課題でAIを使ってよい範囲を決める:教える人のための課題設計の考え方
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課題でAIを使ってよい範囲は、「全面禁止」か「自由」かで一括して決めるのではなく、課題ごとに「その課題で測りたい力を、AIが代わりに発揮してしまうか」を基準に決めるのが現実的です。測りたい力が代替されるなら「使わない」、代替されにくい作業だけなら「補助のみ」、AIの出力を扱うこと自体が学習目標なら「使用前提」とします。そのうえで、使った場合に何をどう見せてもらうかを、提出物の一部として設計します。 この記事では、課題タイプ別の判断表、提出時の記録欄、課題文の文面を示します。表や文面は編集部が作った説明用の例で、特定の学校での実施結果ではありません。自校・自科目の目的に合わせて書き換えてください。
最初に確認する枠:公的文書と所属先のルール
課題単位の設計は、次の枠の内側で行います。
- 小・中・高校:文部科学省の「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン」が基準になります。文部科学省の解説ページには、Ver. 2.0(2024年12月26日公表)が教職員や教育委員会などの学校教育関係者向けの参考資料であること、児童生徒の学習活動での利用は発達の段階や情報活用能力の育成状況に留意し、リスクへの対策を講じたうえで検討すべきことが書かれています。最新版は使う時点で同ページから確認してください。
- 大学・高専:文部科学省は2023年7月13日付で「大学・高専における生成AIの教学面の取扱いについて」を周知しています。ページには、利活用が想定される場面例や留意すべき観点をまとめたこと、各大学・高専が教育の実態に応じて主体的に対応し、状況変化を踏まえて見直すことが重要であることが示されています。具体的な線引きは各機関の方針が基本で、科目や課題の設計はその内側で決めます。
- 共通:学校・学科の規程、成績評価の基準、利用するAIサービスの年齢条件や規約が先にかかります。
この記事が根拠にしたのは上の2ページの記載です。両ガイドラインのPDF本文は確認できていないため、宿題やレポートの扱いについての個別の文言は、原文で確認してください。
判断の3つの問いと、課題別の判断表
課題を出す前に、次の3つに答えます。
- この課題で、結局何ができるようになってほしいか。(例:主張を根拠で支える、手順を理解して計算する)
- AIがその作業を代わりにやると、1.の力が測れなくなるか。測れなくなるなら「使わない」寄りです。
- 使った事実と使い方を、提出物から確認できるか。確認できないなら、その使い方は許可しにくくなります。
ポイントは、「AIを使うか」ではなく「どの作業にAIを使うか」で分けることです。同じレポートでも、論点の洗い出しは可、本文の生成は不可、という分け方ができます。
区分は3段階にします。A 使わない、B 補助のみ(決めた作業に限って使える)、C 使用前提(AIの出力を読む・検証する・改善することが課題の一部)です。
- 基礎ドリル・小テスト、測りたい力:知識の定着、手順の習得、区分の例:A、許す使い方:なし、許さない使い方:解答の生成、答え合わせの代行、提出時に求めるもの:使っていない旨のチェック
- 読解・要約、測りたい力:原文を自分の言葉で読み取る力、区分の例:AまたはB、許す使い方:B:分からない語の意味確認、許さない使い方:要約文の生成、提出時に求めるもの:使った場合は目的と、自分で直した点
- 意見型の小論文、測りたい力:主張と根拠の組み立て、区分の例:B、許す使い方:論点の洗い出し、誤字脱字・表現の校正、許さない使い方:本文や結論の生成、提出時に求めるもの:記録欄と、自分で書いた根拠の説明
- 調べ学習・探究、測りたい力:情報の収集と吟味、区分の例:BまたはC、許す使い方:検索語の候補、資料整理の方法の相談、許さない使い方:出典未確認の事実の採用、提出時に求めるもの:事実確認した出典の一覧
- プログラミング、測りたい力:設計と動作の理解、区分の例:BまたはC、許す使い方:エラー文の解説、テスト案の提案、許さない使い方:理解せずに丸ごと貼り付け、提出時に求めるもの:自分が説明できる範囲の注記
- AI出力の批評、測りたい力:誤りや偏りを見抜く力、区分の例:C、許す使い方:AIの回答を生成して題材にする、許さない使い方:検証なしの提出、提出時に求めるもの:AIの出力と、誤り・改善点の指摘
迷ったら、まずBから始め、許す作業を具体的に書き出すと運用しやすくなります。
提出時の記録欄の例
B・Cの課題には、提出物の末尾に次の欄を付けます。
【AI利用の記録】
□ 使っていない
□ 使った → 以下を記入
1. 使ったサービス名と利用日:
2. 使った目的(○をつける):
アイデア出し / 構成の相談 / 校正 / 用語の確認 / 検証対象の生成 / その他( )
3. AIに入力した内容の要約:
(氏名・学校名など個人が特定できる情報、他人の文章を入れていないこと □確認)
4. AIの出力のうち、採用した部分と、自分で変えた点:
5. 事実や数字を確認した方法(出典名など):
6. 自分の考えとして書いた部分はどこか:設計のポイントは3つです。
- チャット履歴の全文提出は必須にしない。確認や保管の負担が大きく、入力内容に個人情報が混じる懸念もあります。要約と「採用・変更」の記述で足ります。
- 項目4と6が中心。どこまでが自分の判断かを本人が言葉にすることが、学習にも評価にもなります。
- 前提は自己申告。申告を罰する設計にすると正直に書かれなくなるため、記録を丁寧に書いたこと自体は減点しない、と伝えておきます。
課題文の例と、下書きをAIに頼むときの依頼文
区分は課題文の冒頭に明記します。いずれも説明用の例です。
区分B
この課題のAI利用区分は B(補助のみ) です。使ってよいのは「論点の洗い出し」と「誤字脱字・表現の校正」です。本文の生成、結論の決定には使わないでください。使った場合は、末尾の「AI利用の記録」を記入してください。提出後、内容について口頭で2〜3問質問することがあります。
区分A
この課題は A(使わない) です。計算の手順を自分で再現できているかを確認するためのものです。分からない場合は、分からない箇所を書いて提出してください。
区分C
この課題は C(使用前提) です。AIに指定の質問をして回答を得て、その回答の誤りや不足を3点以上、根拠つきで指摘してください。回答全文と、使ったサービス名を付けてください。
「口頭で質問することがある」と示すのは、記録の信頼性を補う手段です。質問は「この段落の根拠は何か」「ここを別の言葉で説明すると」程度で足ります。話すことに配慮が必要な学習者には、書面など別の方法を用意してください。
区分の説明文の下書きをAIに手伝わせることもできます。任せるのは文面の下書きまでで、区分の決定と最終確認は教員が行います。学習者の氏名や答案は入力せず、課題の目的だけを渡します。
次の課題について、生徒向けのAI利用区分の説明文を書いてください。
・課題の目的:[例]根拠を挙げて自分の主張を組み立てる力を見る
・区分:B(補助のみ)
・使ってよい作業:論点の洗い出し、誤字脱字の校正
・使ってはいけない作業:本文・結論の生成
・提出物:AI利用の記録(使ったサービス、目的、採用部分と変更点)
・対象:[例]高校1年生
条件:200字程度、やさしい言葉、禁止だけでなく理由を一文入れる。出力は、許可と不許可の作業が逆になっていないか、目的が反映されているか、自校の規程と矛盾しないかを、人が読んで確認します。
運用で迷いやすい点
- 全部をCにしない。AIの扱い方を学ぶ課題と、自力で考える力を測る課題を学期の中に両方置くと、使い分けそのものが学習になります。
- 最初は小さく試す。初回はBの小さな課題で運用し、書きにくい記録欄の項目を直してから広げます。
- 記録が空欄なのに、不自然に整った提出物があったとき。断定せず、口頭での確認から入ります。確認の方法は事前に課題文へ書いておくと、公平に運用できます。
- 学校や学年で扱いが違う。同じ科目でも、学年や規程によって区分は変わり得ます。共有する判断表には「適用範囲」を書いてください。

