パックマンの敵AIはどう動いている?
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パックマンに登場する4体のゴーストは、それぞれ異なる動き方をしています。「なんとなく追いかけてくる」と感じている人も多いと思いますが、実は各ゴーストには固有の目標地点の計算ルールがあり、それらが組み合わさることでゲーム全体のリズムが生まれています。 1980年にナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)がアーケードゲームとして発表したパックマンは、プログラムサイズが極めて限られた環境で作られました。それでも4体のゴーストが「それぞれ個性を持つ」ように見えるのは、目標座標の決め方を一体ずつ変えるというシンプルな工夫によるものです。この記事では、各ゴーストの動作原理を具体的に解説し、なぜそれが「難しいけれど理不尽ではない」難易度を生むのかを整理します。
ゴーストはグリッド上で「目標マス」を追いかける
パックマンの迷路は正方形のマス目(グリッド)で構成されており、ゴーストは各交差点で次に進む方向を決めます。このとき使われるのが「目標マス(ターゲットタイル)」という概念です。各ゴーストはフレームごとに自分の目標マスを計算し、その目標マスに最も近づく方向を交差点で選びます。
進行方向の決め方には一つ重要なルールがあります。ゴーストは来た方向に戻ることができません(Uターン禁止)。このルールがあるため、交差点での選択肢は最大3方向に絞られます。選択肢の中から目標マスへのユークリッド距離(直線距離)が最小になる方向を選ぶ、というのが基本アルゴリズムです。
つまり迷路の壁を考慮した経路探索ではなく、「直線距離が一番短くなる方向を選ぶ」という単純な計算です。この単純さが、ゴーストが壁に沿って遠回りすることを許し、プレイヤーが抜け道を使って逃げられる余地を生んでいます。
4体それぞれの目標マスの計算ルール
赤(ブリンキー):パックマンの現在位置を直接狙う
最もわかりやすい追跡者です。目標マスはパックマンが今いるマスそのものです。パックマンが止まらない限り、常に最短方向へ向かいます。残りドット数が少なくなると移動速度が上がる「クルーズ・エルロイ」モードに切り替わる仕様もあり、後半ステージで特に圧迫感が増します。
ピンク(ピンキー):パックマンの4マス先を狙う
目標マスはパックマンの進行方向の4マス先です。「回り込み」を意図した設計です。ただし、オリジナルのアーケード版にはバグがあり、パックマンが上を向いているときは「4マス上かつ4マス左」というずれた座標が目標になります。このバグはシリーズを通じてそのまま引き継がれ、いまでは仕様の一部として知られています。
青(インキー):ブリンキーとパックマンの位置から計算する
最も複雑な計算をします。まずパックマンの2マス先の座標を求め、そこからブリンキーの現在位置へのベクトルを2倍に伸ばした先が目標マスになります。ブリンキーがパックマンの近くにいるときはインキーも近づき、ブリンキーが離れているときはインキーが意外な場所を目標にするため、挙動が読みにくいゴーストです。
オレンジ(クライド):距離によって目標を切り替える
パックマンとの距離が8マス超のときはブリンキーと同じくパックマンを直接狙います。しかし8マス以内に近づくと、目標マスを迷路の左下隅(ホームコーナー)に切り替えます。「近づいたら逃げる」という一見おとなしい動作ですが、これによって画面左下エリアに滞留しやすくなり、そこを通りたいプレイヤーの脅威になります。
「散開モード」と「追跡モード」の切り替え
ゴーストは常にパックマンを追っているわけではありません。ゲーム開始直後やステージ進行中に「散開(スキャッター)モード」に定期的に切り替わり、各ゴーストは迷路の四隅に設定された固定の「ホームコーナー」へ向かいます。
- 赤→右上、ピンク→左上、青→右下、オレンジ→左下
この散開時間は数秒で終わり、再び追跡モードに戻ります。序盤ステージでは追跡・散開の切り替えが頻繁で、後半になるほど追跡時間が長くなります。プレイヤーが「ゴーストが急にバラけた」と感じる瞬間はこのモード切替です。切替タイミングを把握していれば、ゴーストが散開中に一気にドットを回収するルートを組み立てられます。
パワーエサを食べたときの「弱体化(フライトモード)」は散開・追跡とは別のモードです。このとき各ゴーストはランダムな方向転換を繰り返し、パックマンから遠ざかろうとします。厳密には完全ランダムではなくUターン禁止ルールが残りますが、目標マスの概念は使われません。
この設計が「理不尽でない難しさ」を生む理由
4体の役割をまとめると次のように整理できます。
- 赤(ブリンキー)、役割:直接追跡、特徴:速度が変化する
- ピンク(ピンキー)、役割:先回り、特徴:上方向バグあり
- 青(インキー)、役割:連携攻撃、特徴:赤の位置に依存
- オレンジ(クライド)、役割:近距離回避、特徴:左下に溜まる
この4体が同時に異なるロジックで動くことで、全員が同じ方向から来るケースは稀になります。プレイヤーは「なんとなく囲まれた」と感じますが、実際には計算可能な状況です。各ゴーストの目標マスを理解すると、どのルートを選べば複数ゴーストの経路を同時に外せるかが見えてきます。
またすべてのゴーストが完璧な経路探索をしないことも重要です。壁を無視した直線距離で方向を決めるため、迷路の構造次第でゴーストが遠回りしたり、特定のコーナーに引っかかったりします。プレイヤーが迷路の「抜け道」を覚えるほど有利になるのはこのためです。
次の行動
パックマンのゴーストAIを参考にして、「目標座標を持つ敵キャラ」を自分で作ってみることは、ゲーム設計の入門として非常に適しています。目標マスの計算式を変えるだけで敵の個性が変わるため、少ないコードで多様な挙動を試せます。作ったゲームはアソバースにHTMLファイルやZIPファイルで投稿・公開できますので、自分のAI設計を他のプレイヤーに試してもらう場として活用してみてください。
参考資料
- The Pac-Man Dossier(Gamasutraに掲載されたDon Hodgesによる技術解説)
- バンダイナムコエンターテインメント 公式サイト・パックマン紹介ページ


