マガジン

「クリア」の文字が出ない終わり方:達成を静かに伝える

遊びを見つける

執筆にClaudeを使用しています。

石や花を自由に配置する小さな庭で、点数に頼らない遊びを表したイラスト。
記事のテーマをもとに制作したAI生成イラスト。

ゲームを最後まで遊んで画面が切り替わったとき、「終わった」と「うまくいった」のどちらも、文字で教えられたわけではないのに分かる場面があります。灯りがともる、音が止む、数字が一つ現れる。そうした静かな手がかりだけで、達成が伝わっているのです。 一方で、派手な表示をやめた結果、遊んだ人が「終わったのかどうか」さえ分からないこともあります。「クリア」の文字を外すことと、達成が伝わらなくなることは別の話です。この記事では、前者を保ったまま後者を避けるために、何を手がかりにしているのかを自分で数えて確かめる分析の手順を示します。結果は書きません。記録の取り方、集計の単位、読み方を順に説明します。

この記事の目次
  1. 二つの問いを分ける
  2. 記録の準備:終了画面を1行にする
  3. 手がかりを5種類に分ける
  4. 公式作品で当たりをつける
  5. 集計と読み方
  6. 次の行動

二つの問いを分ける

分析を始める前に、問いを二つに分けます。混ぜたまま記録すると、何を測っているのか分からなくなるからです。

  • 問い1:終了を知らせる手がかりは何か。 画面のどこに、どんな種類の情報があるかを数えます。
  • 問い2:その手がかりは、見た人に「終わった」と「うまくいった」の両方を伝えているか。 終了と成功は別の情報です。静かな終わり方では、終了だけが伝わり、成功の度合いが伝わらないことがあります。

問い1は自分一人で数えられます。問い2は、ゲームの内容を知っている自分では判定しにくい問いです。遊んだ経験があると、画面の小さな変化にも意味を読み取れてしまうからです。そのため、問い2は「何も知らない人に見せる」か「画面を5秒間、操作せずに眺めて、気づいたことを順に書き出す」という手順で補います。

記録の準備:終了画面を1行にする

集計の単位

単位は「終了画面1枚=1行」です。1作品を1行にしないでください。同じ作品でも、うまくいった終わり、失敗して終わった場合、途中でやめた場合で、画面は別物のことがあるからです。

1作品につき、次の3種類を各2回ずつ集めることを目安にします。失敗して終わる仕組みがない作品は、その種類を省きます。

  1. うまくいって終わった場合
  2. 失敗して終わった場合(失敗の仕組みがある作品のみ)
  3. 途中でやめた場合(メニューに戻る、画面を閉じるなど)

同じ種類を2回ずつ取るのは、1回だけでは偶然の見え方に左右されるためです。

5秒観察のやり方

終了画面が出たら、そこから5秒間、何も操作しません。そのうえで、目に入ったものを順番にメモします。たとえば次のような書き方です。

  • 最初に目に入ったもの
  • 「終わった」と判断した根拠
  • 「うまくいった」または「うまくいかなかった」と判断した根拠
  • 次に何をすればよいか分かったか

メモは感想ではなく、画面上の要素で書きます。「なんとなく良い雰囲気」ではなく「数字が一つ表示された」「画面の明るさが変わった」のように書きます。

条件を変えて、もう一周する

同じ終わり方を、条件を変えてもう一度記録します。

  • 音を消した状態
  • 「動きを抑える」設定を有効にした状態

アソバースの公式13作品は、「動きを抑える」設定に対応しています。音と動きを外したとき、手がかりがいくつ残るかを見るためです。こだまの森は音なしでも遊べる作品なので、音の手がかりに頼らない終わり方の例として比べられます。

手がかりを5種類に分ける

記録したメモを、次の5種類に振り分けます。1枚の終了画面に複数の種類が含まれていてかまいません。

  • 言葉、見分け方:終わりや成功を宣言する文字がある、記録の例:「クリア」に相当する語の有無
  • 音、見分け方:終了の瞬間に音が鳴る、または止まる、記録の例:音を消すと消える手がかり
  • 光や動き、見分け方:明るさ、色、動きが変わる、記録の例:「動きを抑える」で弱まるかどうか
  • 数値、見分け方:点数、手数、時間、記録などの数字が出る、記録の例:数字の単位が書かれているか
  • 次の導線、見分け方:もう一度遊ぶ、戻る、続けるなどの選択肢が見える、記録の例:選択肢が何個あるか

「言葉」を最初に置いているのは、このシリーズの題名が「クリア」の文字が出ない終わり方を扱っているためです。言葉の列が0で、ほかの列にいくつ1が立つかを見ると、静かな終わり方の中身が見えてきます。

分類で迷いやすい点が二つあります。

  • 数値と言葉の境界。 「100点」のような数字だけが出ていれば数値です。「見事」など評価の語が添えられていれば、言葉の列にも1を付けます。
  • 光や動きと、ただの画面遷移。 画面が切り替わっただけなら、手がかりには数えません。終了の意味を伝えるために明るさや色、動きが使われているかで判断します。

公式作品で当たりをつける

13作品の確認済みの仕様から、終わり方のどこを見ればよいかの「当たり」をつけられます。以下はあくまで設計から読み取れることです。実際の画面の文言や演出の細部は、作品を開いて確かめてください。

  • 紙ひこうき郵便。 各ルートは制限時間のうち最後の6秒で赤い郵便受けへ向かう設計です。終わりが唐突に来るのではなく、手前の段階から予告されている形です。予告が画面上の何で示されるかは、作品を開いて確かめます。
  • 時計じかけの台所。 料理ごとに100点で評価されます。達成の度合いを数値で伝える設計です。言葉の列と数値の列がどう分かれているかを見る題材になります。
  • 月夜の配達。 各夜の最少区間数が記録されます。燃料が有限で1区間につき燃料1を使うため、区間数は達成の質を測る数字として働きます。記録はプレイ中だけ残る点にも注意してください。
  • プリズムの道。 目的は灯台へ同じ色の光を届けることで、最少回転の記録もあります。達成の中身が「光が届く」という状態の変化なので、光や動きの列がどう立つかが見どころです。
  • こだまの森。 6・8・10ラウンドの3コースがあり、聴き直しで15点、間違いで30点が減ります。間違いが3回で終了になるため、うまくいった終わりと失敗の終わりが画面上でどう違うかを比べる題材になります。最高記録はゲームを開いている間だけです。
  • 潮だまり。 生きものが現れること、図鑑と観察ノートが埋まることが成果になっています。そもそも終わりの画面があるのかも含めて、作品を開いて確かめます。
  • 余白の庭。 時間制限がなく、保存もあります。終わりの定めがない作品で、「終わり」を誰がどう決めるのかを考える対照例になります。この作品では、終了画面の行が取れないこと自体が観察結果になります。

作品を選ぶときは、成功と失敗の終わりがある作品(こだまの森、紙ひこうき郵便、時計じかけの台所)と、終わりが穏やかな作品(余白の庭、潮だまり)を混ぜると、比較の幅が出ます。

集計と読み方

集計用の小さな道具

記録を1行ずつ、「作品名,言葉,音,光や動き,数値,次の導線」の形で、該当すれば1、しなければ0で書きます。次のHTMLを保存してブラウザで開くと、列ごとの合計と、言葉がない行の中で手がかりがいくつあるかの分布を数えられます。例の2行は入力形式を示すためのダミーです。

html
<!doctype html>
<meta charset="utf-8">
<textarea id="in" rows="7" cols="64">作品A,0,1,1,1,0
作品B,0,0,1,0,1</textarea>
<button id="go">集計</button>
<pre id="out"></pre>
<script>
const names = ["言葉","音","光や動き","数値","次の導線"];
document.getElementById("go").onclick = () => {
  const rows = document.getElementById("in").value
    .trim().split("\n").map(l => l.split(","))
    .filter(r => r.length === 6);
  const sum = names.map(() => 0);
  rows.forEach(r => names.forEach((_, i) => {
    if (r[i + 1].trim() === "1") sum[i]++;
  }));
  const quiet = rows.filter(r => r[1].trim() !== "1");
  const dist = {};
  quiet.forEach(r => {
    const k = r.slice(2).filter(v => v.trim() === "1").length;
    dist[k] = (dist[k] || 0) + 1;
  });
  const out = ["終了画面の行数: " + rows.length];
  names.forEach((n, i) => out.push(n + ": " + sum[i]));
  out.push("言葉がない行: " + quiet.length);
  for (const k in dist)
    out.push("  言葉以外の手がかりが" + k + "個: " + dist[k] + "行");
  document.getElementById("out").textContent = out.join("\n");
};
</script>

サーバーも外部ライブラリも使わず、入力した内容はこのページを閉じれば消えます。記録は、手元のメモや表計算にも残しておいてください。

読み方の目安

数字が出たら、次の順に読みます。

  1. 言葉がない行の中で、手がかりが0〜1個の行を探す。 終了や成功が伝わりにくい候補です。5秒観察のメモに「終わったか分からなかった」と書いた行と重なるかを確かめます。
  2. 手がかりが2個以上ある行は、種類を見る。 音と光や動きだけなら、音を消し、動きを抑えた条件で残るかが分かれ目です。条件を変えた周回の行と見比べて、減った列を確認します。
  3. 成功と失敗の行を並べる。 手がかりの数や種類が同じなら、「終わった」は伝わっても「うまくいったか」は数値や色の違いに任されている可能性があります。両者を分けているものが何かをメモから拾います。
  4. 「次の導線」の列を見る。 達成を静かに伝えたあと、遊び手が取れる行動が見えているかを確かめます。静かな終わりで導線もなければ、遊び手は画面の前で止まってしまうかもしれません。

手がかりの数が多いほど良い、とは読まないでください。多ければ伝わりやすい面はありますが、静かさを損なうこともあります。見るのは、数が少ないときに、残った一つが「終了」と「成功」の両方を担えているかです。

起こりやすい誤り

  • 自分が知っているから気づける。 ゲームの内容を知っていると、小さな変化にも意味を読み取れます。可能なら、遊んだことのない人に音を消した画面を見せ、「今、終わりましたか」「うまくいきましたか」の2つを別々に聞いてください。2つを一緒に聞くと、終了と成功の区別が見えなくなります。
  • 1回で判断する。 同じ種類の終わりを複数回取らないと、乱数や進行による画面の違いを拾えません。
  • カバー画像を終了画面と取り違える。 13作品のカバー画像は生成したアートワークで、ゲーム画面のスクリーンショットではありません。分析の対象は、実際に遊んで出てくる画面です。
  • 記録が残る前提で比べる。 保存があるのは余白の庭、WAVE / WAVE、かたちのあいだの3作品だけで、ほかの10作品の記録は画面を開いている間だけです。前回の記録と比べたいなら、画面の数字は自分で書き留めておく必要があります。
  • 分類の基準が途中で変わる。 「光や動き」を途中から厳しく見る、といったぶれを防ぐため、最初の数行を取った時点で基準を書き出し、以降はそれに従います。

次の行動

まず公式作品から2つ選びます。成功と失敗の終わりがあるものを1つ、終わりが穏やかなものを1つ選び、各3種類の終わりを2回ずつ、5秒観察で記録してください。そのあと、音を消した条件と「動きを抑える」設定を有効にした条件で同じことを繰り返し、上のコードで集計します。自分の作品を投稿する側の方は、同じ手順を自作の終了画面に当ててみると、どの手がかりに頼っているかが見えてきます。