相手のクイーンを取れるのに取らない方がよい局面:練習問題2問
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相手のクイーンが、自分の駒の攻撃範囲にぽつんと残っている場面を考えてみます。クイーンは駒の価値の目安で9点、ルークは5点です。取れば大きな駒得になるので、手が勝手に伸びる局面です。 ところが、取った直後の形勢が駒の点数どおりになるとは限りません。取った駒が持ち場を離れて王の守りが崩れたり、取った結果、相手の王に動ける場所がなくなったりすることがあります。もっと強い手が別にあることもあります。 この記事では、配置を言葉で完全に示した練習問題を2問用意しました。盤と駒を用意して並べ、自分で動かしながら読んでください。駒の価値の目安は一般的な数え方で、局面によって実際の価値は変わります。
問題1:クイーンより強い一手
最初の配置です。白番です。
- 白:キングg1、ルークe1、ビショップd2、ポーンf2・g2・h2
- 黒:キングg8、クイーンa5、ポーンf7・g7・h7
黒のクイーンはa5にいて、白のビショップd2が斜め(d2→c3→b4→a5)に狙っています。つまり「Bxa5」でクイーンが取れます。取ったビショップはa5で安全で、黒には取り返す駒がありません。
ここで、取る前に次の3つを順に確かめます。
- 自分から王手をかけられる手はあるか。
- その王手は、逃げ道や受けの手があるか。
- 取った場合と取らない場合で、最終的な結果はどちらが重いか。
手を探す
王手の候補はルークe1です。e列は途中の駒がなく、e8まで進めます。e8に置くと、8段目に沿って黒キングg8へ王手になります。
黒の受けを順に調べます。
- キングの逃げ道:f8はルークが利いています。h8もルークが利いています。キングがg8から動くと、ルークの利きが通るからです。f7・g7・h7は自分のポーンでふさがっています。
- ルークを取る:黒のクイーンa5の利きにe8は入りません。a5から斜めに進むとd8で止まります。
- 間に駒を入れる:王手の線上でe8とg8の間にあるのはf8だけです。a5のクイーンはf8に届きません。
答えは Re8 で、チェックメイト(詰み)です。
比較する
- Bxa5(クイーンを取る)、結果:白が大きく駒得。ただし対局は続く
- Re8#、結果:その場で終局
駒得は、あくまで「勝ちやすくなる」ための手段です。目的の勝ちが直接手に入るなら、手段を取る必要はありません。取れるクイーンに目がくらんで、王手の可否の確認を飛ばすのが、この問題の落とし穴です。
問題2:全部取ったのに引き分けになる
二つ目の配置です。白番です。
- 白:キングg6、ビショップc4、ルークa2
- 黒:キングh8、クイーンa1
黒のクイーンはルークa2を狙っていて、白のルークはクイーンを取れます。Rxa1です。取れば黒は王しか残らず、白はルークとビショップが残ります。
ここで、取った後の黒の動きを一つずつ数えます。
- g8:白のビショップc4の斜め(c4→d5→e6→f7→g8)が通っていて、入れません。
- g7:白キングg6の隣で、入れません。
- h7:これも白キングg6の隣で、入れません。
- 王手は?:ルークa1は1段目とa列を、ビショップc4は自分の斜めを、白キングは隣接する8マスを守っています。h8は、このどれにも入りません。
黒はキングしか残っておらず、動ける場所がなく、王手もされていません。この状態はステイルメイトで、引き分けです。クイーンを取った白が、結果としてすべてを手放します。
勝つ手を探す
別の手として、ルークa2をh2に動かします。Rh2です。a2からh2までのb2〜g2は空いています。h2のルークは、h列に沿って黒キングh8へ王手をかけます。
黒の受けを順に調べます。
- g8:ビショップが利いています。
- g7とh7:白キングが利いています。
- ルークを取る:a1のクイーンはh2に届きません。
- 間に駒を入れる:h3〜h7が候補ですが、a1のクイーンの利き筋(a列・1段目・a1からh8への斜め)はどれもh列に入りません。
答えは Rh2 で、チェックメイトです。詰ます手はほかにもあるかもしれませんが、ここでは上の手順で確かめられる1手を答えとします。
- Rxa1(クイーンを取る)、結果:ステイルメイトで引き分け
- Rh2#、結果:白の勝ち
この問題の教訓は、駒を取ったあとの相手の合法手の数を数えることです。数えてゼロなら、王手がない限りステイルメイトになります。駒得が最大のときほど、引き分けの結果が重く響きます。
取る前に使える3つの確認
2問に共通する流れは、次の順番にまとめられます。
- 王手を全部探す:自分の王手は、相手の応手が限られるので、結果を読みやすい手です。
- 取る手の直後を読む:取った駒がどこへ動き、元の持ち場が空くか。相手が王手や取り返しで反撃できるか。
- 相手の合法手を数える:特に相手の駒が少ない終盤で、ゼロにならないか。
「取らない方がよい」のは、取る手そのものが悪いからではありません。取る前に確認する手が、取るよりも結果の確かな選択肢に近づくからです。確認の順番を決めておくと、手が先に動くのを止められます。
自分の対局で練習する
ここで紹介した配置が、実戦でそのまま現れることはまれです。型として覚えるより、次のように自分の対局の中で見つける練習が向いています。
「灯りのチェス」は、3段階の相手との対局のほか、同じ画面でのふたり対局ができます。ヒント、一手戻す、取った駒の表示、全棋譜の表示もあります。使える機能の範囲は、作品を開いて確かめてください。
進め方の例です。
- 相手のクイーンを取れる局面が出たら、すぐに取る前に、一手戻す機能が使えるか確かめます。
- 取った場合の相手の返し手と、自分の代わりの手(王手や、ほかの駒での取り方)を、棋譜を見ながら一覧にします。
- 「取った直後の相手の合法手の数」と「その後の王の安全」を、取る・取らないで比べます。
- 結果を、終局後に棋譜と照らして振り返ります。
一覧は毎回同じ形式で書いておくと、次の対局で比べやすくなります。
次の行動
問題1と問題2を盤に並べ、Bxa5とRxa1を実際に動かして、取ったあとの相手の合法手を数えてみてください。続けて「灯りのチェス」を開き、自分の対局でクイーンが取れる局面に出会ったら、取る前に王手と相手の合法手の数を確かめてください。
参考資料
- チェスの公式ルール(ステイルメイトと終局判定に関する一般的な規定)


