AIを聞き手にして説明の穴を見つける:ファインマン式の復習手順
AIを使いこなす執筆にClaudeを使用しています。

ファインマンテクニックは、学んだことを平易な言葉で説明し、言葉に詰まった箇所を見つけて学び直す学習法です。これをAIでやるには、AIに「解説して」と頼むのをやめ、自分が説明し、AIには聞き手として質問だけをさせます。やることは三つです。 1. テーマを自分の言葉で説明する。 2. AIに、分かりにくかった箇所を質問させる。 3. 答えられなかった箇所を表に記録し、教科書や講義資料で確認して説明し直す。 AIに先に答えを出させると、読んで分かった気になりやすく、自分がどこで詰まるかが見えません。聞き手に徹してもらえば、曖昧に飛ばした部分が質問として返ってきます。この記事では、そのための指示文と記録表を用意しました。 本文中の指示文、会話、表の記入例は「説明用の例」です。特定のAIで実行した結果ではありません。お使いのAIで試し、出力が合わなければ指示文を調整してください。
復習手順(1テーマ15〜20分が目安)
この時間配分は編集上の目安です。長く感じたらテーマを小さく区切ってください。
- 範囲を決める。 「第3章全部」ではなく「機会費用とは何か」のように、1回で説明しきれる単位にします。
- 資料を閉じて説明を用意する。 ノートや教科書を見ずに、中学生に話すつもりで説明します。文章で打つなら、箇条書きより話し言葉のまま書くほうが詰まりが出ます。
- 指示文を貼り、説明を送る。 次の節の指示文を使います。
- 質問に答える。 答えられなかった質問や、言葉に詰まったところが記録対象です。答えられないときは、取り繕わず「分からない」と書きます。
- 記録表に書き、自分の資料で確認する。 AIに正解を聞く前に、まず教科書や講義資料に当たります。
- 翌日以降に同じテーマを説明し直す。 前回の詰まりが解消したかを表に書き足します。
聞き手役の指示文
そのままコピーして、最初の発言として貼ります。【 】は自分用に書き換えます。
あなたは「説明を聞く役」です。先生ではありません。
私が【テーマ名】を説明します。聞き手は【中学3年生/別分野の社会人】だと想定してください。
ルール:
1. 解説や訂正、答えの提示はしないでください。あなたの仕事は質問することだけです。
2. 私の説明を受け取ったら、分かりにくかった箇所を最大5つ、質問の形で出してください。
一度に出すのは1問だけにして、私が答えてから次に進みます。
私が「分からない」と書いたら、答えを教えずに次の質問へ進んでください。
3. 質問は次の観点で選んでください。
・定義されていない用語
・理由が飛ばされている箇所(「だから」の前後がつながらない)
・具体例がない抽象的な言い方
・条件や範囲が曖昧な言い方(「普通は」「だいたい」など)
4. 質問するときは、私の説明の該当部分を短く引用してください。
5. 「分からない」と答えた質問や、答えが曖昧だった質問は「詰まり」として覚えてください。
6. 私が「説明終わり」と書いたら、詰まりの一覧を表で出してください。
列は「引用/詰まりの種類/考えられる原因/要確認の有無」です。
種類は「用語・飛躍・例なし・条件・暗記」から選んでください。
7. 私の説明に事実の誤りがありそうなときは、正しい内容を断定せず、
「要確認」と付けて、何を確認すべきかだけ書いてください。
最初の返答は「準備できました。テーマをどうぞ」だけにしてください。ルール3のように観点を持たせると、感想だけの返答になりにくくなります。ルール7は、AIが誤ることを前提にした安全弁です。誤りの指摘も「要確認」にとどめ、最終判断は教材に戻って自分で行います。
説明用の例(会話の流れ)
テーマ「機会費用」を学習者が説明し、AIが質問する流れの例です。
- 学習者:「機会費用は、何かを選んだときにあきらめた別の選択肢の価値です。だから一番いい選択肢の価値になります。」
- 聞き手(例):「『だから』の前後がつながりません。なぜ『一番いい選択肢』になるのですか。あきらめた選択肢が3つあったら、どれを数えますか。」
- 学習者がここで答えられなければ、「理由の飛躍」として記録対象になります。
詰まりの記録表
コピーして、ノートや表計算ソフトに貼ってください。1行に1つの詰まりを書きます。2行目は説明用の記入例で、実際の学習記録ではありません。
- (例)10/28、テーマ:機会費用、詰まった箇所(自分の言葉で):あきらめた選択肢が複数あるとき、どれを数えるか答えられなかった、種類:条件、原因の仮説:定義を丸暗記していて範囲を確認していない、確認した資料:教科書の該当節、直した説明:「あきらめた中で最も価値が高いものだけ」と明記、再説明の日と結果:(例)11/1 説明できた。具体例はまだ弱い
「種類」は次の6つから選ぶと、後で集計しやすくなります。
- 用語:言葉の意味を自分の言葉で言えない
- 飛躍:理由や手順が抜けている
- 例なし:具体例を出せない
- 条件:範囲・前提・例外があいまい
- 暗記:言えるが、なぜそうなるか答えられない
- 要確認:AIの指摘が正しいか未確認
同じ種類が続くなら、勉強の偏りを見直す手がかりになります。たとえば「暗記」が多いなら、問題演習の前に「なぜ」を書き出す時間を取ります。これは編集上の見立てで、効果を保証するものではありません。
AIの指摘をどう扱うか(判断表)
- 自分が答えられなかった質問、対応:記録表に追加。資料で確認してから説明し直す
- 答えられたが、AIが「まだ分かりにくい」と言う、対応:例を1つ足して再説明し、通じたかをもう一度質問してもらう
- 「説明が間違っています」と断定された、対応:そのまま受け入れず、教科書・講義資料・先生の説明と照合する。種類は「要確認」
- 資料にない情報を足してきた、対応:試験範囲かを確認する。範囲外なら記録しない
- 「とても良い説明です」だけで質問がない、対応:観点(指示文のルール3)を示し、「穴を最低3つ探して」と追加で頼む
AIが自信ありげに答えても、それが正しい根拠にはなりません。定期テストや資格試験の基準は、教材と出題元にあります。
入力する内容の注意
説明に使う内容は、教科書の要点や自分のノートの範囲に留めると安全です。次のものは入れず、架空のデータに置き換えてください。
- 個人名、学校名、クラスなどが特定できる情報
- 未公開の試験問題、社内研修資料、守秘義務のある資料
- 他人の答案や成績
データの扱いはサービスごとに違います。一例として、OpenAIのヘルプでは、ChatGPTのFree、Plus、Proの個人ワークスペースで、データ共有(「Improve the model for everyone」)が初期状態でオンとされ、設定でオフにできます。オフにすると新しい会話は学習に使われませんが、回答に高評価・低評価などのフィードバックを送ると、その会話全体が学習に使われる可能性があると書かれています。一時チャットは履歴に表示されず、モデル改善にも使われませんが、安全目的で最大30日保持されることがあり、保存すると通常のチャットとして扱われます。Business、Enterprise、Edu などのワークスペースは別の扱いです(参照:How your data is used to improve model performance、Data controls in ChatGPT。2026年10月28日に確認。設定や名称は変わることがあります)。ただし、これは学習利用の設定の話で、機密情報を入力してよいという意味ではありません。他のサービスを使う場合は、各社の説明と利用規約を確認してください。
学校の授業や課題で使う場合は、先生や学校の方針が優先です。文部科学省の「生成AIの利用にあたって」のページでは、「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン」(Ver. 2.0、令和6年12月26日改訂)が示され、児童生徒が学習で生成AIを使う場面では、発達の段階や情報活用能力の育成状況に十分留意し、リスクへの対策を講じたうえで検討すべきだとされています(文部科学省「生成AIの利用にあたって」)。このページに入力内容の具体的な制限は載っていないため、個別のルールは所属する学校や自治体の案内で確認してください。
教える人が使う場合
教える側の使い方として、次のものが考えられます。
- 授業準備では、自分の説明案を聞き手役に貼り、生徒がつまずきそうな箇所を質問させる
- 生徒に使わせるときは、記録表だけを提出物にし、AIとのやり取りの全文は求めない
- 評価に使うなら、AIの指摘ではなく、生徒が資料で確認して直した説明を見る
最後に、今日やることを一つに絞るなら、直近で学んだテーマを1つ選び、指示文を貼って3問だけ答えてみてください。答えられなかった1問が、最初の記録表の1行になります。

