声の出演者に出す同意書の書き方:AI音声に使う範囲・期間・公開先を決める
AIを使いこなすClaudeで執筆し、GPTで自動校閲・修正しています。

出演者の声をAI音声にするなら、同意書には最低でも「目的」「AIで作ってよい内容と禁止する内容」「使うツールと学習の扱い」「公開先」「期間」「削除・撤回の対応」の6点を書いておきます。「作品に出演してもらう」という合意と、「声を再現して別のセリフを話させる」という合意は別物です。後者は、収録時には想定していなかった使われ方になりやすいからです。 この記事では、そのまま埋められるひな形と、各項目の決め方を示します。ひな形は編集上の提案であり、法的な有効性を保証するものではありません。実際に使う前に、契約に詳しい専門家(弁護士など)に確認してください。
先に押さえる前提:ツール側も「本人の同意」を求めている
ElevenLabsのVoice Cloning紹介ページは、他人の声のクローンには本人の明示的な同意が必要だと説明しています。利用禁止ポリシー(私が閲覧した時点の表示は2026年10月9日更新)でも、存命の個人の声・身元・容姿を、明示的かつ十分な説明に基づく同意、またはその他の有効な許諾なしに複製・合成・なりすましすることを禁じています。また18歳未満の録音から音声モデルを作ることも禁止です。
つまり同意書は、出演者との約束であると同時に、ツールの規約を守るための記録にもなります。「informed(十分な説明を受けた上での)」同意とされている以上、「AIに使うことがある」とだけ書くのは弱い書き方です。何に使うのかを具体的に書きます。ただし、同意があっても機能ごとの制限は別です。ElevenLabsのProfessional Voice Cloningの公式説明では、他人の声は同意があっても運営者のアカウントでは作成できません。出演者自身が自分のアカウントで作成・本人確認を行い、運営者へ非公開で共有する手順が示されています。
なお、日本での声の扱い(著作権、人格的利益、実演家の権利など)がどう整理されるかは、個別の事情で変わります。文化庁は「AIと著作権について」のページで、「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月15日)や「チェックリスト&ガイダンス」(2024年7月31日)を公開しています。ただしこれらを根拠に個別の契約が適法だと言えるわけではないので、ひな形は専門家確認が前提です。
決める6項目と判断表
先に、書く内容を決めます。迷いやすい点を表にします。
- 目的、決めること:何の作品か、狭く書く例:「ポッドキャスト『○○』の第1〜10話の補足ナレーション」、広く書く例(要注意):「当団体の各種コンテンツ」
- 範囲、決めること:何を話させるか、狭く書く例:台本は出演者が事前確認したものだけ、広く書く例(要注意):運営側の判断で自由に生成
- ツール・学習、決めること:どのサービスで作り、何の学習に使うか、狭く書く例:名称・機能・送信素材・サービス改善用の学習設定を明記し、変更時は再同意、広く書く例(要注意):「必要なAIツール」
- 公開先、決めること:どこで流すか、狭く書く例:自社のポッドキャスト配信と公式サイト、広く書く例(要注意):「あらゆる媒体」
- 期間、決めること:いつまで生成・公開してよいか、狭く書く例:契約日から1年間、広く書く例(要注意):無期限
- 削除・撤回、決めること:やめたいと言われたらどうするか、狭く書く例:通知後○日以内に新規生成を停止、音声モデルを削除、広く書く例(要注意):規定なし
迷ったら狭く書き、広げたくなった時点で追加の同意書(変更合意)を取ります。後から広げるのは手間ですが、広く書いて揉めるよりは安全です。
範囲では「禁止する内容」も書く
出演者が最も気にするのは、自分の声で何を言わされるかです。許可する内容に加え、次のような禁止事項を入れておくと安心感が違います。
- 政治的主張・宗教勧誘・商品の推薦(出演者が事前に承認したもの以外)
- 出演者本人が話したと誤解させる使い方(AI音声であることの表示を省く等)
- 第三者への音声モデルの提供・貸与・共有
- 性的・差別的・詐欺的な内容
削除対応では「できること」と「できないこと」を分ける
削除は約束しすぎないことが大切です。管理画面での削除と、サービス側に残るデータの削除は分けて確認します。ElevenLabsのプライバシーポリシーにも、法令上の理由などによる保持が記載されています。すでに配信された回の音声や、リスナーが保存したデータまでは完全には取り戻せません。そこで次のように分けて書きます。
- 通知後に必ず行うこと:新規生成の停止、運営者が管理する音声モデルと元録音の削除、サービス側への必要な削除申請、対応状況の連絡
- 努力すること:未公開の制作物の差し替え、自社管理下の配信先からの取り下げ
- 約束しないこと:第三者に渡った既存データの回収、サービス側の保持条件を超える完全削除
また、声の再現に必要な処理と、サービス全体のモデル改善のための学習は区別します。ElevenLabsの学習利用に関する公式説明では、学習利用を無効にすると、それ以降に送信する新しいデータが学習対象から外れます。使うサービスの設定を送信前に確認し、ひな形の4項へ記録します。
同意書ひな形(説明用の例)
【 】を埋めて使います。社名・氏名・金額などはすべて説明用の仮のものです。
声の利用に関する同意書
【運営者名】(以下「運営者」)と【出演者名】(以下「出演者」)は、
出演者の声をAI音声として利用することについて、以下のとおり合意します。
1. 目的
運営者は、【作品名・企画名】(以下「本作品」)の制作のためにのみ、
出演者の声の録音データを用いてAI音声を作成します。
2. 利用する素材
出演者が提供した【収録日・本数・ファイル名など】の録音データ
3. 生成してよい内容
(1) 出演者が事前に台本を確認し、承認した内容に限ります。
(2) 次の内容には使用しません:【禁止事項を列挙】
(3) AI音声であることを【概要欄・冒頭など】に表示します。
4. 使用するツールと学習
(1) 使用ツール:【サービス名・プラン・機能・モデルを管理するアカウント】
(2) 出演者は、本作品の制作に必要な【録音データ等の送信素材】を、
【サービス提供事業者名】へ送信・処理させることに同意します。
サービス側の学習利用:【声の再現に必要な処理と、サービス改善用の学習利用の有無・設定】
サービス側の保管・削除条件:【規約・プライバシーポリシーURL、確認日、保持条件】
運営者は、この処理に必要な範囲を除き、録音データやAI音声モデルを
第三者に提供・貸与・共有せず、本合意の目的以外に使用しません。
(3) ツール・機能・送信先・学習利用の条件を変更する場合は、
事前に出演者へ通知し同意を得ます。
5. 公開先
【自社サイトURL/配信サービス名】に限ります。
公開地域は【日本国内/限定なし】とします。
6. 期間
新規生成できる期間:本合意の日から【○年○か月】間。
公開できる期間:【開始日〜終了日】。公開期間満了後は、運営者の管理下にある
配信先から【○日】以内に取り下げます。
生成期間満了後は新規生成を行わず、8項(2)に準じて削除対応を行います。
期間を延長する場合は、満了前に別途合意します。
7. 対価・クレジット
対価:【金額または無償】 / クレジット表記:【方法】
8. 同意の撤回・削除対応
(1) 出演者は【連絡先】への通知により、いつでも将来に向けて同意を撤回できます。
(2) 運営者は通知後【○日】以内に、新規生成を停止し、自ら管理する
AI音声モデルと元録音データを削除します。サービス側に別途申請が必要な場合は、
同期限内に削除申請を行います。実施内容・完了状況・残存するデータとその理由を
出演者へ連絡します。
(3) 公開済みの作品については、運営者の管理下にある配信先から
【○日】以内に取り下げるよう努めます。第三者に渡ったデータの回収は
約束できません。
(4) 撤回の場合の対価の扱い:【記載】
9. 保管と安全管理
録音データとモデルは【保管場所・アクセスできる人】に限り保管します。
10. 出演者の確認
出演者は、本書の内容について説明を受け、質問する機会があったことを確認します。
□ 18歳以上である
日付: 【 】 運営者: 【 】 出演者: 【 】18歳未満の方の声は、ElevenLabsのポリシー上、音声モデルの作成自体が禁止されています。別のツールを使う場合も、そのツールの規約を各自で確認してください(この記事では他社の規約までは確認していません)。
出演者への依頼文例(説明用の例)
同意書は、読んでもらえなければ意味がありません。送付時に次のような説明を添えます。
○○さん、ポッドキャスト『△△』で、番組の補足ナレーションに○○さんの声をAI音声として使わせていただけないかご相談です。使うのは第1〜10話の補足部分のみで、台本は毎回事前にお見せします。公開は自社サイトと配信アプリのみです。「やっぱりやめたい」と思われた場合は、いつでも撤回でき、その後の新規生成は止め、当方が管理する音声モデルを削除し、サービス側にも必要な削除申請を行います。サービス側に残るデータは、同意書に記載した保持条件に従います。ただし、すでに配信済みの回の取り下げは、当方で管理している範囲となります。添付の同意書をご覧のうえ、不明点は何でもご質問ください。お返事は急ぎません。
署名前の確認手順
- ツールの規約を開く:使うサービスの利用規約・禁止ポリシーの日付を確認し、同意書に書くツール名と合わせます。
- ひな形の【 】を埋める:判断表のとおり、狭い書き方から始めます。
- 出演者に口頭でも説明する:「何を言わされる可能性があるか」と「削除でできないこと」は特に伝えます。
- 専門家に確認してもらう:報酬、独占性、商用利用、未成年、海外配信が絡む場合は特に必要です。
- 署名後の保管:同意書、録音データ、承認した台本を同じ場所で管理し、削除の依頼が来たときに探せる状態にします。
AIに任せられるのは、ひな形の下書き作成や、依頼文の言い換え程度です。契約内容を決める判断と、法的な確認は人が行います。AIに入力する際は、実在の出演者名や連絡先ではなく、仮の名前に置き換えてください。

