分厚い教科書や専門書を読む前に:AIで章ごとの「問い」と見取り図を作る
AIを使いこなす執筆にClaudeを使用しています。

結論から言うと、本文を丸ごと読ませる必要はありません。目次(章・節の見出し)だけをAIに渡し、「要約」ではなく「読む前に持っておくべき問い」を章ごとに作らせます。 読み終えたら、その問いに自分の言葉で答え、本文と照らして答え合わせをします。 要約を読むと、分かった気になりやすくなります。問いを先に持っておけば、読んでいる間に「この段落は問い2の答えだ」と探しながら読めます。 この記事で使える形にして渡すのは、次の3つです。 • 目次から問いと見取り図を作る依頼文 • 読後の答え合わせ欄つきシート • AIが作った問いを人が点検する表 入力例と出力の表は、仕組みを説明するために私が作った架空のものです。実際にAIで試した結果ではありません。この記事は自動校閲を経たもので、実機での試験や人による取材はしていません。
手順の全体像
- 目次をテキストにする(自分で打ち込んで、章・節の見出しだけに整える)
- 自分の状況(読む目的・既知の知識・使える時間)を3行で書く
- 後述の依頼文に目次と状況を貼り、見取り図と問いの表を作らせる
- 点検表で問いを選別し、不要な問いを削る
- 章を読んだあと、シートに「読後の答え」を自分で書き、本文のページで答え合わせする
渡すのは目次と状況だけにする理由
本文のスキャンや長い抜粋は貼りません。理由は二つあります。
一つ目は著作物の扱いです。 日本の文化庁は、生成AIと著作権の関係を整理した「AIと著作権に関する考え方について」を2024年(令和6年)3月15日に取りまとめ、資料を公開しています(文化庁「AIと著作権に関する資料」ページ)。これは日本の考え方で、海外の制度とは別です。個別のケースが適法かどうかは、この記事では判断できません。目次だけなら、書籍の本文をAIに入れる場面を減らせます。
二つ目は秘密情報です。 大学や職場の内部資料、未公開のマニュアルなどを教材にする場合は、目次であっても外部サービスに貼ってよいか、所属先のルールを先に確認してください。
Claudeのヘルプは、個人向けプラン(Free、Pro、Max)について、プライバシー設定でチャットをモデル改善に使うかどうかを調整できること、シークレットチャットはモデル改善設定が有効でも改善に使われないことを説明しています。一方で、機密性の高い情報や文書は慎重に扱うよう案内しています(確認時点の表示は2026年5月22日更新。Claudeヘルプ)。学習に使われない設定にすることと、内容が秘密として守られることは同じではありません。他のAIサービスを使う場合は、そのサービスの公式ヘルプで設定を確認してください。
目次から問いを作る依頼文
次の文をコピーし、【】の部分を置き換えて使います。
あなたは学習設計の補助役です。
以下は、私がこれから読む専門書の目次です。本文は渡していません。
要約は不要です。読む前に持っておくべき「問い」を章ごとに作ってください。
【私の状況】
- 読む目的:【例:授業の予習/資格試験の基礎固め/仕事で使う知識の整理】
- すでに知っていること:【例:高校数学までは分かる】
- 使える時間:【例:週5時間で2か月】
【目次】
【ここに目次を貼る】
【出力のルール】
1. 最初に「見取り図」を書く。
- 目次から読み取れる全体の流れ(5行以内)
- 章どうしの依存関係(どの章を先に読む必要がありそうか)
- 前提知識の候補(最大3つ)
※すべて目次からの推測であることを明記する。
2. 章ごとに問いを最大3つ作る。各問いに [定義/理由/比較/適用/誤解] のラベルを付ける。
3. 各章に「読後に自分の言葉で書く答えの形」を1行で付ける(例:二つの用語の違いを一文で)。
4. 答えそのものは書かない。目次にない内容を事実として断定しない。
目次の語だけでは意味が決められない用語には「要確認」と付ける。
5. 表(章 / 問い / ラベル / 答えの形)で出力する。ルール4が要です。AIは本文を見ていないので、答えを書かせると、もっともらしい誤りが混ざります。問いだけを作らせ、答えは本で確かめます。
入力例(説明用の例)
架空の教科書『統計学入門(仮)』の目次を使った入力です。
【私の状況】
- 読む目的:授業の予習
- すでに知っていること:平均と分散の計算はできる
- 使える時間:週4時間で6週間
【目次】
第1章 データを記述する
第2章 確率の基礎
第3章 確率分布
第4章 標本と推定
第5章 仮説検定
第6章 回帰分析次のような形の表が返ってくれば使えます。これは形を示すための例で、実際の出力ではありません。
- 第4章、問い:「標本」と「母集団」は、何がどう違うのか、ラベル:定義、答えの形:二つの違いを一文で
- 第4章、問い:なぜ全体を調べずに推定できるのか(要確認)、ラベル:理由、答えの形:理由を二文で
- 第5章、問い:第4章の推定と、第5章の検定は何が違うのか、ラベル:比較、答えの形:目的の違いを一文で
「要確認」が付いた問いは、本を読み始めてから言い回しを直します。
読後の答え合わせシート
問いの表ができたら、次の列を持つシートに写します。スプレッドシートでもノートでも構いません。
- 4、問い:「標本」と「母集団」の違いは何か、読む前の予想(1行):(例)標本は一部のデータ、読後の答え(自分の言葉):、根拠のページ:、判定:○/△/×、残った疑問:
判定は、○=本と合っていた、△=書けない・あいまい、×=本と違っていた、とします。使い方のコツは三つです。
- 読む前の予想を必ず書きます。 間違っていてもかまいません。予想と答えの差が、その章で一番学んだ部分になります。
- 読後の答えは本を閉じて書きます。 書けなかった問いは「△」にして、該当箇所を読み直します。
- 根拠のページを書きます。 後で見返したとき、答えが本のどこに基づくかが分かります。
答え合わせの相手は本です。AIは本文を持っていないので、「私の答えが本の内容と合っているか」は判定できません。AIに頼めるのは、答えの文が問いに対応しているか、用語の使い方に矛盾がないか、といった文章面の点検までです。
AIが作った問いを点検する表
出てきた問いを全部使う必要はありません。次の表で、人が選別します。
- 「はい/いいえ」で終わる、起きる問題:本を読まなくても答えられる、直し方:「なぜ」「何が違うのか」に書き換える
- 章タイトルを言い換えただけ、起きる問題:読む手がかりにならない、直し方:章内の具体的な対象を一つ選んで問う
- 一つの章に4問以上ある、起きる問題:読書が問い探しになる、直し方:重要な2〜3問に絞る
- 本を読まないと意味不明な語を含む、起きる問題:問いが読めない、直し方:「要確認」にして、読了後に書き直す
- 自分の目的と関係がない、起きる問題:時間が足りなくなる、直し方:削る。資格試験なら出題範囲に照らして選ぶ
「要確認」は特に大事な目印です。AIが目次の語から勝手に意味を補った疑いがあるからです。
1章読むごとに問いを更新し、最後に見直す
最初の問いは目次だけの推測なので、1章読むごとに直します。本文は貼らず、自分の言葉で書いたメモだけを渡します。別の会話で行う場合は、問いの表も一緒に貼ってください。
先ほど作った問いの表の続きです。
第【】章を読みました。私の答えメモは次のとおりです。
【自分の答えメモ】
- 問いに対応していない部分があれば指摘してください。
- 次の章で、この章の理解を前提にする問いを2つ追加してください。
- 本の内容が正しいかどうかは判定しないでください。内容の正誤を判定させないと明示するのは、本文を見ていないAIが「合っています」と答えるのを防ぐためです。
6章分が埋まったら、「△」と「×」だけを一覧にします。そこが、次に読み直す箇所、または先生や質問先に聞く箇所です。授業で教える立場の人は、同じ依頼文で受講者向けの「予習用の問い」を作らせ、配る前に点検表で必ず確認してください。

