潮だまりの生きものが動いたら、観察ゲームは探索ゲームになるのか
遊びを見つける執筆にClaudeを使用しています。

「潮だまり」では、引き潮の浅瀬に海藻を3つ、砂地に小石を2つ置き、潮を切り替えて何が現れるかを眺めます。現れる生きものは8種で、上下左右の隣り合い方によって決まります。絵付きの図鑑と観察ノートもあります。置いて、待って、見て、書き留める遊びです。 ここで一つルールを変える場面を考えてみます。現れた生きものが、その場にとどまらず動き回るとします。同じ盤面でも、さっき見た場所に今もいるとは限りません。遊び手は「次にどこを見るか」を選ぶ必要が出てきます。それでも、遊びの種類は本当に観察から探索へ移るのでしょうか。 この記事は答えを示しません。確かめる方法だけを設計書の形で示します。公式作品は改造できないので、小さな格子の試作を用意し、「動かない版」と「動く版」を数人に遊んでもらって比べます。結果は、読者が自分で行えば出ます。 なお、公式の「潮だまり」で生きものがどの条件で現れるかは、この記事では扱いません。そこは作品を開いて確かめてください。以下の試作のルールはすべて、実験用に作った自作のものです。
先に決めておく:観察と探索の線引き
実験の前に、「観察」と「探索」の定義を言葉にしておきます。ここが曖昧だと、結果を読むときに何とでも解釈できてしまいます。仮の定義は次のとおりです。
- 観察:一度見た情報が、そのまま有効であり続ける遊びです。見たことをノートに積み上げるほど、全体像が完成に近づきます。
- 探索:見た情報が時間とともに古くなる遊びです。どこを見るかを選び、見た結果から次の場所を推測し直します。
この定義の核は、「情報が古くなるかどうか」です。生きものが動くと、見た情報が古くなります。そこで探索らしさが生まれるのではないか、というのが検証したい仮説です。仮説なので、外れる可能性も同じだけあります。
差を見るために、変えるルールは一つに絞ります。「生きものが毎回の操作のあと、少しだけ動く」だけを変え、ほかの条件は揃えます。
準備するもの:小さな試作と記録用紙
用意するものは、次の4点です。
- ブラウザ(スマートフォンでもパソコンでも構いません)。
- 下の試作を保存したHTMLファイル。
- 協力してくれる人2〜3人。家族や友人で十分です。
- 記録用紙(紙でも表計算でも構いません)。
試作のルールは次のとおりです。6×6の格子に海藻3つと小石2つをランダムに置きます。カニが1匹、海藻の上下左右どれかに隣り合うマスにいます。遊び手は空きマスを選んで「のぞく」だけです。カニがいれば見つかり、いなければ「・」の跡が残ります。「動く版」にチェックを入れると、外れるたびにカニが動きます。動き方は、「海藻の隣」という条件を保ったまま、距離2以内のマスのどこかへ移るというものです。
<!doctype html><meta charset="utf-8">
<label><input type="checkbox" id="mv">動く版</label>
<button id="rs">新しい盤面</button> <span id="msg"></span>
<div id="g"></div>
<style>#g{display:grid;grid-template-columns:repeat(6,48px);gap:2px;margin-top:8px}
#g div{height:48px;background:#bde;text-align:center;line-height:48px;cursor:pointer}</style>
<script>
const N=6,g=document.getElementById('g'),mv=document.getElementById('mv');
const msg=document.getElementById('msg'),cells=[];
let weed,rock,crab,tries,found;
const rnd=n=>Math.floor(Math.random()*n);
const nb=i=>{const x=i%N,y=(i/N)|0,r=[];
if(x>0)r.push(i-1);if(x<N-1)r.push(i+1);if(y>0)r.push(i-N);if(y<N-1)r.push(i+N);return r;};
const dist=(a,b)=>Math.abs(a%N-b%N)+Math.abs(((a/N)|0)-((b/N)|0));
const spots=()=>[...new Set(weed.flatMap(nb))].filter(i=>!weed.includes(i)&&!rock.includes(i));
function reset(){
const all=[...Array(N*N).keys()].sort(()=>Math.random()-.5);
weed=all.slice(0,3);rock=all.slice(3,5);
const s=spots();crab=s[rnd(s.length)];tries=0;found=false;msg.textContent='';
cells.forEach((c,i)=>{c.textContent=weed.includes(i)?'🌿':rock.includes(i)?'⚫':'';});
}
function peek(i){
if(found||weed.includes(i)||rock.includes(i))return;
tries++;
if(i===crab){found=true;cells[i].textContent='🦀';msg.textContent=tries+'回目で発見';return;}
cells[i].textContent='・';
if(mv.checked){const c=spots().filter(j=>dist(j,crab)<=2);crab=c[rnd(c.length)];}
}
for(let i=0;i<N*N;i++){const d=document.createElement('div');d.onclick=()=>peek(i);g.appendChild(d);cells.push(d);}
document.getElementById('rs').onclick=reset;reset();
</script>保存した.htmlファイルをブラウザで開けば動きます。同じマスを何度でものぞけるようにしてあるのは意図的です。静止版と動く版で、再訪の回数に差が出るかを記録するためです。
手順:静止版と動く版を交互に遊ぶ
協力者一人あたり、静止版2回と動く版2回の計4回を遊びます。順番は「静止→動く→静止→動く」を基本にします。次の協力者には「動く→静止→動く→静止」で始めてもらいます。最初に遊ぶ条件の影響を、全体で相殺するためです。
- 協力者に伝えるのは、「海藻の隣のどこかにカニがいます。空きマスをクリックしてのぞき、見つけてください」だけにします。動くかどうかは伝えず、チェックの有無だけで条件を切り替えます。
- 一回ごとに、「次にどこをのぞくか、理由を一言ずつ声に出してください」と頼みます。声に出す理由は、遊び手が何を根拠に選んだかを知る手がかりになります。
- 発見したら、画面に出る回数を記録用紙に写します。「新しい盤面」ボタンで次の回に進みます。
- 四回が終わったら、感想を短く聞きます。「観察していた感じか、探していた感じか」を5段階で選んでもらいます。
見ている側は、できるだけ口を出しません。ヒントを出したり、「その場所はさっきのぞきましたよ」と指摘したりすると、記録が崩れます。保護者や教員が子どもと行う場合も同じです。この実験は子どもの力を測るものではなく、ルールの差を見るものだと、最初に子どもへ伝えておきます。
記録の取り方:何を、どの単位で、何回
記録は一回の対局(一盤面)を単位にします。記録用紙の列は次の6つです。
- 条件、記録の仕方:静止か動くか
- のぞいた回数、記録の仕方:画面に出る「〜回目で発見」の数字
- 再訪回数、記録の仕方:すでに「・」が付いたマスをもう一度のぞいた回数(見ている側が数えます)
- 理由の型、記録の仕方:声に出した理由を分類した結果(後述)
- 感想の5段階、記録の仕方:1=観察に近い、5=探索に近い
- もう一回の希望、記録の仕方:終了後に「もう一回やりたい」と言ったか(はい/いいえ)
理由の型は、事前に3つに分けておきます。
- 場所の推理型:「海藻の隣だから」「この辺はまだ見ていないから」など、盤面の構造から選んだ理由です。
- 過去参照型:「さっきここにいたかもしれない」「さっきの場所の近く」など、前の結果をもとにした理由です。
- 当てずっぽう型:理由を言えない、または「なんとなく」です。
分類は一人で決めず、可能なら二人で別々に行って突き合わせます。食い違った箇所は、基準を文章にして直します。
回数は、協力者2人なら合計8回です。それだけでは偶然の影響が大きいので、数字で白黒をつけようとしないでください。傾向を見るだけにとどめます。協力者を増やせるなら、5人以上が望ましいです。
結果の読み方と誤りやすい点
記録が揃ったら、条件ごとに並べます。判断の目安は次のとおりです。ただし、どれも仮の基準です。
- 動く版で再訪が増え、「過去参照型」の理由が増えたなら、「見た情報が古くなる」ことが選び方を変えた可能性があります。探索らしい遊びになっていたと考える根拠になります。
- 動く版でも再訪がほとんど増えず、理由が「場所の推理型」のままなら、動きの幅が小さすぎて、ほぼ静止版と同じ遊びになっていた可能性があります。距離2以内という設定を、3以上に変えて再試験してみてください。
- 両方の条件で感想の5段階にほとんど差が出ない場合、遊び手は動きの有無を気にしていないことになります。この場合は、探索らしさを決めるのが「情報の古さ」ではなく、別の要素(目標の明確さなど)かもしれません。
- 動く版で「もう一回」と言う人が減ったなら、動きが運任せに感じられた可能性があります。「探索」ではなく「ただの当てずっぽう」になっていないか、理由の型の割合と合わせて確認します。
誤りやすい点も挙げておきます。
- ルールが二つ変わってしまう:動く版でカニが「海藻の隣」から外れると、条件が二つ変わります。試作ではその条件を保っていますが、自分で改造するときは注意してください。
- 盤面の難しさの偏り:盤面はランダムなので、たまたま簡単な配置が静止版に当たることがあります。回数を増やすか、紙に同じ配置を描いて、全員に同じ盤面で遊んでもらうと偏りが減ります。
- 順序効果:先に遊んだ条件に慣れて、後の条件が有利になることがあります。交互の順序を守ってください。
- ほかの協力者の画面を見てしまう:一人ずつ、順番に遊んでもらいます。
- 記録者の誘導:「さっきのぞいたよね」と言うだけで、再訪の数が変わります。
この実験で言えるのは、「この小さな試作では、こういう傾向が出た」という範囲までです。「潮だまり」のような作品に広げて語ることはできません。
次の行動
まず上のコードを保存し、自分で静止版と動く版を一回ずつ遊んでみてください。そのうえで協力者を1人誘い、記録用紙に最初の1行を書いてみます。公式の「潮だまり」も開き、「置いて、待って、見て、書く」の流れが、試作のどの部分と重なるかを見比べてみてください。重ならない部分があれば、それが次に変えたいルールの候補です。

