業務で使うAIツールの申請・承認フロー:申請書の項目と可否の判断基準
AIを使いこなすClaudeで執筆し、GPTで自動校閲・修正しています。

業務でAIツールを使う申請は、「入力するデータの最高区分」「契約とアカウントの種類」「学習・保持・閲覧権限」「外部連携の範囲」「責任者」の5点を、10項目の申請書と3段階の判断表で見ると進めやすくなります。判定は「承認」「条件付き」「不可」の3つです。1項目でも「不可」の条件に当たれば不可、不可がなく条件付きが1つでもあれば条件付き、と決めておくと、審査のたびに話が振り出しに戻りません。 この記事では、そのまま使える申請書の項目一覧、判断基準表、記入例、申請者向けの下書き依頼文を示します。区分名や期限は説明用の編集案なので、自社の情報分類や規程に合わせて置き換えてください。
この記事の目次
まず決める:審査の物差しは「データ」と「契約」
AIツールの可否は、ツールの人気や性能ではなく、何を入れるかとどの契約・アカウントで使うかでほぼ決まります。
IPAのテキスト生成AIの導入・運用ガイドライン(2024年7月31日公開)は、導入時の検討事項、利用ルールの整備、リスク管理を章立てで扱っています。なお同ガイドラインは中核人材育成プログラム修了生の見解であり、IPAの公式見解ではないと明記されています。申請書の設計にあたっては、こうした資料の観点を参考にしつつ、自社の規程に落とし込む形になります。
個人情報を含む入力については、個人情報保護委員会が生成AIサービスの利用に関する注意喚起(2023年6月2日)を出しています。個人データを扱う可能性がある申請は、個人情報の管理担当や法務に回す前提で、申請書にその欄を設けます。
「学習に使われない」と「秘密が守られる」は別の話です。学習利用の有無は申請書の1項目にすぎず、保存期間、管理者や委託先による閲覧、削除手段、連携先への送信といった点を別々に聞く必要があります。
公式資料で確認できる例(2026年10月27日閲覧)
- OpenAIはChatGPTのプライバシーセンターの説明で、Business、Enterprise、Edu、ChatGPT for Healthcareのワークスペースの内容は、既定でモデルの学習に使わないとしています。利用できる機能や設定はプラン、地域、アカウント、ワークスペース設定によって異なり、セルフサービスのデータエクスポートはBusiness、Enterprise、Healthcareでは利用できず、Eduでは管理者が有効にした場合に利用できることも記されています。
- Anthropicはサポート記事で、Claude for Work(Team、Enterprise)など商用製品のデータは、開発パートナープログラムに参加しない限り学習に使わないとしています。記事では、顧客組織がコントローラー、Anthropicがプロセッサーとされています。Free、Pro、Maxなど個人向けプランは別の記事で扱われています。
つまり、同じ提供元でも法人向けと個人向けで条件が違います。申請書では「ツール名」だけでなく「プラン名と契約主体」を必ず聞きます。仕様は変わるため、申請時点の確認日を記録してください。
申請書の項目一覧(10項目)
- 1、項目:利用目的・業務、申請者が書くこと:何の作業を、誰が、週にどれくらい行うか、管理者が見る点:目的が具体的か。既存の承認済みツールで足りないか
- 2、項目:ツール名・提供元・プラン、申請者が書くこと:製品名、プラン名、個人契約か法人契約か、管理者が見る点:契約主体が会社か。アカウントは会社管理か
- 3、項目:入力するデータの最高区分、申請者が書くこと:区分A〜Dのうち最も高いもの。入力例を2〜3個、管理者が見る点:例と区分が合っているか
- 4、項目:学習への利用、申請者が書くこと:公式資料の該当箇所のURLと確認日、管理者が見る点:既定の状態、設定の要否、設定を強制できるか
- 5、項目:保存・削除・閲覧権限、申請者が書くこと:保存期間、削除方法、管理者や提供元の閲覧範囲、管理者が見る点:「不明」のままの項目がないか
- 6、項目:外部連携・エージェント機能、申請者が書くこと:連携するアプリ、ファイル、ブラウザ操作、自動実行の有無、管理者が見る点:権限の範囲と、人の承認が挟まるか
- 7、項目:出力の使い道、申請者が書くこと:社内下書きか、顧客・公開物か、管理者が見る点:人のレビューが入るか
- 8、項目:利用者と管理者、申請者が書くこと:利用者の範囲、運用責任者、退職・異動時の処理、管理者が見る点:責任者が1人決まっているか
- 9、項目:利用規約・契約の確認、申請者が書くこと:規約や契約書の確認者と確認日、管理者が見る点:秘密保持、再委託、準拠法などの確認が済んでいるか
- 10、項目:利用期間と再審査日、申請者が書くこと:試行か本採用か、期限、管理者が見る点:期限付きか(編集案では3〜6か月)
区分は、たとえば次のように置くと話が通じやすくなります(説明用の例)。
- A:公開済みの情報
- B:社内一般情報(社外に出す想定のない通常業務の文書)
- C:機密情報・顧客や取引先の情報
- D:個人情報、要配慮情報、認証情報(パスワード、APIキーなど)
承認・条件付き・不可の判断基準表
下の表は編集案です。各行を「申請書の項目」と1対1で照らし合わせます。
- 入力データの最高区分(#3)、承認:AとBのみ、条件付き:Cを含む。ただし下の行がすべて「承認」、不可:Dを含み、保護の確認が文書でとれない
- 契約・アカウント(#2)、承認:法人契約で、会社が管理するアカウント、条件付き:個人アカウントだがAのみ、不可:個人アカウントでB以上を入力
- 学習利用(#4)、承認:既定で学習に使わないと公式資料で確認できる、条件付き:設定で無効にできる。無効化を必須ルールにする、不可:無効にできない、または確認できずC以上を入力
- 保存・削除・閲覧(#5)、承認:保存期間、削除方法、閲覧範囲が文書で確認できる、条件付き:一部不明。ただしC以上は入力しない、不可:不明のままC以上を入力
- 外部連携(#6)、承認:連携なし、または無効化済み、条件付き:読み取りのみ、または実行前に人が承認、不可:広い権限で自動実行し、止められない
- 出力の使い道(#7)、承認:社内の下書き用途、条件付き:人のレビューを必須にする、不可:確認なしで顧客へ送信・公開
- 責任者・再審査(#8、#10)、承認:責任者と再審査日がある、条件付き:試行期間を区切って開始、不可:責任者が決まらない
「外部連携」と「出力の使い道」を独立させているのは、モデルへの入力だけでなく、AIが何かを実行する場面のリスクも見るためです。OWASPの2025年版LLM・生成AIアプリ向けTop 10は、プロンプトインジェクションや過剰な権限付与(Excessive Agency)をリスクとして挙げています。
「条件付き」で付ける条件の例
条件付きにするなら、承認の連絡に条件を明記し、条件と期限をセットで管理します。
- 区分D(個人情報など)と認証情報は入力しない
- 学習利用の設定を無効にし、設定画面のスクリーンショットを管理者に提出する
- 顧客向け成果物に使う場合は、担当者以外のレビューを入れる
- 外部アプリ連携とブラウザ操作の機能は管理者が無効にする
- 3か月後に再審査する
「不可」になった場合も、入力データの区分を下げる、法人プランに切り替える、連携を切るといった解消策を一緒に返すと、次の申請が前進します。
記入例と審査のやりとり(説明用の例)
架空の議事録要約ツール「ツールX」の申請例です。実在の製品や審査結果ではありません。
- 利用目的:営業部の定例会議の議事録要約(週2回、5人)
- プラン:法人向けプラン、会社契約、会社管理アカウント
- 入力データ:会議の文字起こし。最高区分はC(取引先名が出る)
- 学習利用:提供元ヘルプのURLと確認日を添付。既定で学習に使わない旨の記載あり
- 保存・削除:保存期間は「記載なし」、削除は利用者が可能
- 外部連携:カレンダー連携が既定でオン
- 出力:社内共有のみ
判定は次のとおりです。
- 区分Cは、学習利用の確認が取れており、法人契約なので条件付きの範囲
- 保存期間が「記載なし」のため、Cを入れたまま承認にはならない。提供元への照会を条件にする
- カレンダー連携は無効化を条件にする
判定:条件付き。 条件は、提供元に保存期間を文書で確認すること、カレンダー連携を無効にすること、再審査は3か月後とすることです。申請者と管理者が同じ表を見ているので、「何が足りないか」を項目番号で話せます。
申請者向け:根拠欄を下書きする依頼文
提供元の公式ヘルプや規約を読むのに時間がかかる場合は、AIに根拠欄の下書きを手伝わせることもできます。ただし、AIの要約は誤ることがあるので、書かれた内容は必ず原文と照合し、URLと確認日を申請書に残してください。貼り付けるのは公開されている公式資料だけにします。
次の公式ヘルプの本文だけを根拠に、利用申請書の項目4(学習への利用)と項目5(保存・削除・閲覧権限)の下書きを作ってください。
ルール:
- 本文に書かれていないことは「記載なし」と書く。推測で補わない
- 各項目に、根拠になった文を短く引用する
- プラン別に条件が違う場合は、プラン名ごとに分ける
- 最後に「提供元へ確認すべき点」を箇条書きにする
【公式ヘルプ本文】
(ここに貼り付ける)出てきた「記載なし」は、そのまま審査の論点になります。管理者側は、これを判断表の「不明」の行に当てはめれば済みます。
運用で外せない3つのこと
- 窓口を1つにする。 申請は情報システム、法務、個人情報の担当が見る場合でも、受付と判定の連絡は1人にします。
- 承認済みツールの一覧を公開する。 一覧には、プラン、入力してよい最高区分、条件、再審査日を載せます。ツール名だけの一覧では、プランの違いで事故が起きます。
- 再審査日に仕様を確認し直す。 学習利用、保存、連携機能は提供元が変更することがあります。確認日を残しておけば、次回は差分だけ見れば済みます。
出典・参考資料
- テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン(IPA)(新しいタブで開く)
- 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について(個人情報保護委員会)(新しいタブで開く)
- Privacy Center in ChatGPT(OpenAI Help)(新しいタブで開く)
- Does Anthropic Act as a Data Processor or Controller?(Claude Help Center)(新しいタブで開く)
- 2025 Top 10 Risk & Mitigations for LLMs and Gen AI Apps(OWASP GenAI Security Project)(新しいタブで開く)

