同じお題でAIが作ったゲームと人が作ったゲームを、作り手を伏せて初見の人に遊んでもらう手順
遊びをつくる執筆にClaudeを使用しています。

同じお題から、AIが作ったゲームと人が作ったゲームを用意し、どちらが誰の作品かを伏せて初見の人に遊んでもらう場面を考えてみます。遊んだ人は作り手を当てられるのでしょうか。当てられるとしたら、何が手がかりになるのでしょうか。当てられないとしても、反応がまったく同じになるとは限りません。 この記事は、その問いに自分で答えを出すための実験の設計書です。結果は載せていません。見るのは「作り手の当てやすさ」だけではなく、反応に違いが出る点と、出ない点を分けて記録することです。たとえば最初の操作までの時間は違うのに、「また遊びたい」の評価は割れない、といった分かれ方が見えれば、次に作るゲームで手を入れる場所が具体的になります。 手元にあるのは、お題文と、遊んでくれる数人だけで足ります。以下、準備、手順、記録、結果の読み方、誤りやすい点の順に説明します。
何を比べるのかを先に決める
最初に、問いを三つに分けます。混ぜたままだと、結果の読み方が曖昧になるためです。
- 推測:遊んだ人は作り手(AIか人か)を当てられるか。当てた人はどんな理由を挙げるか。
- 行動:初見の人の動き(最初の操作までの時間、詰まる場所、自分から再挑戦するか)に差があるか。
- 評価:質問に答えてもらった5段階の評価に、一貫した差があるか。
推測は印象、行動は観察、評価は自己申告です。性質が違うので、記録の欄も分けて持ちます。
ここで一つ大事なのは、この実験で分かるのは「そのお題・その作り手・その進め方」での傾向だけだという点です。AI一般と人一般の比較にはなりません。この前提を紙の一番上に書いておくと、後で結果を過大に読まずに済みます。
準備するもの
お題を一文で決める
お題は短く、判断の余地が少ないものを選びます。たとえば次のような形です。
- 「左右に動いて、上から落ちてくるものを30秒避けるゲーム」
- 「3×3の盤で、数字を小さい順に並べるゲーム」
仕様を細かく書きすぎると、どちらが作っても同じものになります。逆に曖昧すぎると、お題の解釈の差を作り手の差と取り違えます。「操作方法」「終わり方」「勝ち負けの有無」の3点だけを文で固定し、それ以外は作り手に任せると、差が出る余地と比較可能性のバランスが取れます。
作る側の条件をそろえる
AI版と人版で、次の条件を同じにします。
- 制作時間の上限(例:どちらも同じ時間枠)
- 提出形式(1つのHTMLファイル、外部ライブラリなし、外部通信なし)
- 入口の構成(タイトル画面を付けるか付けないか)
- 操作手段(キーボードのみ、またはタッチのみ)
なお、アソバースに投稿する場合の形式(直下のindex.html、20MiB以内など)に合わせておくと、後から公開したくなったときに作り直さずに済みます。ただし、この実験自体は投稿しなくても行えます。
手を入れる範囲を事前に決める
AIが出したものに、人がどこまで修正してよいかを先に決めます。たとえば「動かないときの修正だけ可」「見た目の調整は不可」のように線を引きます。線を引かないと、AI版が実質「人が仕上げたAI版」になり、比較の意味が変わります。決めた線は記録票の隅に書き残します。
見た目の手がかりをそろえる
作り手を匂わせる要素を、両方から消します。
- タイトル、ボタンの文言、説明文の文体
- ファイル名やブラウザのタブに出る名前
- 作者名やクレジット
タイトルは「ゲームA」「ゲームB」のように機械的なラベルにするか、同じ文字数・同じ調子の仮題を付けます。A・Bのどちらをどちらが作ったかは、割り当て表に別保管します。割り当て自体もコイントスなどで決め、「Aは常にAI」のような偏りを避けます。
アソバースの投稿画面にある「紹介文と遊び方を作成」を使う場合は、両方に同じ手順で使います。片方だけ使うと、紹介文の文体という別の変数が入ってしまいます。この実験では、紹介文を付けずに遊んでもらうほうが単純です。
遊んでもらう人を決める
初見の人とは、お題の内容と作り手の事情を知らない人です。ゲームを作る人ばかりに頼むと、「AIっぽい」という先入観で見る可能性が高くなります。ゲームを日常的に遊ぶ人と、そうでもない人の両方に声をかけると、反応の幅が見えます。人数は、傾向を確かめる目安として6〜10人程度から始めるのが現実的です。少人数で統計的な結論は出せないため、「次の仮説を立てる材料」として扱います。
手順:遊んでもらい、記録する
順番を入れ替える
先に遊ぶ方が有利になる(または不利になる)可能性があるので、順番は参加者ごとに入れ替えます。AB、BA、AB、BA……と交互にするだけで、順序の偏りを減らせます。次の最小のHTMLは、参加者数を入れると順序表を出します。
<!doctype html>
<meta charset="utf-8">
<title>順序表</title>
<input id="n" type="number" min="1" value="8">
<button id="go">表を作る</button>
<pre id="out"></pre>
<script>
document.getElementById("go").onclick = () => {
const n = Number(document.getElementById("n").value);
const lines = ["参加者, 1回目, 2回目"];
for (let i = 1; i <= n; i++) {
const ab = i % 2 === 1;
lines.push(`${i}, ${ab ? "A" : "B"}, ${ab ? "B" : "A"}`);
}
document.getElementById("out").textContent = lines.join("\n");
};
</script>表示された内容は、記録票にそのまま貼れます。
遊ぶ前の説明は最小限にする
伝えるのは「2つの小さなゲームを順に遊んでください。操作方法は画面を見て判断してください」程度です。「片方はAIが作りました」という情報は、遊び終えるまで伏せます。実施者が答えを知っていると、表情や相槌で漏れやすいので、遊んでいる間は画面を覗き込まず、口も出さないと決めておきます。
1人あたりの流れ
- 1本目を、ゲームが終わるまで、または自分で止めるまで遊んでもらう(目安は数分以内)
- 評価の質問に答えてもらう
- 2本目も同様に遊び、質問に答えてもらう
- 最後に「どちらが人の作ったものだと思うか」と、その理由を聞く
- そこで初めて、実際の対応を伝える
自分から続けて遊びたがった場合は、止めずに回数を数えます。この「自発的な再挑戦」は、アンケートより正直な反応になりやすい指標です。
記録の取り方
記録は1プレイを1行にします。次のような欄を用意します。
- 参加者番号、内容:1, 2, 3…、単位・形式:数字
- ラベル、内容:A または B、単位・形式:文字
- 順番、内容:1本目/2本目、単位・形式:数字
- 最初の操作まで、内容:画面表示から最初の入力まで、単位・形式:秒(ストップウォッチ)
- 詰まった場所、内容:手が止まった箇所と本人の発言、単位・形式:短い文
- 不具合、内容:想定外の挙動があったか、単位・形式:あり/なし+内容
- 自発的な再挑戦、内容:促さずに繰り返した回数、単位・形式:回
プレイ後の質問は、同じ文面を両方に使い、5段階(1〜5)で答えてもらいます。
- 何をすればよいか、すぐ分かった
- 操作の手触りが心地よかった
- もう一度遊びたいと思った
最後に自由記述で「印象に残った点」を1行だけ聞きます。質問を増やしすぎると、後半の答えが雑になるため、これくらいに絞ります。
作り手の推測は、「どちらが人の作品だと思うか」とその理由の2つを記録します。「自信の度合い」を5段階で付けてもらうと、あてずっぽうと確信を区別できます。
結果の読み方
結果を読む順番は、推測、行動、評価です。ここでは数値を示さず、判断の枠組みだけを挙げます。
推測の読み方
当てた人の割合だけを見ても決められません。人数が少ないと、偶然でも偏りが出るためです。見るべきは理由の中身です。
- 理由が「バグっぽい」「雑」など品質の差を指しているなら、判断材料は作り手というより完成度です。人版でも荒ければ同じ理由で疑われる可能性があります。
- 理由が「文言が丁寧」「見た目が整っている」など様式に向いているなら、手がかりを消し切れていなかったかを疑います。
- 理由がばらばらで、自信も低いなら、少なくともこの条件では、見分ける決め手がなかったことを示す材料になります。
行動と評価の読み方
行動と評価は、AとBの差の向きがそろっているかを見ます。
- 多くの参加者で同じ向きの差が出ている項目は、「違いが出る点」の候補です。
- 差の向きが参加者ごとにばらばらの項目は、「違いが出ない点」の候補です。
- 順番(1本目か2本目か)で差が説明できる場合は、作り手の差ではなく順序の影響です。1本目の評価が総じて高い、または低いかを確認します。
行動の欄(最初の操作までの時間、詰まった場所)と、評価の欄(分かりやすさ)が食い違う場合は、記録した理由の発言に戻ります。「すぐ分かった」と答えたのに最初の操作が遅い、といったずれは、質問の言葉の捉え方の違いかもしれません。
最後に、違いが出た点が1つでも見つかったら、次の実験にします。同じ点を狙って別のお題でやり直し、同じ向きの差が再び出るかを確かめます。1つのお題だけでは、お題の性質による差か作り手による差かを区別できません。
起こりやすい誤り
- ラベルや文言が作り手を示してしまう:タイトルの文体や説明の丁寧さが、両者でそろっていないと、推測の手がかりになります。
- AI版に人が手を入れすぎる:修正の範囲を事前に決めておかないと、何と何を比べたのか分からなくなります。
- 人版の作り手の腕前に結果が引きずられる:作り手が1人だけだと、個人差が混ざります。可能なら複数のお題、複数の作り手で繰り返します。
- 質問が誘導になる:「AIらしさを感じましたか」のような質問は、答えを先に決めてしまいます。「どちらが人の作品だと思うか」という聞き方に統一します。
- プレイ中に口を出す:ヒントや励ましは、片方のゲームの評価を押し上げます。
- 少人数の数字を結論にする:6〜10人の結果は、傾向の確認までにとどめます。
公開済みの作品には、プレイ回数やレビューの数字も付きます。ただしプレイ回数は作品の起動の回数で、人数ではありません。また、レビューは自由に書かれた評価で、ブラインドの条件で集めたものではありません。この実験の記録とは別物として扱います。
次の行動
お題を一文で決め、AI版と人版を同じ条件で用意するところから始めます。割り当て表と順序表を作り、まずは2〜3人に遊んでもらって、記録票の欄が足りているかを確かめます。欄が整ったら人数を増やし、違いが出た点と出なかった点を分けて書き留めます。

