親子で対局したあとの会話:勝ち負け以外の話題
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最後の石が置かれ、盤面が静かになる場面を考えてみます。勝ったのは親で、子どもは唇を結んで画面を見ています。親が「いい勝負だったね」と言っても、子どもの返事は「もう一回」か、沈黙のどちらかです。勝ったほうは何を話せばよいか分からず、負けたほうは話したくない。年齢差のある対局のあとは、こうして会話が止まりがちです。 この記事が確かめるのは、勝ち負けの代わりに何を話せば対局後の時間が楽しくなるか、という点です。手がかりになるのは「感想戦」の考え方です。感想戦とは、対局が終わったあとに最初から振り返り、あの場面で何を考えていたかを語り合うことです。将棋や囲碁、チェスでは、勝敗が決まったあとの大切な時間として親しまれています。年齢差がある親子の場合、この時間が強さを競う場から、お互いの考え方を知る場へ変わります。
勝ち負けが会話を終わらせてしまう理由
対局の直後は、勝敗の印象がいちばん強く残っています。勝った側は満足し、負けた側は悔しさを抱えているので、同じ盤面を見ていても気持ちは別の場所にあります。
年齢差があると、これがさらに偏ります。大人が勝ち続ければ、子どもは「どうせ勝てない」と感じ、わざと負けて接待すれば、子どもは手加減に気づいて白けます。どちらの場合も、会話の入口が「勝ったか負けたか」だけになっています。
入口を変える方法は単純で、「結果」ではなく「考えたこと」を聞くことです。勝敗は一つしかありませんが、考えたことは一手ごとにあります。「どうして勝ったの」と聞くと答えは一言で終わりますが、「ここで何を考えていたの」と聞けば、話は広がります。
感想戦の材料を、ゲームの機能から拾う
何も材料がないまま「振り返ろう」と言っても、盤面は思い出せません。アソバースの二つの対戦作品には、材料になる機能がそれぞれあります。
灯りのチェスは、同じ画面でのふたり対局に対応しています。一台の端末に並んで座れば、そのまま感想戦に入れます。取った駒と全棋譜(それまでの手の記録)が表示されるので、振り返りの地図として使えます。駒の動き方ガイドもあるため、チェスを覚えたての子どもでも「この駒はどう動くんだっけ」を一緒に確かめられます。キャスリング、アンパッサン、選択式の昇格にも対応しており、珍しい動きが出たときは、そのまま話題になります。
潮目のオセロは、ひとり対局に、返る石のプレビュー、理由付きヒント、一手戻すがあります。友達との対局は招待リンクでのオンライン対局です。黒が先手で、置けない手番は自動でパスになります。ヒントと一手戻すはひとり対局のみなので、親子のオンライン対局では使えません。オセロ側の棋譜表示の有無は、作品を開いて確かめてください。
オンライン対局は、確認済みアカウントで部屋を作り、リンクを渡して友達を1人招待する仕組みです。親子で別の場所にいても遊べます。ただし、チャットとフレンドの機能は提供されていません。離れて遊ぶ場合、感想戦は通話や声で行うことになります。アカウントの条件は現在の案内で確認してください。
もう一つ、ひとり対局を使う手があります。対局後に、それぞれがCPUと一人で遊び直し、「さっきの場面で自分ならこうする」を試すのです。ヒントの「理由」を読んで、「これは自分の考えと同じか違うか」を話題にすることもできます。
勝ち負け以外の話題の型:5つの問い
話題は、問いの形にしておくと切り出しやすくなります。次の表は、大人向けの言い方と、小さな子ども向けの言い換えを並べたものです。
- どこで迷ったか、狙い:考えの途中を知る、子ども向けの言い換え:「どの手でうーんってなった?」
- いちばん驚いた手、狙い:相手の発想に気づく、子ども向けの言い換え:「えっ、と思った手はどれ?」
- 選ばなかった手、狙い:頭の中の候補を共有する、子ども向けの言い換え:「ほかにやりたかった手はある?」
- 相手の立場なら、狙い:視点を入れ替える、子ども向けの言い換え:「ぼく(私)が相手なら、次はどうする?」
- 次に試したいこと、狙い:次の対局へつなぐ、子ども向けの言い換え:「今度はどんな作戦でいく?」
特に効くのは「どこで迷ったか」と「選ばなかった手」です。この二つは、強さに関係なく誰にでも答えがあります。勝った親にも迷いはありましたし、負けた子どもにも、実行しなかった良い案があるかもしれません。
「いちばん驚いた手」は、大人が子どもの手に驚いたときに威力を発揮します。「そんな手があるとは思わなかった」と本心から言えるなら、それは勝敗よりも子どもに響く言葉になります。本心でなければ言わないほうがよいでしょう。作り物の褒め言葉は見抜かれます。
年齢差があるときに気をつけたいこと
手加減と教えすぎ
手加減には二種類あります。わざと弱い手を指す方法と、ゲームの機能で差を縮める方法です。前者は気づかれやすく、後者は理由を説明しやすいという違いがあります。
潮目のオセロや灯りのチェスには、3段階の相手が用意されています。親子の対局では差が出やすいので、まず子どもが段階の違うCPUと遊び、慣れてから親と対局する流れも考えられます。
感想戦で「教えすぎ」も起こりやすい点です。大人は、見えている改善点をつい全部伝えたくなります。そこで、アドバイスは一つだけ、しかも子どもが「聞きたい」と言ったときだけ、と決めておきます。子どもが先に言いたいことを聞くのが先です。
親が負けたとき
親が負けた場合の悔しさの出し方も、会話に影響します。大人が本気で悔しがる姿は、子どもにとって「勝負に本気で向き合っていい」という合図になります。ただし、不機嫌を表に出すのとは違います。「ここで間違えた、次はこうする」と言葉にして悔しがれば、感想戦のお手本にもなります。
石の数や駒の数だけを見ない
オセロでは、最後の石の数が多い側が勝ちですが、途中で石が多いことが有利とは限らないのは、よく知られた考え方です。チェスでも、取った駒の数だけが勝敗を決めるわけではありません。「何個取ったか」の話に偏りそうになったら、「その石(駒)を取ったとき、次に何が起きた?」と一歩先を聞いてみてください。数の話から、流れの話に変わります。
5分で終える感想戦の進め方
長く続ける必要はありません。年齢が低いほど、短く切り上げるのが続けるコツです。次の手順を目安にしてみてください。
- 終局直後に、勝敗の話をせず、盤面だけを眺める時間を10秒ほど取ります。
- 先に子どもから「迷った場面」を一つ選んでもらいます。灯りのチェスなら、棋譜の一覧から指でさしてもらう方法があります。
- 大人は自分の迷った場面を一つだけ話します。強い側が先に弱みを出すと、話しやすい空気になります。
- 表の「選ばなかった手」を一問だけ聞きます。
- 最後に「次に試したいこと」を一人一つ言い、そこで終わります。
時間を計るのは、長く続けすぎて子どもが疲れるのを防ぐためです。タイマーを使うか、「この質問で最後」と宣言するかは、家庭で決めてください。
記録を残したい場合
感想戦の内容を残したくなるかもしれません。ただし、アソバースの記録の多くは、画面を開いている間だけ残るものです。オンライン対戦の部屋は24時間、部屋と対戦履歴は作成から7日後に削除対象となります。残したい話題は、紙やメモに書いておくのが確実です。
迷った場面を書くときは、「何手目」と「そのとき考えたこと」を一行ずつで十分です。チェスの棋譜に載る手は、標準の代数記法(たとえば e4 のような書き方)で書き留められます。長い手順を書き写す必要はありません。
次の行動
次の対局では、終わったあとに最初の一言を決めておいてください。おすすめは「どこで迷った?」です。まずはこの一問だけを、灯りのチェスか潮目のオセロの対局後に試してみます。うまくいけば、次回は「選ばなかった手」を足してみてください。



