LLMのモデル廃止・更新に追いつく:モデル名の固定と移行スケジュールの作り方
AIを使いこなすClaudeで執筆し、GPTで自動校閲・修正しています。

LLM APIのモデルは、公開から1〜2年で廃止通知が出る前提で扱うのが安全です。対策は三つに絞れます。本番では固定されたモデルIDを使うこと。使っているモデルと廃止日を一枚の台帳に集約すること。廃止日から逆算した期限で移行し、月に一度は告知を確認すること。 エイリアス(日付なしの名前)を使うか、日付固定のIDを使うかは、「名前が何を指すか」を提供元ごとに確認して決めます。日付が付いていなくても固定の場合があり、逆に「latest」のように中身が入れ替わる名前もあります。この記事では、その見分け方、台帳の作り方、逆算スケジュール、移行手順、点検チェックリストを順に示します。 確認した資料は2026年10月28日時点の各社公式ページです。モデル名や日付は頻繁に変わるため、実作業では必ず最新のページを開いてください。
1. エイリアスと固定IDは「提供元の定義」で判断する
同じ「日付なしの名前」でも、提供元によって意味が違います。公式ページで確認できた範囲は次のとおりです。
- Anthropic、名前の扱い(確認した記述):モデルIDとバージョニングによると、ClaudeのモデルIDは固定されたスナップショットです(旧世代の便宜上のエイリアスは除きます)。4.6世代以降の日付なしIDもそれ自体が固定です。それ以前の世代では、日付なしの名前は日付付きIDを指す便宜上のポインタです、本番での使い方の目安:日付なしでも固定のものが多いが、世代ごとに表で確認する
- OpenAI、名前の扱い(確認した記述):廃止ページ末尾の「Plain-text aliases」に、gpt-5がgpt-5-2025-08-07を指すといった対応が載っています、本番での使い方の目安:対応表を見て、日付付きIDを設定に書く
- Google (Gemini API)、名前の扱い(確認した記述):モデルのバージョン名の説明では、stableは特定のモデルを指し、多くの本番アプリにはstableの利用が勧められています。-latestは新リリースごとに差し替わり、差し替えの2週間前にメール通知があるとされています。previewは最短2週間前の通知で廃止され得ます、本番での使い方の目安:本番はstable、latestは検証用に限る
ここから、使い分けの方針が決まります(編集部の提案です)。
- 本番:固定されたIDだけを使います。参照先モデルの差し替えによる出力変化を避けられます。ただしAnthropicは、固定IDでも提供基盤の更新によって挙動に小さな差が生じる場合があると説明しています。
- 検証・カナリア枠:latest系や新しい世代を少量のトラフィックまたは夜間の評価で動かし、次の移行候補を先に試します。
- preview・experimental:本番の重要経路には使いません。OpenAIの廃止ページも、previewは2週間程度の短い通知で廃止され得るため、すぐ移行できる場合を除き重要な用途を避けるよう案内しています。
固定しても廃止そのものは避けられません。固定の効果は、参照先モデルの差し替えを避け、廃止に伴う移行を計画しやすくすることです。
2. 使っているモデルの台帳を作る
移行が遅れる典型的な原因は、どこで何のモデルを使っているか把握していないことです。モデルIDをコードに散らばせず、設定ファイル一つにまとめ、用途ごとに台帳の1行を持たせます。以下は説明用の例で、実行して確認したものではありません。
# llm-registry.yaml(説明用の例)
- purpose: support-summary # 用途
provider: anthropic
platform: claude-api # Bedrock等は別行にする
model_id: claude-sonnet-4-5-20250929
pin: snapshot # snapshot / alias / latest
status: deprecated # 公式表の状態をそのまま写す
retirement_date: 2026-11-30 # 公式表の日付
replacement_candidate: claude-sonnet-5-5
eval_set: evals/support-summary-v3
fixed_params: {max_tokens: 1024}
owner: team-support
last_checked: 2026-10-28台帳に入れる項目の意図は次のとおりです。
- platform:直接APIとクラウド経由で日程が違う場合があります。Anthropicの廃止ページによると、同ページの日付はAnthropicが運用する基盤向けです。Amazon BedrockやGoogle ManagedのClaude提供は、独自に廃止日程を決めます。
- fixed_params:モデルを替えるとパラメータが通らなくなることがあります。同ページには、temperature・top_p・top_kがAPIバージョン2026-10-21で削除され、400エラーになるという記載があります。モデルIDだけ書き換える移行は避け、送っているパラメータも台帳に残します。
- ファインチューニング済みモデルは、OpenAIの廃止ページによると基盤モデルと同じ日程で終了します。ベースモデルを別行で管理します。
台帳の初期化に使うもの
台帳の元データは、各社の管理画面やAPIから集めます。
- Anthropic:Claude Consoleの「Usage」ページで「Export」を押すと、APIキー別・モデル別の使用状況がCSVで得られます。
- OpenAI:List models(GET /v1/models)を呼び、各モデルの任意項目shutdown_dateを確認します。
- Google:廃止ページの表と、リリースノートでの告知を確認します。
3. 廃止日から逆算してスケジュールを組む
廃止告知が出たら、まず「最終期限」と「各社の通知期間」を押さえます。公式ページで確認できた最短の通知期間は次のとおりです。
- OpenAI、記載された通知の目安:一般提供モデルは6か月以上、チャット・Codex・ディープリサーチなどの派生は3か月以上、previewは2週間程度。安全性やコンプライアンス上の理由で早まる場合あり
- Anthropic、記載された通知の目安:公開済みモデルは廃止の60日以上前に、利用中の顧客へ通知
- Google、記載された通知の目安:廃止ページの日付は「最も早い廃止日」。告知はリリースノートで行われます。latestの差し替えとpreviewの廃止は2週間前の通知
通知が短いほど、台帳が整っていないと間に合いません。
逆算の例(説明用)
2026年10月28日に、Anthropicの廃止ページでclaude-sonnet-4-5-20250929が非推奨(2026年9月30日付)、廃止日が2026年11月30日、推奨代替がclaude-sonnet-5-5と記載されているのを確認しました。これを使った逆算例です。日程は編集部の提案で、残りは33日です。
- 10/28〜10/30、作業:台帳で該当用途を洗い出す。評価データと担当者を決める
- 10/31〜11/6、作業:代替モデルで評価セットを実行し、差分を確認。プロンプトとパラメータを修正
- 11/7〜11/15、作業:一部のトラフィックまたは社内利用で試験運用
- 11/16、作業:全面切り替え
- 11/17〜11/29、作業:予備期間。障害時の切り戻し先は旧モデルだが、廃止後は使えないため、不具合は新モデル側で直す
- 11/30、作業:廃止日
切り替えは廃止日の2週間前を目標にします。直前に不具合が見つかったとき、旧モデルへ戻せる猶予がなくなるからです。
廃止日が6か月先のモデルでも、台帳に日付だけは入れ、期限の2か月前に評価を始める運用が現実的です。
4. 移行作業の手順
- 告知の原文を確認する:廃止日、推奨代替、対象プラットフォーム(直接API、クラウド経由)を、提供元の廃止ページで確認します。メールや他者のまとめは補助にとどめます。
- 台帳で影響範囲を出す:該当IDを使う用途、環境、ファインチューニング、バッチ処理、社内ツールを列挙します。
- 評価セットを用意する:実際の入力に近い代表例を数十件選びます。個人情報や社外秘は、架空の値に置き換えます。
- 旧モデルと新モデルで同じ入力を実行する:出力形式、長さ、拒否の仕方、ツール呼び出し、遅延、トークン使用量を比較します。
- プロンプトとパラメータを直す:新モデルが受け付けないパラメータがないか確認します。
- 段階的に切り替える:少量から始め、エラー率とユーザーからの問い合わせを見ます。
- 台帳を更新して旧IDを設定から消す:last_checkedを更新し、旧IDが残っていないかコードと環境変数を検索します。
AIに任せる部分と、人が確認する部分
手順2と4の整理には、生成AIが使えます。ただしAIに公式日付の判断を任せると誤りが混じるため、日付は人が公式ページと突き合わせます。
入力する依頼文の例です。
次の2つを渡します。
(A) 当社のLLM利用台帳(説明用に仮名化済み)
(B) 提供元の廃止ページから私が貼り付けた表
基準日は2026-10-28です。台帳の各行について、次を表にしてください。
- 廃止表に該当するか
- 廃止日までの日数
- 推奨代替
- 優先度(30日以内=高、90日以内=中、それ以外=低)
表にない情報は推測せず「要確認」と書いてください。渡すのは台帳と廃止表だけです。APIキー、顧客データ、社内の機密プロンプトは渡しません。人が確認するのは、AIが出した日数の計算、該当の判定、そして新旧の出力差分の良し悪しです。出力差分の評価は、業務上の許容基準を知る担当者が判断します。
5. 月次の点検チェックリスト
次の項目を月に一度(できればカレンダーに固定して)確認します。頻度は編集部の提案です。
- [ ] 各社の廃止ページを開き、台帳のIDが表に載っていないか確認した(Anthropic、OpenAI、Googleのそれぞれ)
- [ ] Googleのリリースノートで、新しい廃止告知がないか確認した
- [ ] 提供元からの通知メールの宛先が、個人ではなくチームの共有アドレスになっている
- [ ] 使用状況のエクスポート(Claude Console)やList models(OpenAI)の結果と、台帳に差がない
- [ ] 台帳にpin: latestやpreviewのものがあれば、本番経路に入っていないか確認した
- [ ] 廃止日まで90日以内の行に、担当者と評価セットが割り当てられている
- [ ] 「Not sooner than」(これより早くは廃止しない)の日付を過ぎたモデルがないか確認した。その日付を過ぎても、通知前は有効なままの場合があり、台帳に「予定なし」と記録する
- [ ] クラウド経由(Bedrock等)の利用分は、クラウド側の日程表で別に確認した
- [ ] APIバージョンの更新やパラメータの削除告知がないか確認した
- [ ] ファインチューニング済みモデルの基盤モデルの日程を確認した
- [ ] 旧モデルIDがコード、環境変数、ジョブ設定に残っていない
最後の2点目に補足します。Anthropicの廃止ページには、claude-haiku-4-5-20251001が「Not sooner than October 15, 2026」で有効と記載されていました。この日付は「最も早く廃止され得る日」であり、今日が過ぎていても、その時点で非推奨の告知がなければ有効です。ただし告知から廃止まで60日以上あるとされているので、告知が出たらすぐ逆算を始めます。

