米国著作権局のAI報告書は何を述べているか:日本の制作者向けの読み方
AIを使いこなすClaudeで執筆し、GPTで自動校閲・修正しています。

結論から言うと、米国著作権局の報告書(Part 2)は「AIの出力は、人が表現の要素を十分に決めた部分に限って著作権で保護され得る。報告書が評価した当時の一般に利用可能な技術では、プロンプトを与えただけでは足りない」という立場です。一方で、AIを制作の補助に使うことや、AI生成物を人が作る大きな作品の一部に組み込むことは、保護を妨げないとしています。 ただし、これは米国の著作権局の分析であり、日本の著作権法の解釈ではありません。日本では著作権法の「思想又は感情を創作的に表現したもの」という定義に照らして、個別の事情ごとに判断されます。この記事では、報告書の論点を整理し、日本の資料との共通点・相違点を表にします。最後に、自分の制作過程を記録するためのテンプレートも用意しました。 なお、この記事は著作権の有無や適法性を保証するものではなく、個別の判断が必要な場合は専門家への相談が前提です。
確認した資料と、この記事の範囲
報告書は、米国著作権局のAIに関する調査の一部です。同局のAIページによると、Part 1(デジタルレプリカ)は2024年7月31日、Part 2(著作物性)は2025年1月29日、Part 3(生成AIの学習)は2025年5月9日に事前公開版として出ています。この記事が扱うのはPart 2だけです。学習データの扱いはPart 3や日本の著作権法30条の4の話で、別の論点になります。
Part 2の結論は、同局の発表ページ(NewsNet 1060)と報告書本体PDFの要旨・プロンプトの分析で確認できます。報告書は、人の寄与が著作者と認められるほど十分かどうかを、個別に判断するとしています。
日本側は、文化庁が「AIと著作権について」のページで、2024年3月15日付の「AIと著作権に関する考え方について」を公開しています。生成AIと著作権に関する裁判例の蓄積がない状況で見解を整理した文書で、文書自体に法的拘束力はありません。以下では、本体39〜40頁の著作物性と42頁の文書の位置づけを参照します。
論点メモ:報告書Part 2の5つの要点
同局の発表と報告書本体から読み取れる要点は次のとおりです。
- プロンプトだけでは出力の保護に足りない。 報告書が評価した当時の一般に利用可能な技術では、指示だけで出力の表現を十分に制御できないとされています。
- 出力の中に人の表現が見える場合は保護され得る。 たとえば自分で描いた絵をAIに入力し、その絵が出力の中で認識できる場合です。保護されるのは、人の表現が見える部分です。
- 人が配置や修正を創作的に行った部分は保護され得る。 生成物の並べ方や手直しが対象になります。
- AIを補助として使うこと自体は妨げにならない。 AI生成要素を、人が作る大きな作品に含めた場合も同様です。
- 新しい特別な保護制度を設ける根拠は示されていないとされた。 現行法で対応できるとし、技術や法の動向に応じて結論を見直す必要があるかを引き続き検討するとしています。
この5点から言えるのは、「AIを使ったかどうか」ではなく「どの部分を、誰が、どれだけ決めたか」が問われる、ということです。
日本の資料との共通点・相違点
下の表は、判断の枠組みを比べる整理表です。日本側は、文化庁の文書に示された法律の定義と、指示・加筆修正などの考慮要素をまとめています。
- 文書の性格、米国著作権局 Part 2:同局による現行法の分析と提言、日本(文化庁「考え方」と著作権法):文化審議会小委員会が、裁判例の蓄積がない状況で整理した考え方
- 判断の軸、米国著作権局 Part 2:人が表現要素を十分に決めたか、日本(文化庁「考え方」と著作権法):「思想又は感情を創作的に表現したもの」か、人の創作的寄与があるか
- プロンプトのみ、米国著作権局 Part 2:報告書が評価した当時の一般に利用可能な技術では、出力の保護に足りないとされる、日本(文化庁「考え方」と著作権法):アイデアにとどまる指示では著作物性は認められない。創作的表現を具体的に示す詳細な指示などを総合考慮する
- 人の入力物が出力に残る、米国著作権局 Part 2:人の作品が認識できる部分は保護され得る、日本(文化庁「考え方」と著作権法):人が創作した部分は、通常の著作物として扱われる
- 修正・配置、米国著作権局 Part 2:創作的な配置・修正は保護され得る、日本(文化庁「考え方」と著作権法):創作的表現といえる加筆・修正部分には通常、著作物性が認められるが、他の部分には影響しない
- AIの補助利用、米国著作権局 Part 2:保護を妨げない、日本(文化庁「考え方」と著作権法):作品の一部にAI生成物を用いても、人が創作した他の部分の著作物性は否定されない
- 新制度の要否、米国著作権局 Part 2:追加の著作権保護や特別な保護を設ける根拠は示されていない、日本(文化庁「考え方」と著作権法):直ちに法改正を求める立法論を内容とする文書ではなく、引き続き検討する
共通するのは、人の創作的な関与を中心に見て、個別に判断する点です。相違点は、米国が当時の技術ではプロンプト単独で出力の表現を十分に制御できないとする一方、日本は創作的表現を具体的に示す詳細な指示について、創作的寄与と評価される可能性を高めるとする点です。日本でも、指示の長さや試行回数の多さ、生成物の単なる選択だけで創作的寄与が認められるわけではありません。
日本の制作者はどう読めばよいか
米国の結論を「日本でも同じ」と読まない
米国の保護の範囲は、米国法と登録実務を前提にしています。日本の制作者が米国で権利行使や登録を考える場合には参考になります。日本国内の扱いについては、日本の資料を基準にしてください。
共通して役立つのは「人が決めた部分を説明できるか」
両資料の論点を踏まえると、後から「ここは自分が決めた」と説明できる材料を残すことが役立ちます。記録自体が著作権の発生を保証するわけではありませんが、次の項目で人の関与を整理できます。
- 自分で描いた、書いた、撮った素材を入力したか
- 生成物のうち、どれを採用し、どこを直したか
- 複数の生成物を、どう並べ、組み合わせたか
- 最終成果物に残っている、AI生成のままの部分はどこか
制作記録テンプレート
以下は説明用の例で、実際の作品ではありません。自分の制作に合わせて書き換えてください。
作品名:(例)駅前の夜景イラスト
使用ツール・日付:(ツール名、バージョン、日付)
自分で用意した素材:手描きラフ(構図、人物の位置)
AIに渡した指示:ラフを入力。「夜、雨、暖色の窓」と指示
AIが作った部分:背景の細部、光の反射
自分で加えた部分:人物を描き直し、看板の文字を手作業で追加
採用の判断:5案から3を選び、左側を合成
最終成果物でAI生成のままの箇所:空の一部AIアシスタントに記録の整理を頼む依頼文
制作メモが散らかっているときは、次のように頼めます。機密や未公開情報は、伏せ字や架空の内容に置き換えて渡してください。
以下は私の制作メモです。次の4項目に分けて整理してください。
1) 自分で用意した素材 2) AIに渡した指示 3) AIが作った部分 4) 自分が決めた・直した部分
メモにない内容は補わず、不明な箇所は「不明」と書いてください。
【メモ】(ここに貼り付け)AIには整理だけを任せ、「どこが自分の創作か」の判断は人が行います。出力に事実と異なる補足がないか、元メモと照らして確認してください。
判断表:公開前に何を見るか
- プロンプトだけで1枚生成し、そのまま公開、記録しておくこと:ツール名、日付、指示文、注意点:米国の報告書では、当時の技術で指示だけによる出力の保護は認められない。日本でもアイデアにとどまる指示では著作物性は認められない
- 手描きのラフを入力して生成、記録しておくこと:ラフの原本、入力した事実、注意点:人の素材が出力に見えるかが米国では重要
- 生成後に描き込み・合成を行う、記録しておくこと:修正前後の画像、作業の記録、注意点:修正部分が創作的かが論点になる
- 文章をAIで下書きし、大幅に書き直す、記録しておくこと:下書きと最終稿の差分、注意点:何を残したかを説明できるようにする
契約や規約への影響
納品先やプラットフォームが、AI利用の申告や権利の表明を求めることがあります。その場合は、上の記録をもとに事実を正確に伝えてください。保護される範囲の最終的な判断は、案件ごとの事情と、各国の法に左右されます。

