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きつい口調のメールを受け取ったとき:AIで事実と感情を分け返信方針を決める

AIを使いこなす

執筆にClaudeを使用しています。

一通の手紙を三色の蛍光ペンで区分けし、色ごとの付箋の列へ仕分けている机上の様子
記事の内容をもとに制作したAI生成イメージです。実際の製品画面や検証結果の写真ではありません。

きついメールへの返信で最初にやることは、文面を書き直すことではありません。原文を「事実」「要求」「感情」に分け、返信で答える範囲を先に決めることです。 AIはこの仕分けの下書きを速く作れます。ただし、どれを認め、何を約束するかは、記録を確認できる人が決めます。この記事では、役割分担、仕分けを頼む依頼文、仕分け表の例、返信の優先順位を決める3つの問いを順に示します。

この記事の目次
  1. AIに任せることと、自分で決めること
  2. 仕分けをAIに依頼する
  3. 仕分け表の例
  4. 返信の優先順位を決める3つの問い
  5. 返信案を作らせ、送る前に確認する

AIに任せることと、自分で決めること

  • 原文を事実/要求/感情に分ける下書き、任せる先:AI
  • 「原文に書かれていないこと」の洗い出し、任せる先:AI
  • 事実が本当かの確認(履歴、記録、担当者への聞き取り)、任せる先:自分
  • 謝罪の範囲、返金・再対応などの約束、任せる先:自分(必要なら上長・担当部署)
  • 送信前の最終確認、任せる先:自分

AIは、原文に書かれていない事情をもっともらしく補うことがあります。「相手は〇〇が原因で怒っている」といった推測が出たら、確認が取れるまで使わないでください。

貼る前に情報を置き換える

メールには氏名、会社名、住所、注文番号などが入っています。貼る前に「A様」「B社」「注文番号[◯]」のように置き換えます。役職や出来事の組み合わせで相手が特定できる場合は、そこも省くか言い換えてください。

個人情報保護委員会は2023年6月2日付で、生成AIサービスの利用に関する注意喚起等を公表しています。個人情報取扱事業者などが留意すべき点は別添資料にまとまっているため、業務で個人情報を扱う方は、そちらを直接確認してください。

学習設定は、秘密保持とは別の話です。ChatGPTを例にすると、OpenAIのデータコントロールのヘルプには次の趣旨の説明があります。

  • 個人向けのFree・Plus・Proでは、データ共有が既定で有効
  • 設定の「Improve the model for everyone」をオフにすると、学習への利用を止められる
  • 高評価・低評価などのフィードバックを送ると、その会話全体が学習に使われる場合がある
  • Business、Enterprise、Eduなどの管理されたワークスペースは、既定では学習に使われない

プランや時期で変わりうるので、使う前に自分の契約のヘルプを確認してください。ほかのAIサービスは条件が異なります。学習をオフにしても、入力内容が社外に出ないことにはなりません。社内規程でAI利用が制限されているなら、その規程が優先です。

仕分けをAIに依頼する

置き換え済みの原文を、次の依頼文に貼ります。

以下は、取引先から届いたメールです(個人名・社名は置き換え済み)。
次の3つに分けて表にしてください。

1. 事実:相手が「起きた」と述べていること。原文の言葉を短く引用し、
   「相手の主張」と明記する。こちらで確認できるかは判断しないでください。
2. 要求:相手がしてほしいこと、期限、条件。明示されたものと、
   読み取れるだけのものを分ける。
3. 感情:怒り・不信・焦りなど。どの表現からそう読めるかを添える。

追加ルール:
- 原文にない事情や原因を補わないでください。
- 事実の欄に、感情的な評価(「最悪」など)を入れないでください。
- 最後に「原文だけでは分からないこと」を箇条書きにしてください。

【原文】
(ここに貼る)

「相手の主張」と明記させるのがポイントです。AIが相手の言い分を、こちらが認めた事実のように書くのを防げます。

仕分け表の例

次は、説明用に私が作ったメールとその仕分けです。実在のやり取りではなく、AIで実行した結果でもありません。表の形を示すための例です。

何度も言っていますが、先週の納品がまだ届いていません。昨日電話したのに折り返しもなく、対応が最悪です。今週中に届かなければ契約を見直します。誠意ある説明を求めます。

  • 事実(相手の主張)、原文の該当箇所:先週の納品が未着、確認方法:配送記録、返信での扱い:確認結果を書く
  • 事実(相手の主張)、原文の該当箇所:昨日電話したが折り返しなし、確認方法:電話履歴・担当者、返信での扱い:確認できれば、その点だけ謝る
  • 事実(相手の主張)、原文の該当箇所:「何度も言っている」、確認方法:過去の連絡履歴、返信での扱い:回数の議論はしない
  • 要求、原文の該当箇所:今週中に届けてほしい、確認方法:対応可否、返信での扱い:可否と代替案を書く
  • 要求、原文の該当箇所:誠意ある説明、確認方法:内容が曖昧、返信での扱い:経緯と今後の手順を説明する
  • 要求(条件付き通告)、原文の該当箇所:届かなければ契約を見直す、確認方法:権限外の可能性、返信での扱い:踏み込まず、上長に共有する
  • 感情、原文の該当箇所:「最悪」「誠意」、確認方法:―、返信での扱い:受け止める一文にとどめる
  • 原文だけでは不明、原文の該当箇所:届け先住所に誤りはないか、など、確認方法:―、返信での扱い:必要なら質問する

「感情」の行は返信の中心にはなりませんが、無視もしません。「ご不便をおかけしています」のように、確認できた事実に結びつけた短い一文で受け止めます。

返信の優先順位を決める3つの問い

仕分け表の各行について、次の3つを順に問います。

問い1:返さないと、相手の状況が悪化する要求はどれか。期限、金銭、安全に関わるものを先頭に置きます。例では「今週中に届けてほしい」です。長い謝罪より、いつまでに何をするかを先に書きます。

問い2:自分の記録で裏づけが取れた事実はどれか。次の3段階で振り分けます。

  • 裏づけが取れた:認める
  • 取れない:「確認中」にする
  • 記録と食い違う:反論せず、「当方の記録では〇〇となっています。認識に違いがあればお知らせください」と事実だけを書く

問い3:この返信で、自分が約束してよい範囲はどこまでか。返金、契約、責任の有無、原因の断定は、自分の権限を超えることがよくあります。権限外なら「上長と確認のうえ、〇日までにご連絡します」と、期日を添えて書きます。

答えないものを決める

3つの問いを通したうえで、次の項目は本文に入れない候補にします。

  • 人格や態度への非難に対する反論
  • 回数や過去の経緯をめぐる言い合い
  • 原因が分かる前の推測による説明
  • 契約見直しなどの通告への、その場での交渉

答えないことは、無視することとは違います。「ご指摘の点は社内で確認しています」と一文で触れ、本題に移ります。

返信案を作らせ、送る前に確認する

方針が決まったら、次のように依頼します。

上の仕分け表と、以下の方針で返信の下書きを作ってください。
- 先頭に「いつまでに何をするか」を書く
- 確認済みの事実:[ここに自分で確認した内容]
- 確認中の事項:[内容と回答期日]
- 触れない項目:[上で決めたもの]
- 謝罪は、確認できた事実についてのみ
- 約束するのは[自分の権限内の内容]だけ
- 原文にない事実を足さない
- 文体:丁寧で簡潔。感情的な言葉は使わない

出てきた下書きは、送る前に次の4点を確認します。

  1. 確認していない事実を、断定で書いていないか
  2. 権限外の約束(返金、期日、責任の認定)が入っていないか
  3. 謝罪の対象が、確認できた事柄に限られているか
  4. 日付、金額、氏名、注文番号など数字・固有名詞が正しいか

確認に時間がかかるなら、「受け取りました。〇日までに確認結果をお知らせします」だけを先に送る方法もあります。確認前に長く返すより、約束できる範囲を超えにくくなります。

出典・参考資料