LLM APIの月額コストを見積もる:リクエスト数×トークン×単価の計算シート
AIを使いこなすClaudeで執筆し、GPTで自動校閲・修正しています。

月額コストは、基本的には「月間リクエスト数 × 1回あたりの入力・出力トークン数 × 単価」で概算できます。ただし実際の請求は、再試行、キャッシュの書き込み、ツール呼び出し、長いプロンプト向けの別料金などで、この単純な式からずれます。この記事では、単価欄だけを差し替えれば使える見積表と、見落としやすい費用項目のリストを渡します。 先に、各社の公式料金表で確認できた範囲(2026年10月29日の自動校閲時点)をまとめます。 • 料金は100万トークン(MTok)あたりで、入力と出力が別単価です。Anthropicの料金ページには、基本入力、5分・1時間のキャッシュ書き込み、キャッシュ読み出し、出力の列があります。5分書き込みは基本入力の1.25倍、1時間書き込みは2倍の行がありましたが、読み出し単価の比率はモデルごとに違いました。倍率を決め打ちせず、行ごとに読み取ってください。 • OpenAIの料金ページには、入力・キャッシュ入力・キャッシュ書き込み・出力の単価に加え、Standard、Flex/Batch、Fast、Ultrafastの区分があります。モデル、処理速度、コンテキスト長に対応する料金を選んでください。 • GoogleのGemini API料金ページでは、思考(thinking)トークンが出力単価で課金される旨があります。コンテキストキャッシュには保存の時間課金があり、一部モデルは200kトークン前後で単価が変わります。 具体的な単価は頻繁に変わるため、この記事の計算例では架空の単価を使い、実際の数字は読者が公式ページから入力する形にします。
見積表:入力欄と計算式
表計算ソフトに、次の2つのブロックを作ります。
単価ブロック(公式料金表から転記。USD/100万トークン)
- E2、項目:入力単価、備考:通常の入力
- E3、項目:キャッシュ書き込み単価、備考:通常入力分を含む総単価。別料金がなければE2と同額
- E4、項目:キャッシュ読み出し単価、備考:キャッシュを使わない場合はE2と同額
- E5、項目:出力単価、備考:思考トークンを含む場合あり
- E6、項目:バッチ割引率、備考:公式の記載がある場合のみ(例:0.5)
- E7、項目:ツール1回あたりの単価(USD)、備考:「1,000回あたり$X」なら÷1,000
- E8、項目:月額追加費用(USD)、備考:保存料などを別計算して合算。なければ0
利用規模ブロック(自社の想定)
- B2、項目:月間APIリクエスト数(再試行を除く。ツール実行後の追加呼び出しも含む)
- B3、項目:固定部分の入力トークン(システムプロンプト、ツール定義など)
- B4、項目:可変部分の入力トークン(ユーザー入力、会話履歴、検索結果)
- B5、項目:出力トークン(思考分を含む)
- B6、項目:追加試行回数÷B2(0.05なら5%増)
- B7、項目:固定部分のキャッシュ命中率
- B8、項目:バッチで処理する割合
- B9、項目:キャッシュ未命中のAPI呼び出しのうち、固定部分全体を書き込む月間回数
- B10、項目:ツール呼び出し回数/リクエスト
- B11、項目:為替(円/USD)
計算セル
- B13、項目:実効リクエスト数、式:=B2*(1+B6)
- B14、項目:入力費、式:=(B13*(B3*(1-B7)+B4)-B9*B3)*E2/1000000
- B15、項目:キャッシュ読み出し費、式:=B13*B3*B7*E4/1000000
- B16、項目:キャッシュ書き込み費、式:=B9*B3*E3/1000000
- B17、項目:出力費、式:=B13*B5*E5/1000000
- B18、項目:トークン費の合計(割引後)、式:=(B14+B15+B16+B17)*(1-B8*E6)
- B19、項目:ツール費、式:=B13*B10*E7
- B20、項目:月額(円)、式:=(B18+B19+E8)*B11
未使用の回数・割合は0にします。再試行も通常時と同じ平均トークン数・ツール回数を使う近似です。B7は固定部分全体を読み出せる呼び出しの割合、B9は0〜B13*(1-B7)の範囲とし、書き込み分をB14から除いて二重計上を避けます。独立したキャッシュ作成APIの費用はE8に入れ、B9は0にします。
B18は、全トークン費に同じ割引率が適用され、バッチと通常処理で平均使用量・命中率が同じ場合の式です。Geminiの料金表には、Batchでもキャッシュ単価がStandardと同じモデルがあります。条件が異なる場合は通常用・バッチ用のシートを分け、各料金と使用量を入力し、両方のB8・E6を0にして月額を合算します。保存料・ツール費への割引は別に確認してください。
説明用の例:架空単価で3規模を概算する
次の数字はすべて説明用の例で、実在のモデルの単価でも実測値でもありません。
- 入力単価 $1、キャッシュ書き込み $1.25、キャッシュ読み出し $0.1、出力単価 $5(いずれも/MTok)
- 固定部分1,500トークン、可変部分800、出力400、再試行率5%、為替150円/USD、ツールなし
キャッシュなしの場合、1リクエストあたり入力2,300トークン×$1/100万=$0.0023、出力400×$5/100万=$0.002で、合計$0.0043です。再試行込みで約$0.0045になります。
- 1万、月額(USD):約45、月額(円):約6,800
- 10万、月額(USD):約452、月額(円):約67,700
- 100万、月額(USD):約4,515、月額(円):約677,000
API呼び出しの90%で固定部分全体をキャッシュから読み出し、未命中分のうち月3,000回で固定部分全体を書き込むとして10万件を計算すると、入力費$95.25、読み出し費$14.175、書き込み費$5.625、出力費$210で合計$325.05、円換算で約48,800円です(バッチ・追加費用なし)。この例ではキャッシュなしの$451.50から約28%減ります。固定部分が小さい、または命中率が低いと効果は薄れます。
入力値の決め方
単価より誤差が大きいのはトークン数です。次の順で置きます。
- 試作段階の実ログから、リクエストごとの入力・出力トークン数を集めます。使用量は各社のAPI応答に含まれるので、フィールド名は各社のドキュメントで確認してください。
- 平均だけでなく上位10%の値も見ます。長い入力が混ざるほど平均は上にずれます。
- 会話型は、毎ターン履歴を再送する前提で可変部分を置きます。10ターン続くと、後半ほど入力が膨らみます。
- ログがまだない場合は、想定する入力文と出力例を数件用意して実際に送り、使用量を記録してから置きます。
AIに集計を手伝わせるなら、次のように依頼します。個人情報や機密は含めず、トークン数と回数だけの表にしてください。
次はLLM API利用ログの集計表です(列:リクエストID、入力トークン、出力トークン、再試行の有無)。
平均、中央値、上位10%の値、再試行率を出してください。
推測で欠損値を埋めず、欠損は欠損として報告してください。AIの集計は、元の表と件数・合計が合うかを人が確かめてから見積表に入れます。
見落としやすい費用項目リスト
- 再試行・失敗分:タイムアウトやエラー後の再送。B6で追加試行を見込みます。失敗した元の試行の課金有無・使用量は実ログと請求で確かめます。
- 思考トークン:Geminiの料金ページでは出力単価で課金される記載があります。他社も、推論機能を使うなら出力欄に含めるか、各社の説明を確認してください。
- ツール課金:OpenAIの料金表では、通常のWeb検索は1,000回あたり$10に検索内容のトークン費が加わり、ファイル検索はストレージと呼び出しの別課金です。Geminiの料金表では、Google検索グラウンディングにGemini 3以降で共有する月5,000検索の無料枠があり、その後は1,000検索あたり$14です。1回のAPIリクエストで複数検索が発生し、検索ごとに課金されます(2026年10月29日の自動校閲時点)。無料枠・段階料金がある場合は月額を別計算してE8へ入れ、そのツールのB10は0にします。
- キャッシュの保存料:Geminiの明示的コンテキストキャッシュには保存の時間課金があります。保存トークン数÷100万×保存時間×100万トークン・時間あたりの単価で計算し、E8に加えます。
- 長文脈の別単価:モデルごとに確認します。例えばGemini 2.5 Proは入力が200kトークンを超えると入力・出力の単価が変わります。長い資料を丸ごと渡す設計では、別の行にします。
- リージョン指定:OpenAIの地域内処理用エンドポイントは、2026年3月5日以降に公開された対象モデルで10%上乗せです。利用条件を確認し、該当するトークン単価に反映します。
- 処理速度の区分:応答を急ぐ用途でFastなどを選ぶと、倍率が掛かります。
- 開発・評価の利用分:テスト、回帰評価、プロンプト調整の実行は、本番と別に月間枠を取ります。
- API外の費用:ベクトルDB、ログ保管、監視、為替手数料、税。LLM APIの単価表には出てきません。
規模別の判断表
- 月数千件の試作、先に確かめる項目:出力の長さ、再試行、見積もりの扱い:まず計算シートを一枚作り、実ログで誤差を確かめる
- 月数万〜十万件、先に確かめる項目:固定部分のキャッシュ、ツール回数、見積もりの扱い:キャッシュ命中率を保守的(低め)にして2パターン出す
- 月百万件〜、先に確かめる項目:長文脈、バッチへの移行、リージョン上乗せ、見積もりの扱い:単価差が総額に響くため、複数社で同じ入力を使い比較する
見積もりの上限には、算出額に余裕係数を掛けて予算を置きます。1.3倍など係数の決め方は編集上の目安にすぎないので、ログを見て調整してください。バッチは、即時応答が不要で、各社の処理期限まで待てる処理(夜間の要約や分類など)に使います。Anthropicのバッチ処理の説明では、多くのバッチが1時間未満で完了し、費用が50%減るとされています。
公式単価に差し替える手順
- 比較したいモデルを2〜3つ決め、各社の料金ページから入力・出力・キャッシュの単価を単価ブロックに転記します。処理速度・リージョン・長文脈の条件も合わせます。
- 転記した日付とURLをシートの余白に書きます。単価は改定されるため、月次で見直します。
- 利用規模ブロックを、自社のログの数字で埋めます。
- 同じ入力文・出力条件で単価を差し替え、月額の差を見ます。モデルごとにトークン数やキャッシュ条件が異なるため、B3〜B5・B7・B9も確認して補正します。差が余裕係数の範囲に収まるなら、品質や応答速度で選んで構いません。
この表はまだ実際のAPI請求と突き合わせていません。最初の1か月は、請求書の使用量と見積もりのトークン数を比べて、B3〜B5を直してください。

