レイテンシとpingの違い:対戦ゲームの遅延
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対戦ゲームで「pingが高くて負けた」「レイテンシが大きいと動きがズレる」という言葉を耳にしたことがある方は多いと思います。ところがこの二つの語は、場面によって同じ意味で使われたり、微妙に違う意味で使われたりするため、「結局どちらが何を指しているのか」が曖昧なままになりがちです。 この記事では、レイテンシとpingがそれぞれ何を測っているのかを整理し、対戦ゲームの遅延がなぜ起きるのか、どう判断すればよいのかを順を追って説明します。「遅延が気になるけれど何を見ればいいかわからない」という方が、読み終えた後に自分の環境を具体的に確認できることを目指します。
この記事の目次
pingとレイテンシ、それぞれが指すもの
pingはもともとコンピュータネットワークのコマンド名です。あるコンピュータから別のコンピュータへ小さな信号を送り、返信が戻ってくるまでの時間をミリ秒(ms)で測ります。「信号を打ってから跳ね返ってくるまでの往復時間」なので、正確にはRTT(Round-Trip Time)と呼ばれます。ゲームの対戦画面やロビーで「ping: 45ms」と表示されているとき、これは自分の端末とサーバーの往復時間がおよそ45ミリ秒であることを意味します。
レイテンシ(latency)はより広い概念です。「ある処理が始まってから完了するまでの遅れ時間」全般を指します。ネットワークの往復時間もレイテンシの一種ですが、それだけではありません。端末側の処理時間、サーバーがデータを処理する時間、映像をモニターに表示するまでの時間——これらすべてがレイテンシに含まれます。
つまり「ping値=ネットワーク往復のレイテンシ」であり、「レイテンシ=ping値+その他の遅れ」という関係になります。ゲームで感じる遅延は、ping値が低くても端末の処理が重ければ大きくなりますし、ping値が高ければネットワークだけで数十〜数百ミリ秒の遅延が乗ります。
対戦ゲームで遅延が起きる経路
実際に操作の遅れとして感じるまでには、いくつかの段階があります。順番に整理すると次のようになります。
- 入力の読み取り:コントローラーやキーボードの入力を端末が受け取ります。有線接続と無線接続では、ここでわずかな差が生まれることがあります。
- 端末側の処理:ゲームのプログラムが入力を受けて次の状態を計算します。端末の性能が低いほど、この処理に時間がかかります。
- サーバーへの送信と処理:入力データをゲームサーバーへ送り、サーバーが全プレイヤーの状態を照合して結果を返します。このときの往復時間がping値として表れます。
- 画面への描画:計算結果を映像としてモニターに出力します。モニターのリフレッシュレートや入力遅延も、ここで影響します。
ping値が「高い・低い」と言うとき、上の③だけを指しています。体感の遅延はすべての段階の合計なので、ping値が低くても端末や映像出力の遅れが大きければ操作のもたつきは残ります。逆に言えば、ping値を改善しても解決しない遅延があるときは、別の段階を疑う手がかりになります。
ping値の目安と、どこから気になり始めるか
ping値がどの程度であれば快適に遊べるかは、ゲームの種類によって大きく異なります。一般的に広く言われている目安を示します(個人差や通信環境によって変わります)。
- 〜30ms前後、ゲームへの影響の感じ方:ほぼ遅延を感じにくい
- 30〜80ms前後、ゲームへの影響の感じ方:多くのジャンルで実用範囲内
- 80〜150ms前後、ゲームへの影響の感じ方:格闘ゲーム・FPSでは差を感じやすくなる
- 150ms超、ゲームへの影響の感じ方:動きのズレが明確になり、不利になりやすい
特に反応速度が勝敗に直結する格闘ゲームやFPS(一人称視点のシューティング)では、100msを超えると「相手が動いてから自分の入力が届くまでの差」が体感できるレベルになります。一方、ターン制のカードゲームやパズルゲームでは150ms程度の遅延でもほとんど問題にならないことが多いです。
数値そのものより「対戦相手との差」が重要な場面もあります。同じサーバーに接続していても、自分のpingが20msで相手が80msであれば、60msの非対称な遅延が存在します。一部のゲームはこれを補正するしくみ(ロールバックネットコードなど)を持ちますが、すべてのゲームが対応しているわけではありません。
自分のping値を確認する方法
ping値の確認は、特別なソフトウェアなしでも行えます。
Windowsの場合:コマンドプロンプトを開き、ping サーバーのアドレスと入力して実行します。接続先のゲームサーバーのアドレスが公開されていれば、それを直接入力できます。アドレスが非公開の場合は、ゲーム内の表示(対戦ロビーやデバッグ表示)を参照するのが現実的です。
ゲーム内表示:多くのオンラインゲームは、設定やHUD(画面に重ねて表示される情報)でping値を確認できます。「ネットワーク統計を表示」「デバッグ情報を表示」などの設定項目を探してみてください。
ブラウザゲームの場合:ブラウザの開発者ツール(F12キーで開けることが多いです)の「ネットワーク」タブを使うと、サーバーとのやり取りにかかっている時間を確認できます。ただし見方に慣れが必要なため、まずはゲーム内の遅延表示を優先するほうが手軽です。
ping値が安定して高い場合、次の点を順番に確認するのが効率的です。
- 有線接続に切り替える:Wi-Fiは電波状況によって遅延が不安定になりやすいです。有線接続で試すと、ネットワーク遅延の「ばらつき」(ジッターと呼ばれます)が減ることが多いです。
- 他の通信を減らす:同じ回線で動画の大量ダウンロードや別の端末の更新が動いていると、帯域が圧迫されてping値が悪化します。
- サーバーの地域設定を確認する:ゲームによっては接続するサーバーの地域を選べます。物理的に近いサーバーを選ぶほど往復距離が短くなり、ping値は下がりやすいです。
- 端末の性能と描画設定を見直す:ネットワーク以外のレイテンシが気になる場合は、グラフィック設定を下げてフレームレートを上げると、端末側の処理時間を短縮できることがあります。
「遅延補正」のしくみとその限界
ゲーム側の遅延対策として知られているのが、ロールバックネットコードとディレイネットコードという二つの方式です。
ディレイネットコードは、すべてのプレイヤーの入力が揃ってから処理を進めます。遅延の大きいプレイヤーに合わせて全員の処理を遅らせるため、ping差が大きいとゲーム全体がスローに感じられることがあります。
ロールバックネットコードは、相手の入力が届く前に「おそらくこう動くだろう」と予測して処理を先に進め、実際の入力が届いたら差異をさかのぼって修正します。修正の際に映像が一瞬巻き戻ったように見えることがありますが、体感の遅延は小さく抑えられます。格闘ゲームのコミュニティでは特に支持されている方式です。
どちらの方式も、ping値がゼロになるわけではありません。遅延を「隠す・分散する」しくみなので、ping値が非常に高い状況では補正の限界を超えます。自分でできる対策(有線接続・サーバー選択など)とゲーム側のしくみの両方を理解しておくと、「なぜ今日はズレが大きいのか」を切り分けやすくなります。
次の行動
まずゲームの設定画面でping値の表示をオンにし、自分の普段の値がどの帯域にあるかを確認してみてください。Wi-Fi接続であれば有線に切り替えるだけで改善することも多いので、手軽な変化として試す価値があります。ブラウザゲームをアソバースで遊んでいる場合も同様で、接続環境を安定させることが快適なプレイの基本になります。
参考資料
- MDN Web Docs(ネットワーク・HTTP関連の解説)
- Internet Engineering Task Force(IETF)RFC文書(RTTの定義)
- 各ゲームエンジン・ミドルウェアの公式ネットワーク解説ドキュメント

