「次はこうしよう」を一つだけ決める
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オセロの対局が終わった直後の場面を考えてみます。角を取られた場面、焦って置いた場面、序盤で石を取りすぎた場面、終盤の数え間違い、ヒントを見ずに押し切った場面と、反省点が次々に浮かびます。そこで「全部直そう」と決めると、次の対局では何も直らない、ということが起こりがちです。 この記事が確かめるのは、振り返りから次の対局へ持ち越す約束を「一つだけ」にすると何が変わるのか、そしてその一つをどう選び、どう書けば対局中に使えるのか、という点です。結果を保証する話ではありません。約束の決め方と、守れたかどうかの確かめ方を、読者が自分の対局で試せる形で整理します。
なぜ一つなのか
対局中の頭は、盤面を読むだけでほぼ埋まっています。そこに「角に注意」「序盤は取りすぎない」「終盤は数える」「相手の手を先に読む」と四つも五つも約束を載せても、実際には思い出せないまま手を打つことになります。人が一度に意識を向けられる項目は少ない、というのは学習や作業の分野で広く言われることです。細かな数字は人や状況で違うので、ここでは「少ないほど守りやすい」とだけ受け取ってください。
もう一つの理由は、確かめやすさです。約束が一つなら、対局後に「守れたか」を思い返すのが簡単です。三つあれば、どれが効いたのか、どれが邪魔だったのかが混ざってしまいます。
一つに絞ることは、残りの反省点を捨てることではありません。メモの端に「保留」として書いておき、今の約束が自然にできるようになってから取り出せば足ります。
約束の条件:三つのテスト
「次はもっと慎重に打つ」は、気持ちとしては正しくても、約束としては使えません。対局中に守れたかどうかを判定できないからです。約束には次の三つの条件を求めてみます。
- 判定できること:対局が終わったあと、「やった」か「やっていない」かで答えられます。
- 始める場面が決まっていること:「どの瞬間に」やるのかが書かれています。
- 小さいこと:一手ごとに数秒で済む行動です。
言い換えの例を表にします。
- 焦って打った、使いにくい約束:もっと落ち着いて打つ、使える約束:石を置く前に、一度だけ相手の返事を考える
- 駒を取られた、使いにくい約束:駒の安全に気をつける、使える約束:駒を動かす前に、動かした先が取られないかを確かめる
- 終盤で崩れた、使いにくい約束:終盤を丁寧にやる、使える約束:残りが少なくなったら、置ける場所を全部数える
右の列はどれも、動詞で終わっていて、タイミングがあり、数秒で済みます。「落ち着く」「気をつける」「丁寧にやる」のような状態を求める言い方は、守れたかどうかを自分で判断できないので、行動に置き換えてください。
反省点から一つを選ぶ手順
反省点が複数あるときに、どれを残すかを決める手順を示します。対局が終わった直後に、紙かメモアプリで進めてください。
- 浮かんだ反省点を、思いつく順にすべて書き出します。数は気にしません。
- それぞれに「対局中にそれが起きた瞬間は、手番のどのあたりか」を添えます。序盤、中盤、終盤など、大まかな区切りで十分です。
- 「一度の対局で何回起こりそうか」を見ます。毎手のように起こるものは、約束にしたときに練習の回数が稼げます。一度きりの大きな失敗は、あとで保留にします。
- その中から、「次の手を選ぶ前の数秒でできること」に言い換えられるものを選びます。
- 三つのテストを通して、「判定できる・場面がある・小さい」を満たす文に書き直します。
棋譜が見られる作品では、手順1の前に振り返りの材料を増やせます。「灯りのチェス」には、取った駒と全棋譜の表示があります。対局後に棋譜をたどり、最初に駒を失った手や、形勢が崩れたと感じる手を探すと、反省点が「なんとなく」から「この場面」に変わります。「潮目のオセロ」のひとり対局には理由付きヒントがあります。ヒントが挙げる理由と自分の手が違った場面は、約束の種として使えます。ただしヒントはひとり対局のみの機能で、友達とのオンライン対局では使えません。
作品別の約束の例
ここからは、各作品の機能に沿って約束を書いてみます。例は一つの案です。自分の反省点に合わせて書き換えてください。
潮目のオセロ
返る石のプレビューがあります。たとえば「石を置く前に、プレビューで返る石を見て、角のすぐ隣のマスに置くときだけ、相手が次に角を取れるかを確認する」という約束が考えられます。角の周辺が危ないという考え方は、オセロで広く知られた定石に基づきます。ただし、状況によっては角の隣に置くほうがよい場面もあるので、約束は「禁止」ではなく「確認」の形にします。確認すれば守ったことになります。
灯りのチェス
駒の動き方ガイドと、取った駒の表示があります。約束の例は「駒を動かす前に、動かした先のマスを相手の駒が取れないかを確かめる」です。短い一文で、毎手の数秒でできます。対局後は全棋譜を見て、約束を忘れた手がどこにあったかを探せます。CPUの思考時間は約450msに制限されているので、相手の反応が速く、こちらが急かされる感じがするかもしれません。約束の置き場所は「相手が指したあと、自分が動かす前」と決めておくと、リズムに流されにくくなります。
かたちのあいだ
「同じ配置の再挑戦」があるので、約束を同じ条件で試すのに向いています。例は「動かす前に、次に置きたい数字がどこにあるかを指で追う」といった、一手前の確認です。ヒントは次の一手を示しますが最短とは限りません。「一手戻す」も手数は減らないので、手数を減らしたい場合は戻した分もかかったものとして数えてください。この作品は保存があるため、約束を書いたメモと作品の進行を並べて見返しやすいのも利点です。
小さな軌道
全軌道予測の点線と、前回の軌道を示す細い実線があります。約束の例は「発射のたびに、前回の細い実線と見比べて、角度と初速のうち一方だけを変える」です。両方を同時に変えると、何が効いたのかが分からなくなります。これは、条件を一つずつ変える実験の基本の考え方と同じです。慣れてきたら、予測を消して挑む設定で、約束が守れるかを確かめる手もあります。
時計じかけの台所
時間制限のない見習いと、1皿28秒でミス3回までの本番があります。約束の例は「火にかける前に、材料を入れた順がレシピ順かを一度見る」です。見習いで約束を練習し、本番に持ち込むという段階の踏み方ができます。本番は時間が限られるので、約束は小さいほど有利です。
守れたかをどう確かめるか
次の対局が終わったら、約束について「はい」か「いいえ」だけで答えます。何手守れたかを数える必要はなく、「忘れた手があったか」を思い返す程度で足ります。
大事なのは、勝敗と切り離して見ることです。約束を守って負けることも、忘れて勝つこともあります。一局の勝ち負けは、相手の強さや運の影響が大きく、一つの約束の良し悪しを測るものではありません。見るのは「守れたか」だけにします。
守れなかったときは、責めるより原因を探します。次の三つのどれかであることが多いはずです。
- 約束を始める場面が曖昧だった。
- 約束が大きすぎて、毎手には重かった。
- 約束そのものを対局が始まる前に思い出せなかった。
一つ目と二つ目は書き直し、三つ目は対局前の合図の問題です。たとえば、対局を始める前に約束を声に出して読む、画面の横に付箋を貼る、といった工夫が考えられます。
2〜3局続けて守れたら、その約束は取り換えどきです。保留の反省点から次の一つを選びます。守れたのに困りごとが残るなら、約束が目的に合っていなかったのかもしれません。その場合は約束を直します。なお、10作品では記録が画面を開いている間しか残らないため、約束の記録は作品の外のメモに書いておくと続けられます。
次の行動
次に対局を終えたら、反省点を思いつくだけ書き出し、そこから「次の手の前の数秒でできること」を一つだけ選んで、一文にしてください。その一文を三つのテストで確かめてから、メモに残して次の対局を始めます。



