので直線になりません。c7のキングからa8は2マス離れています。黒キングは王手されておらず、合法手は0です。これがステイルメイトで、引き分けになります。
この問題が教えること
Qa5もQb6も、クイーンの一手で黒キングの逃げ道を塞ぐ点は同じです。違いは、クイーンがa8に王手をかけているかどうかだけです。「相手の逃げ道を全部塞ぐ」ことに集中すると、王手をかけ忘れたまま塞いでしまう誤りが起きます。優勢側は、手を指す前に「この手のあと、相手は王手されているか」を毎回確かめる必要があります。
練習問題2:隅を変えても同じかを自分で確かめる
形が似た局面を、今度は答えを伏せて出します。解答は自分で確かめてから、下の答えと照らし合わせてください。
局面B(白番)
- 白キング:g6
- 白クイーン:e6
- 黒キング:h8
- 駒はこの3つだけです。
問い:黒を詰ませる手と、ステイルメイトにする手を、それぞれ一つ探してください。
確かめ方は問題1と同じです。まず黒キングが今は王手されていないことを見ます。次に、候補の手を指したあとで、g8、g7、h7 の3マスを一つずつ分類します。
答え合わせです。詰みの手は Qe8、ステイルメイトの手は Qf7 です。ただし、結論だけを受け取るのではなく、どのマスがどの駒の効きに入るのかを自分で書き出してください。特にQf7では、h7がクイーンの横の効きとキングの効きの両方に入る点と、h8自体には王手がかからない点を確かめます。
劣勢側が「手がなくなる形」を作る条件の見つけ方
ここまでは優勢側が誤る問題でした。劣勢側に回ったときは、立場が逆になります。相手のうっかりを待つだけでなく、ステイルメイトが成立しやすい条件を、自分の側から整えておきます。局面ごとの正解は一般化できないので、見るべき条件を挙げます。
- キングが隅や辺にいる。 周囲のマスの数が減り、相手の効きで塞がりやすくなります。局面AとBはどちらも隅でした。
- キング以外の自分の駒が動けない。 ポーンが前進できずに止まっている、あるいは駒がすべて取られてキングだけになっている、といった状態です。キングが動けなくても、他の駒が一つでも動ければステイルメイトにはなりません。
- 自分の駒を相手に取らせられる手がある。 駒を差し出して相手に取らせると、自分の手駒が減ります。ただし差し出した直後に、残った駒だけで動ける手が残っていないかを必ず数え直します。
- 相手のクイーンやルークが、王手にならない位置まで近づいている。 優勢側が一手で詰ませられる位置に駒を置いていると、相手は迷わず詰ませます。引き分けを狙うなら、相手に「詰みの手」ではなく「近づく手」を選ばせる局面が理想です。
逆に、ステイルメイトを避けたい優勢側のために、同じチェックを裏返して書いておきます。駒を寄せる手の前に、「相手の合法手が0になっていないか」「王手になっているか」を確かめます。この習慣が、勝ちを引き分けにしてしまう事故を防ぎます。
見つけやすさのために、一つの目安を使います。自分の番に、動かせる手の数を数えます。1手や2手にまで減った局面は、ステイルメイトが近い局面です。数えるだけなので、実戦の途中でも続けられます。
灯りのチェスで終局の判定を確かめる設計
「灯りのチェス」は、判定エンジンとしてchess.jsを同梱し、標準の終局判定に対応した作品です。ステイルメイトを実際に作って判定を確かめるには、次の設計で進めます。この作品が盤面を自由に配置する機能を持つかどうかは、確認済みの案内にはありません。そのため、実際の対局の中で形を作る方法を取ります。
準備するもの
- 灯りのチェス(ひとり対局。3段階の相手から選べます)。
- 紙とペン、または表計算ソフト。記録用です。
手順
- ひとり対局を始め、駒を交換しながら終盤まで進めます。駒が減るほど、ステイルメイトが成立する局面は作りやすくなります。
- 自分の駒が少なく、相手が駒を多く持つ局面になったら、そこから先を「実験」として扱います。
- 毎手、自分の合法手の数を数えて記録します。動き方ガイドを使うと、選んだ駒の動ける先を確認できます。ガイドの表示の細部は作品を開いて確かめてください。
- 記録する項目は、手数、自分の合法手の数、最終的な結果(勝ち、負け、引き分け)の3つです。
- 同じ形に挑む回数は、相手の3段階それぞれで3回以上を目安にします。1回だけでは偶然との区別がつきません。
- 取った駒の表示と全棋譜は、終局後に見直して、どの手で合法手が0になったかを特定するために使います。
結果の読み方
- ステイルメイトで終わった局面が見つかったら、最後の相手の一手を棋譜で確認します。その手が「王手をかけていない」ことを、先ほどの三条件に当てはめて検算してください。
- 画面にどのような終局の表示が出るかは、作品を開いて確かめます。詰みとの表示の違いも、同じ場所で見比べられます。
- 3段階の相手で結果が違った場合は、相手の強さによって、ステイルメイトに入る局面の選び方が変わったのかもしれません。ただし、CPUの思考方式まではここでは断定できません。記録した手数の差から、自分の仮説を立ててください。
起こりやすい誤り
- 王手されているのに「手がない」と思い込む。これは詰みです。
- 他の駒の動きを数え忘れる。キングだけが動けなくても、ポーン1枚が動けるなら成立しません。
- 一手戻す機能で戻した局面を、別の局面として記録してしまう。戻した場合は、同じ手数の欄に上書きして、混ざらないようにします。
次の行動
局面Aと局面Bの黒番を、自分の手で数え直してみてください。そのうえで、灯りのチェスのひとり対局で、終盤の合法手の数を毎手書き留めます。引き分けに持ち込める局面は、勝ち目がないときの選択肢として、手の数を数える習慣から見つかります。
参考資料
- FIDE チェス規則(Laws of Chess)


