賛否が割れるテーマをAIで調べる:反対側の資料も集める質問の立て方
AIを使いこなす執筆にClaudeを使用しています。

結論から言うと、「このテーマは良いですか」とまとめて聞かず、論点を先に決め、立場ごとに別の依頼で資料を集め、最後に条件を突き合わせると、回答が一方に寄りにくくなります。これは検索AIの仕様ではなく、調べ方の設計についての編集上の提案です。 この記事では、そのための依頼文3本と、結果を書き込む記入表を用意しました。依頼文と表は説明用の雛形で、筆者が実行して効果を測ったものではありません。お使いのAIで試しながら調整してください。
回答が寄るのは「質問」と「確認」の両方に原因があります
「〇〇のメリットを教えて」と聞けば、メリットだけが集まります。「〇〇は問題ないですよね」と聞けば、問題がない前提の材料が並びやすくなると考えられます。質問に自分の見込みが入っていると、返ってくる資料もその方向に揃いがちです。
もう一つは、出典の扱いです。検索機能つきのAIは出典リンクを付けてくれます。Perplexityのヘルプは、回答に番号付きの引用が付き、元の情報源を確認できると説明しています。ChatGPTのディープリサーチも、すべての出力に引用または情報源へのリンクが含まれ、情報を検証できるとしています。
ただし、今回確認した両ページには、賛否の両側を均等に集めるという趣旨の説明は見当たりませんでした(Perplexityのページでは、複数の立場の扱いに触れていないことを確認しています)。出典が付くことと、立場のバランスが取れていることは別です。両側を集める作業は、こちらの依頼で指定する必要があります。
進め方は4ステップです
- 論点を出す。 賛否の「結論」ではなく、意見が分かれる「問い」を3〜5個に分けます。
- 立場別に集める。 賛成側、反対側、条件付きの立場を別々の依頼で集めます。
- 突き合わせる。 同じ論点について、双方の主張と根拠を横に並べます。
- 人が確かめる。 出典を開き、その主張が本当に書かれているか、発行元と日付は何かを確認します。
AIに任せるのは1〜3の下書きで、4は人が行います。AIに渡す情報は、テーマ名、調べる目的、判断の場面だけで足ります。社内の未公開資料や個人情報は貼らず、必要なら架空の数字や名称に置き換えてください。
依頼文テンプレート(3本)
{{ }} の部分を自分のテーマに置き換えます。
①論点を出す依頼
テーマ:{{テーマ}}
目的:{{何を決めるために調べるか}}
このテーマで意見が分かれる論点を、3〜5個の「問い」の形で挙げてください。
- 結論や自分の意見は書かないでください。
- 各論点について、「事実の争い」「予測の争い」「価値観の争い」のどれかを添えてください。
- 賛成側・反対側のどちらから見ても重要な論点を含めてください。「事実・予測・価値観」の区別は、資料でどこまで決着をつけられるかを見分けるために使います。事実の争いは資料で決まりやすく、価値観の争いは資料だけでは決まりません。
②立場別に資料を集める依頼(立場ごとに3回)
賛成側、反対側、条件付きの立場で、同じ文面の「立場」だけを差し替えて、別々に送ります。
論点:{{①で選んだ論点}}
立場:{{賛成/反対/条件付き}}
対象:{{日本の話か、他国の話か}}
この立場の人が実際に挙げている主張と根拠を、出典付きで3件まで集めてください。
- 発行者(誰が出した資料か)、公開日、資料の種類を各件に付けてください。
- 立場を弱めた形ではなく、その立場の人が納得する形で書いてください。
- 見つからない場合は、推測で埋めず「見つかりませんでした」と答えてください。
- 出典に書かれていない内容を、主張として加えないでください。下の2行は、Anthropicの幻覚低減ガイドの考え方を借りています。同ガイドは、分からないと答えてよいと明示すること、根拠となる引用を先に抜き出させること、裏づけの引用が見つからない主張は取り下げさせることを挙げています。なお、同ガイドの例は主に手元に渡した文書を読ませる場面です。Web検索を使う今回の依頼は、あくまでその応用です。ガイド自身も、これらの方法で幻覚は完全にはなくならないと注意しています。
③突き合わせる依頼
上で集めた賛成・反対・条件付きの資料を、論点ごとに表にしてください。
列:論点/賛成側の主張と出典/反対側の主張と出典/成立条件(どんな前提なら主張が成り立つか)/争いの種類
- 出典がない主張は、表に入れず別に列挙してください。
- どちらかの側が薄い論点は、「資料が少ない」と明記してください。「資料が少ない」と書かせるのは大事です。片側だけ空白なら、反対意見が存在しないのではなく、集め方が足りないだけかもしれません。
記入表と、寄りの判断表
AIの出力を、次の表に転記しながら人が確認します。
- ****、争いの種類:事実/予測/価値観、賛成側の主張:、賛成側の出典(発行者・日付・URL):、反対側の主張:、反対側の出典(発行者・日付・URL):、成立条件・分かれ目:、開いて確認した:□
説明用の例(架空のテーマです)
「社内で週1日の『会議なしデー』を導入する」を例にします。実在の調査ではなく、記入のイメージを示すための架空の内容です(出典欄は省略しています)。
- 集中時間は増えるか、争いの種類:予測、賛成側の主張:連続した作業時間が確保できる、反対側の主張:会議が他の曜日に集中するだけ、成立条件・分かれ目:他の曜日の会議数が増えないか
- 導入した職場で連絡の遅れが記録されているか、争いの種類:事実、賛成側の主張:緊急連絡の経路を残せば問題ない、反対側の主張:判断待ちが発生する、成立条件・分かれ目:緊急時の代替経路があるか
- 自由度を奪わないか、争いの種類:価値観、賛成側の主張:全員が同じ日に静かに働ける、反対側の主張:部署ごとの事情が無視される、成立条件・分かれ目:部署単位の例外を認めるか
「成立条件」欄は、賛否を選ぶ前に見ておく価値があります。意見の違いが、実は前提の違いだと分かることがあるからです。
結果が寄っていないかの判断表
- 片側の行が空欄または1件だけ、考えられること:集め方が足りない、次の一手:②の立場だけ変えて再依頼。その立場の人が使う言葉で検索語を変える
- 出典が全部同じ発行者、考えられること:立場の偏りの可能性、次の一手:行政、研究機関、業界団体、報道など、発行者の種類を変えて集め直す
- 反対側の主張が弱く書かれている、考えられること:要約で丸められた可能性、次の一手:出典を直接開き、原文の言い方で書き直す
- 出典を開くと主張が書かれていない、考えられること:引用の誤り、次の一手:その行を表から外す
- 公開日が古い、考えられること:状況が変わった可能性、次の一手:新しい資料を同じ論点で探す
使うときの注意
- 反対側を集めるのは、自分の考えを変えるためではなく、判断の穴を見つけるためです。表が埋まったら、最後に自分の結論と、その結論が崩れる条件を一行ずつ書いてください。
- 出典付きの回答でも、開いて確かめる手順は省けません。引用の出し方や機能の範囲は、製品やプラン、地域によって異なることがあります。最新の仕様は各社のヘルプで確認してください。
- 行政や制度のテーマでは、国や自治体などの公的資料を発行者欄で区別しておくと、民間の意見と見分けやすくなります。法制度は国や地域で内容が異なるため、②の「対象」欄で日本か他国かを必ず指定してください。
- 個別の医療・法律・投資の判断は、この表だけで決めず、専門家に相談してください。

