AIが整えたメールの送信前チェック:数字・固有名・約束の混入を確認する表
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AIに整えてもらったメールで確認すべきなのは、文章の自然さよりも「原文になかった内容が増えていないか、原文にあった内容が消えていないか」です。やることは単純で、原文と整えた版を並べ、下の7項目だけを順に突き合わせます。 差分の洗い出しはAIにも手伝わせられますが、最終的な判断は送信者であるあなたが画面上で行います。 「丁寧にして」「詳しくして」と頼んだだけのつもりでも、数字が丸められたり、頼んでいない約束が足されたりすることがあります。この記事では、その確認を「表」と「質問文」に落とし込みます。
混入が起きやすい場所は、7か所に絞れる
メールの事故は、文体の違和感よりも事実の食い違いで起きます。次の7項目は、AIが整えた文章で食い違いが出そうな場所を編集側で想定して整理したものです。特定の調査結果にもとづくものではありません。
- 1、確認項目:数字、見るポイント:金額・数量・割合・人数・桁、起きがちな変化の型:丸め(128,000円→約13万円)、単位の変化、桁の取り違え
- 2、確認項目:日付・時刻・曜日、見るポイント:期限・開始時刻・曜日の組み合わせ、起きがちな変化の型:「〜まで」が「〜に」になる、曜日だけ変わる、新しい日程が増える
- 3、確認項目:固有名、見るポイント:人名・社名・部署・製品名・敬称、起きがちな変化の型:表記ゆれ、似た名前への置換、肩書の追加
- 4、確認項目:約束・確約、見るポイント:「対応します」「必ず」「お送りします」、起きがちな変化の型:原文にない確約が加わる、曖昧な意向が断定になる、約束が消える
- 5、確認項目:依頼・質問、見るポイント:相手にしてほしいこと、答えてほしいこと、起きがちな変化の型:依頼が消える、質問が報告に変わる
- 6、確認項目:条件・例外・否定、見るポイント:「ただし」「〜の場合のみ」「できません」、起きがちな変化の型:条件の脱落、否定が弱まる、例外が消える
- 7、確認項目:添付・リンク・連絡先、見るポイント:添付の有無、URL、電話番号、宛先、起きがちな変化の型:「添付しました」と書いたのに添付がない、連絡先の変更
4と6は、数字の誤りより気づきにくい項目です。文章が丁寧になるほど、「できれば〜したいと考えております」のような意向が「〜いたします」という断定に近づくことがあります。
手順:並べて、差分を出して、画面で確かめる
1. 原文を残したまま、整えた版を別に置く
AIに整えさせる前の原文は、メモ帳や別の下書きに必ず残します。上書きすると、突き合わせる相手がなくなります。
2. AIに差分を表で挙げさせる
次の質問文を貼り、【原文】と【整えた版】を入れ替えます。ポイントは三つです。書き直させないこと、それぞれの文面から該当箇所をそのまま抜き出させること、分からないときは分からないと言わせることです。
後ろの二つは、Anthropicの資料「Reduce hallucinations」にある考え方を、メール確認に当てはめたものです。この資料は、幻覚(事実と異なる出力)を減らす基本策として、AIが「分からない」と言ってよいと明示することと、引用で根拠を示させることを挙げています。ただし資料の引用の手法は長い文書向けに説明されたもので、短いメールへの適用は私たちの応用です。同じ資料は、こうした手法でも幻覚は完全にはなくならないので、重要な情報は必ず検証するよう書いています。
あなたはメールの校正者です。以下の【原文】と【整えた版】を比べ、
内容の違いだけを洗い出してください。文章を直したり、改善案を出したりはしないでください。
確認する項目:
1 数字(金額・数量・割合・人数)
2 日付・時刻・曜日
3 固有名(人名・社名・部署・製品名・敬称)
4 約束・確約(「します」「必ず」など)
5 依頼・質問
6 条件・例外・否定
7 添付・リンク・連絡先への言及
出力の形式:
まず、差分を次の表で出してください。
| 項目番号 | 区分(増えた/消えた/変わった) | 原文の該当箇所(そのまま引用) | 整えた版の該当箇所(そのまま引用) |
表のあとに、差分のなかった項目番号を「差分なし:3、5」のように1行で書いてください。
最後に、「原文にない約束・数字・固有名が整えた版にあるか」をはい/いいえで答えてください。
ルール:
- 引用は、それぞれの文面にある言葉をそのまま抜き出すこと。要約や言い換えは不可。
- 判断できないものは推測せず、表の該当行に「判断できません」と書くこと。
【原文】
(ここに貼る)
【整えた版】
(ここに貼る)3. AIの表を鵜呑みにせず、引用箇所を目で確認する
表に出てきた引用が、実際にそれぞれの文面にあるかを確認します。文面に存在しない引用がある行は信用しません。AIが「差分なし」とした項目も、下の確認表に沿って自分の目でひととおり見ます。AIの出力は、見落としを減らす補助にすぎません。
4. 直すときは「原文に戻す」を基本にする
差分が見つかったら、整えた版を手直しするより、原文の表現に戻す方が確実です。戻した部分をAIに再度整えさせるなら、「この数字・名前・日付は変更しないでください」と明記します。
説明用の例:差分が出る様子
次は、実在しない人物と会社を想定した説明用の例です。実際にAIへ入力して得た出力ではなく、どんな差分が起こりうるかを示すための想定です。
原文
山田様 お世話になっております。見積書は11月6日(金)までにお送りします。金額は128,000円で、1名分です。納期は確定していないので、決まり次第ご連絡します。
整えた版(想定)
山田様 いつも大変お世話になっております。見積書は11月6日(金)までに必ずお送りいたします。金額は約13万円、2名分で、納期は来週中を予定しております。
この組み合わせでAIに差分を挙げさせると、たとえば次のような表になるはずです。
- 1 数字、区分:変わった、原文:128,000円、整えた版:約13万円
- 1 数字、区分:変わった、原文:1名分、整えた版:2名分
- 2 日付、区分:増えた、原文:(納期の日程なし)、整えた版:来週中
- 4 約束、区分:変わった、原文:お送りします、整えた版:必ずお送りいたします
- 4 約束、区分:消えた、原文:決まり次第ご連絡します、整えた版:(言及なし)
- 6 条件、区分:変わった、原文:納期は確定していない、整えた版:来週中を予定
「丁寧になった」としか見えないのが、この種の差分のやっかいな点です。ここでは、納期が未確定という話が、日程の見込みにすり替わり、「決まり次第ご連絡する」という約束まで消えています。
送信直前に人が見る場所
AIに任せられるのは、差分の候補を挙げるところまでです。次の点は、人が画面で確かめます。
- 曜日と日付の組み合わせ:カレンダーで実際の日付と曜日を確かめます。両者が合っているかをAIが正しく判定するとは限りません。
- 添付ファイルとリンク:本文に「添付しました」とあるなら、添付アイコンに加えて、ファイル名が正しいか、開けるかまで見ます。
- 宛先・CC・BCC:本文の整形では変わりませんが、送信前の最後の事故ポイントです。
- 相手に約束する権限があるか:AIが増やした約束が、自分の裁量で言ってよい内容かどうかは、文面だけでは判断できません。
実際の社名・個人名・金額を含むメールをAIに貼る場合は、先に所属先のルールを確認してください。迷うときは、名前や金額を仮の値に置き換えて差分だけ確認する方法もあります。ただし、仮の値と元の値の対応は自分で管理する必要があります。
確認表(コピー用)
- □、項目:1 数字、確認した内容:金額・数量・割合・人数が原文と同じ
- □、項目:2 日付・時刻・曜日、確認した内容:期限・時刻が同じで、曜日がカレンダーと合う
- □、項目:3 固有名、確認した内容:人名・社名・部署・製品名・敬称が同じ
- □、項目:4 約束・確約、確認した内容:原文にない「必ず」「します」が増えず、原文の約束も消えていない
- □、項目:5 依頼・質問、確認した内容:相手にしてほしいことが残っている
- □、項目:6 条件・例外・否定、確認した内容:「ただし」「〜のみ」「できません」が弱まっていない
- □、項目:7 添付・リンク・連絡先、確認した内容:添付・URL・連絡先・宛先が正しい
7項目すべてにチェックが入ってから送信します。差分が多く出る場合は、「数字・日付・固有名・約束は一切変えず、語尾と敬語だけ整えて」と範囲を絞って頼み直す方法もあります。

