マガジン

表記ゆれ・日付・金額の書き方をそろえる:公用文の考え方を手がかりにAI校正

AIを使いこなす

執筆にClaudeを使用しています。

カレンダーの一日に鉛筆で丸を付ける手と、色分けの線が引かれた印刷メモ、きれいに揃えて並べた付箋が机上にある場面
記事の内容をもとに制作したAI生成イメージです。実際の製品画面や検証結果の写真ではありません。

表記ゆれをなくすには、「気づいたときに直す」のをやめて、日付・時刻・数字・金額・単位・記号の書き方を一枚のルール表に固定します。AIには、その表と本文を照合して違反箇所を指摘し、修正案を出す役目だけを任せます。「統一して」とだけ頼むと、どの書き方に寄せるかがAI任せになり、文書ごとにそろわないおそれがあります。基準は人が決めます。 この記事では、そのためのルール表(筆者の編集上の基準案)と、そのまま貼れる指示文、説明用の入力例を示します。

この記事の目次
  1. 公用文の考え方は「基準を決める手がかり」にする
  2. 統一ルール表(基準案)
  3. AIに渡す表記ルール指示文
  4. 入力例と、期待する返し方(説明用)
  5. 人が確認すること

公用文の考え方は「基準を決める手がかり」にする

文化庁は令和4年(2022年)1月7日に、文化審議会の建議「公用文作成の考え方」を公表しました。文化庁の報道発表ページによると、昭和26年の「公用文作成の要領」に代わる、政府の公用文作成の手引を目指すものです。国民向けの広報を中心に、読み手に合わせた分かりやすく親しみやすい書き表し方を積極的に認める方針も示されています。横書きの読点は「、(テン)」を原則とする、という記述もあります。

つまり「全員が同じ型に従え」という話ではなく、読み手に合わせて選ぶ前提の資料です。そこで、次のように使い分けます。

  • 社外向け(取引先、顧客、公的機関とのやり取り):公用文の書き方に寄せると、読み手が迷いにくくなります。
  • 社内チャットなど短い連絡:読み手が決まっているので、簡略な書き方を許容してもかまいません。許容する範囲は表に書いておきます。

数字・年月日・位取り・単位・記号の個別の規定は、建議の公開ページから本文と解説を開き、自分の表と見比べてください。次の表は、この記事の筆者が組んだ基準案であり、建議の規定をそのまま写したものではありません。

統一ルール表(基準案)

揺れやすい項目ごとに、選ぶ書き方を一つに決めた例です。職場や取引先の慣行に合わせて差し替えてください。中身より「一つに決まっている」ことが大切です。

  • 日付、基準案:西暦の年月日。半角数字、ゼロ埋めなし、良い例:2026年11月5日、避ける例:2026/11/05、26.11.5、備考:和暦を使う相手には和暦に一本化。同一文書内で混ぜない
  • 年の省略、基準案:同じ年内の連絡のみ省略可、良い例:11月5日、避ける例:年をまたぐ案内での省略、備考:年末年始をまたぐ連絡は年を書く
  • 曜日、基準案:日付の後に全角括弧、良い例:11月5日(木)、避ける例:11/5 木、備考:日付と曜日の整合は人が確認する
  • 時刻、基準案:外向き文は「午後2時30分」。社内チャットのみ「14:30」可、良い例:午後2時30分、避ける例:14時半、2:30pm、備考:例外は社内チャットに限定
  • 期間、基準案:「から」「まで」で書く、良い例:11月1日から11月30日まで、避ける例:11/1~11/30、11月1日〜30日、備考:波線は「から」とも「および」とも読め、似た文字も複数あって検索・置換で漏れやすい
  • 数字、基準案:横書きは半角の算用数字、良い例:3件、25人、避ける例:三件、25人(全角数字)、備考:「一つ」「一部」など熟語・数え方は漢数字のまま
  • 金額、基準案:3桁区切りのコンマ+「円」。税の扱いを併記、良い例:12,800円(税込)、避ける例:¥12800、1万2千8百円、備考:税込・税抜の記載漏れもAIに指摘させる
  • 大きな金額、基準案:万・億は漢字、良い例:1,250万円、3億円、避ける例:12,500,000円、備考:見積書など桁を厳密に示す書面は桁表記を優先
  • 割合、基準案:数字+半角%、良い例:10%、避ける例:10パーセント、10%(全角)、備考:全角か半角かは文書内で統一
  • 単位、基準案:数字と単位の間は空けない。表記は一つ、良い例:5kg、30分、8GB、避ける例:5 kg、5キロ、5Kg、備考:業界で決まった表記があればそれを優先
  • 括弧、基準案:日本語文中は全角、型番・URL・メールアドレスは半角、良い例:担当(山田)、ABC-123、避ける例:担当(山田)(半角括弧)、備考:半角と全角の混在を指摘対象にする
  • 区切り、基準案:並列は読点「、」。中点は固有名詞のみ、良い例:企画、設計、開発、避ける例:企画・設計・開発(文中の並列)、備考:慣用の固有名詞は変えない

決め方の手順

  1. 直近に自分が送ったメールやチャットを10通ほど見返し、同じ項目で書き方が割れている箇所を拾います。
  2. 割れていた項目について、表から一つを選びます。迷ったら、読み手が最も誤読しにくいものにします。
  3. 表にない項目は、揺れに気づいた時点で一行足します。表は育てる前提です。

AIに渡す表記ルール指示文

AIには「ルール表を渡し、違反を指摘し、修正案を出す」ところまでを頼み、数値や固有名詞は変えさせません。【】の部分を自分の情報に置き換えて貼り付けてください。

あなたは日本語の校正担当です。次の「表記ルール」に従って、下の「本文」の表記ゆれを点検してください。

# 表記ルール
- 日付:西暦の年月日、数字は半角、ゼロ埋めなし(例:2026年11月5日)
- 年の省略:同じ年内の連絡のみ可。省略された年は補わない
- 曜日:日付の後に全角括弧(例:11月5日(木))
- 時刻:【外向き文は「午後2時30分」/社内チャットのみ「14:30」可】
- 期間:「から」「まで」で書く。波線(~、〜)は使わない
- 数字:横書きは半角の算用数字。「一つ」「一部」など熟語は漢数字のまま
- 金額:3桁区切りのコンマ+「円」、税込・税抜を併記(例:12,800円(税込))
- 割合:数字+半角%
- 単位:数字と単位の間は空けない(例:5kg)
- 括弧:日本語文中は全角、型番・URL・メールアドレスは半角
(ここに自分の追加ルールを書く)

# してはいけないこと
- 日付・時刻・金額・数量などの数値そのものを変更しない。表記の形だけを直す
- 固有名詞、製品名、型番、引用部分は変更しない
- 曜日は書き換えない。日付と合わないと思う場合は「要確認」に入れる
- 判断できないものは直さず、「要確認」として理由を書く

# 出力形式
次の表で返す。
| 行・箇所 | 元の表記 | 修正案 | 該当ルール |
最後に、「要確認」の一覧を別枠で挙げる。
本文全体の書き直しはしない。

# 本文
【ここに本文を貼る】

ポイントは3つです。

  • 「数値は変えない」と明示する:表記を整える過程で、桁や日付が言い換えられるのを防ぎます。
  • 「要確認」という出口を用意する:出口がないと、AIは推測で埋めがちです。
  • 差分の表で返させる:全文を書き直させると変更点が見えません。表なら人が一つずつ承認できます。

入力例と、期待する返し方(説明用)

次は説明用に作った架空の例です。実際にAIへ入力して得た結果ではなく、指示文に対して返ってきてほしい形を示しています。

入力する本文(説明用)

11/5(水)15時〜16:30に打合せを行います。
参加費は¥12800(税抜)、資料は2026.11.02までにお送りください。
容量は8 GBまで、定員は二十名です。

期待する返し方(説明用)

  • 1行目、元の表記:11/5(水)、修正案:11月5日(水)。ただし曜日は変更せず「要確認」、該当ルール:日付・曜日
  • 1行目、元の表記:15時〜16:30、修正案:午後3時から午後4時30分まで、該当ルール:時刻・期間
  • 2行目、元の表記:¥12800(税抜)、修正案:12,800円(税抜)、該当ルール:金額
  • 2行目、元の表記:2026.11.02まで、修正案:2026年11月2日まで、該当ルール:日付
  • 3行目、元の表記:8 GB、修正案:8GB、該当ルール:単位
  • 3行目、元の表記:二十名、修正案:20名、該当ルール:数字

1行目の曜日を勝手に直させないのが要点です。カレンダー上、2026年11月5日は木曜日です。しかし本文だけでは、「水曜日の誤り」なのか「日付の誤り」なのかは決まりません。予定を知っている人だけが判断できます。AIは曜日の計算を誤ることもあるため、その指摘は気づきのきっかけとして使い、確定は人がカレンダーで行います。

人が確認すること

AIの出力を受け取ったら、次の点を人の目で見ます。

  • 日付・曜日・金額の中身:表記が整っていても、内容が正しいとは限りません。カレンダーや見積書の原本と照合します。
  • 直してはいけない箇所:契約書・規程・引用・固有名詞は、表記を整えると意味が変わる場合があります。差分で確認します。
  • 相手先の指定:取引先や公的機関が書式を指定しているなら、そちらが優先です。表は「指定がない場合の基準」と割り切ります。
  • 機密情報:実在の顧客名や金額は、貼る前にダミーの語へ置き換えます。AIサービスの学習設定と、情報を外部に出してよいかどうかは別の問題です。社内規程に従ってください。

AIが毎回同じ箇所を指摘するなら、表のルールがあいまいなサインです。その項目を表に追記し、指示文にも反映します。表と指示文を一緒に更新していけば、表記の基準が自分の道具として残ります。

出典・参考資料