マガジン

すごろくはプレイヤーに何を選ばせているか

遊びを見つける

執筆にClaudeを使用しています。

分かれ道の前後に駒と橋を置き、サイコロの運とプレイヤーの選択を表したイラスト。
記事のテーマをもとに制作したAI生成イラスト。

ふりだしから上がりまで、サイコロを振って出た目の数だけ駒を進める。そんな一番素朴なすごろくを、家族で遊ぶ場面を考えてみます。最初から最後まで、プレイヤーが手を使うのはサイコロを振るときだけです。それでも遊んだ人は「勝った」「負けた」「あと少しだった」と語ります。では、その遊びの中でプレイヤーは何かを「選んで」いたのでしょうか。 この記事が確かめるのは、すごろくのどこに、どれだけ選択が入っているかです。印象で「運ゲーだ」と片づけず、1手番ごとに「選べる行動はいくつあったか」を数える方法を示します。数える対象は、手元の市販のすごろくでも、家族で作った手書きの盤でも構いません。 数値の結果は、この記事には載せません。載せられるのは、数え方と読み方です。数えた結果を持つのは、読者のみなさんの盤だけです。

この記事の目次
  1. 「選ぶ」とは何を指すのか
  2. サイコロだけの盤を分解する
  3. 記録表の作り方(1手番1行)
  4. 選択が入り込む7つの場所
  5. 結果の読み方と起こりやすい誤り
  6. 次の行動

「選ぶ」とは何を指すのか

分析を始める前に、数える対象である「選択」を決めておきます。次の3つがそろった手番だけを、選択のある手番と呼ぶことにします。

  1. ルールの上で許されている行動が、2つ以上あります。
  2. どれを選ぶかで、その後の状況が変わります。
  3. プレイヤーが、選ぶ前に違いをある程度予測できます。

この定義では、サイコロの目は選択ではありません。目はプレイヤーが決めるものではなく、状況に降ってくる条件だからです。また、ルールで「必ず振る」「必ず目の数だけ進む」と決まっている動作も、行動が1つしかないので選択に数えません。

2番目の条件は、見落としやすい点です。見た目は2つの道があっても、どちらを選んでも結果が変わらないなら、それは飾りの選択です。3番目の条件も同じです。何が起こるかまったく見えない状態で選ぶのは、選択というより賭けに近くなります。

サイコロだけの盤を分解する

分解の練習として、次の盤を言葉で定義します。

  • マスはふりだしを0とし、上がりを20とする一本道です。
  • サイコロは1個、駒は1人1つです。
  • 上がりを超える目が出たときは、そのまま上がりとします。
  • 止まったマスに特別な効果はありません。

この盤で、1手番を分解してみます。手番が来たら、必ずサイコロを振ります。出た目の数だけ、必ず駒を進めます。進む方向も駒も1つしかありません。この盤の合法な行動の数は、毎手番ちょうど1です。選択のある手番の割合は、理屈の上ではゼロになります。

つまりこの盤の勝敗は、サイコロの目の並びだけで決まります。プレイヤーは「進行役」を務めているだけで、意思決定者ではありません。それでも遊びとして成り立つのは、結果が最後までわからない緊張と、追い抜き追い越される展開があるからです。小さな子どもと遊ぶとき、この性質は長所にもなります。負けても自分の判断のせいにならないからです。

ただし、この説明は「自分の盤は一本道で効果なしだ」と確かめられて初めて成り立ちます。市販のすごろくには、止まったマスの指示や、分かれ道が仕込まれていることが多いからです。次の節で、実際の盤を数える手順に移ります。

記録表の作り方(1手番1行)

数える単位は「1手番」です。1回のゲームを1枚のシートにして、1手番につき1行を記入します。

  • 1、手番のプレイヤー:A、サイコロの目:(出た目)、選べた行動の数:(数)、実際に選んだ行動:(内容)、選ぶ前に結果の違いが予測できたか:はい/いいえ/わからない

記入のコツを、手順にします。

  1. 遊ぶ前に、ルールを文章にして固定します。「パスは許すか」「振り直しはあるか」「止まったマスの指示は選べるか」など、曖昧な部分を先に決めておきます。
  2. 記録係を1人決めます。遊んでいる本人が記録すると、結果を見てから「あれは選択だった」と後付けしてしまいがちです。
  3. 手番が始まる前に、記録係が「今できることは何と何ですか」と声に出して尋ね、答えの数を「選べた行動の数」に書きます。
  4. 手番が終わったら、実際に選んだ行動を書きます。選択のない手番は「なし」で構いません。
  5. 選択のあった手番だけ、最後の列を聞き取ります。「選ぶ前に、どちらがどうなりそうか見当はついていましたか」と尋ね、本人の答えをそのまま書きます。

「選べた行動の数」の数え方は、ここで迷いやすいところです。同じ結果にしかならない手を別々に数えないようにします。たとえば駒が1つしかないのに「右手で動かすか左手で動かすか」は選択ではありません。逆に「進まずにその場にとどまる」がルールで許されているなら、それは1つの行動として数えます。

ゲームが終わったら、次の3つを集計します。

  • 選択手番率:選べた行動の数が2以上の手番数 ÷ 全手番数です。
  • 見通しのある選択率:選択手番のうち、最後の列が「はい」だった手番数 ÷ 選択手番数です。
  • 選択の位置:選択手番が盤のどこ(序盤、中盤、終盤、特定のマス)に集まっているかを、行番号で見ます。

集計の単位にも注意が必要です。人数が変わった場合や盤が違う場合は、別のシートに分けます。同じ条件のゲームは、3回以上記録して並べてみてください。1回だけだと、運の偏りが読み取りの邪魔をするからです。

選択が入り込む7つの場所

記録を取る前に、選択が入り込みやすい場所の見当を知っておくと、行の読み方が早くなります。次の表は、すごろくに選択を加える代表的な仕掛けの整理です。

  • 分かれ道、何を選ぶか:どちらの道へ進むか、予測のしやすさ:道の先が見えていれば高い、起こりがちな問題:先が見えないと賭けになります
  • 複数の駒、何を選ぶか:どの駒を進めるか、予測のしやすさ:盤面から読みやすい、起こりがちな問題:駒の差が小さいと飾りになります
  • 目の使い道、何を選ぶか:2個の目をどう割り振るか、予測のしやすさ:計算で追える、起こりがちな問題:計算の得意な人が有利になります
  • 振る前の準備、何を選ぶか:振る個数や、振るか止まるか、予測のしやすさ:リスクとして見える、起こりがちな問題:危険を取る意味が薄いと誰も選びません
  • マスの効果、何を選ぶか:得た道具やカードをいつ使うか、予測のしやすさ:持ち物の内容による、起こりがちな問題:強い効果が偏ると一強になります
  • 相手への干渉、何を選ぶか:誰の邪魔をするか、予測のしやすさ:相手の位置から読める、起こりがちな問題:先頭ばかり狙われ、遊び手の気持ちが偏ります
  • 資源の管理、何を選ぶか:限られた枠や燃料の使い方、予測のしやすさ:数えれば予測できる、起こりがちな問題:数え方を知らない人が置いていかれます

最後の「資源の管理」の例として、アソバースの公式作品「月夜の配達」を挙げます。確認できる範囲では、この作品は小包が3つ、バッグが2枠、燃料は1区間で1消費される有限で、3つの夜の経路パズルとして遊びます。ここから読み取れるのは、「運ではなく、枠と燃料の制約から選択を生み出す設計」だということです。バッグが足りない場面で何を持つか、燃料が足りない場面でどの区間を通るかが、プレイヤーの判断になります。サイコロの有無やそれ以外の細かい仕様は、作品を開いて確かめてください。

この対比は、記録表の読み方にそのまま使えます。サイコロだけの盤は選択手番率がほぼゼロになり、制約から選択を作る設計は選択手番率が高くなる傾向がある、という仮説を、手元の盤で検証できます。

結果の読み方と起こりやすい誤り

集計ができたら、数字そのものに基準値を当てはめず、比べて読みます。「このくらいが良い」という絶対的な数字はありません。比べる相手は、次の3つです。

  • 別のゲームの記録:サイコロだけの盤と、分かれ道のある盤を並べます。
  • 改造前後の記録:自分の盤に仕掛けを1つ足して、前後を比べます。
  • 遊ぶ人による違い:年齢や経験の違う人が同じ盤を遊んだとき、記録がどう変わるかを見ます。

読み方の目安を、次の3パターンにまとめます。

  • 選択手番率がほぼ0:運だけで進む遊びです。小さな子どもや初めての人に向きます。大人だけで長く遊ぶと、手持ち無沙汰になるかもしれません。
  • 選択手番率は高いが、見通しのある選択率が低い:選んでいるように見えて、結果は当てずっぽうに近い状態です。道の先を見せる、効果を事前に表示するなどの工夫が考えられます。
  • 両方に値がある:選択が機能しています。選択手番が特定の場所に集まっているなら、そこがその盤の見せ場です。

読み取りの誤りも、事前に挙げておきます。

  1. 運の結果を選択と混ぜる:「いい目が出たから勝てた」を、「いい選択をした」と書かないようにします。
  2. 1ゲームで結論を出す:選択の良し悪しは、同じ条件を複数回遊んで初めて見えてきます。
  3. 後付けの記録:結果を知ってから埋めた記録は、選択手番を実際より多く見せます。
  4. 選択肢が見えていない参加者:ルールを知らない子どもには、実質的に選択肢がありません。この場合は、その人の記録は参考にとどめます。
  5. 同じ結果の手を別々に数える:実質同じ手を二重に数えると、選択手番率が高く出すぎます。

選択の「重さ」も確かめたくなったら、選択手番を1つ選んで、別の行動を取っていたら1手先でどう違ったかを書き出します。進む距離、止まるマス、得点などが同じなら、その選択は飾りだと判断できます。ただし、1手先の差が大きくても、長い目で見た勝敗への影響は別の話です。勝敗への影響まで調べるなら、同じ選択を意図的に偏らせたゲームを何度も遊び比べる必要があります。そのとき、数回の勝敗だけで結論を出さないことが大切です。

次の行動

まず手元のすごろくを1つ選び、ルールを文章に書き出してから、3ゲーム分の記録表を作ってみてください。数え終わったら、選択手番が全体のどこに集まっているかを見て、「ここを見せ場にしたい」という場所に仕掛けを1つだけ足し、もう一度同じ手順で数え直します。作った盤をブラウザゲームにしたくなったら、アソバースには「入力→表示の確認→公開」という3段階の投稿の流れがあります。