AIを使った絵本・漫画の制作記録を残す:工程メモの様式と文化庁資料の見方
AIを使いこなすClaudeで執筆し、GPTで自動校閲・修正しています。

結論から言うと、残すべき記録は「日付・工程・使った道具・自分の判断」の4項目です。この4つを工程ごとに1行でも書いておけば、後から「どこを自分で決め、どこをAIに任せたか」を説明する手がかりになります。画像やプロンプトを保存するだけでは足りません。「なぜその案を選び、どこを描き直したか」は、残さなければ記憶から消えます。 この記事では、そのままコピーして使えるメモの様式、保存するファイルの一覧、文化庁の資料を読むときの着眼点を順に示します。記録はあくまで説明の材料です。残しておけば著作物として認められる、あるいは権利侵害を避けられる、といった結果を保証するものではありません。
何を説明できるようにするか:記録項目の判断表
AIを使った作品の説明で問われやすいのは、「誰が、どの段階で、何を決めたか」です。そこで、工程ごとに次の項目を決めておきます。以下は編集上の設計で、公的機関が定めた様式ではありません。
- 日付、書く内容:作業した日(年月日)、書かないと困る場面:制作の順序を説明するとき
- 工程、書く内容:構想/ネーム/キャラ設定/下絵/生成/加筆/文章/組版など、書かないと困る場面:どの段階でAIを使ったか示すとき
- 使った道具、書く内容:サービス名、モデルや機能名、ソフト名、書かないと困る場面:後で利用規約を確認し直すとき
- 入力、書く内容:プロンプトや参考にした素材の種類、書かないと困る場面:生成時の条件を確認したいとき
- 自分の判断、書く内容:選んだ理由、却下した理由、自分で直した箇所、書かないと困る場面:自分の関与を説明するとき
- AI任せの範囲、書く内容:AIの出力をそのまま使った部分、書かないと困る場面:共同制作者や出版先に聞かれたとき
- 他者素材、書く内容:参考画像、フォント、既存作品の有無と出所、書かないと困る場面:似ている、と指摘されたとき
迷ったら「判断」と「AI任せの範囲」の2列を優先してください。道具名やプロンプトは履歴が残っていれば後で補えますが、頭の中の判断は後から正確に復元しにくいためです。
工程メモの様式(コピー用テンプレート)
メモ帳、表計算、Notionなど、続けやすい場所で構いません。1作品につき1ファイル(例:制作ログ_作品名.md)とし、1回の作業につき以下を1ブロック書きます。
## 2026-00-00 / 工程:○○
- 使った道具:(サービス名・機能名・ソフト名)
- やったこと:(1〜2行)
- 入力:(プロンプトの保存先ファイル名、または要旨)
- 出力:(保存したファイル名。採用/不採用)
- 自分の判断:(選んだ理由/却下した理由)
- 自分で手を入れた箇所:(描き直し、構図変更、文章の書き換えなど)
- AIの出力をそのまま使った箇所:(なければ「なし」)
- 他者の素材・参考:(出所、利用条件の確認先)書き方のコツ
- 「自分の判断」は理由まで書きます。「3番を採用」ではなく「3番を採用。主人公の視線が次のコマにつながるため」のように書きます。
- 手直しは「顔を修正」ではなく、何をどう変えたかを書きます。変更前後のファイルを残せば、書く量は減ります。
- 1回3分で書ける量に絞ります。長いと続きません。
説明用の記入例(絵本の1場面)
次は書き方を示すための架空の例で、実際の制作記録ではありません。
## 2026-11-03 / 工程:場面3の絵の生成と加筆
- 使った道具:画像生成サービスA、お絵描きソフトB
- やったこと:「森で迷うきつね」の見開き案を生成し、1案を選んで加筆
- 入力:prompts/scene03_v1.txt(構図・時間帯・色調を指定)
- 出力:gen/scene03_v1_01〜08.png(採用は05)
- 自分の判断:05を採用。他案はきつねが画面中央で、文章の「ひとりぼっち」と合わないため却下
- 自分で手を入れた箇所:きつねの耳と尻尾を描き直し、背景の木を2本削除、空の色を自分で塗り直し
- AIの出力をそのまま使った箇所:背景の草むら
- 他者の素材・参考:なし(参考画像は使っていない)このように、AI任せの部分と手を入れた部分を同じブロックで分けて書くのがポイントです。
保存するファイル一覧
メモ本体に加え、元になる素材を作品フォルダにまとめます。
- 制作ログ_作品名.md、中身:上のテンプレートの記録、保存のしかた:毎回追記
- prompts/、中身:依頼文・プロンプトの全文(版ごと)、保存のしかた:日付+場面+版で命名
- gen/、中身:AIの出力(不採用も)、保存のしかた:採用分に印を付ける
- edit/、中身:加筆途中・最終のレイヤー付きファイル、保存のしかた:工程ごとに別名保存
- ref/、中身:参考にした素材と、出所・条件のメモ、保存のしかた:素材ごとに出所を1行
- terms/、中身:利用時点のサービス規約・料金プランのスクリーンショットやURL・確認日、保存のしかた:利用開始時と規約・プランの変更時
- final/、中身:公開した最終版、保存のしかた:公開日を付ける
サービス側の履歴にも頼れますが、保存期間や機能は変わるため、手元にも複製しておきます。
- ChatGPT:設定の「データ管理」からエクスポートできます。OpenAIのヘルプによると、設定からのエクスポートは Free、Go、Plus、Pro と条件を満たすEduワークスペースで利用できます。Eduでは役割・ワークスペース設定・データレジデンシーの有効化状況によって利用可否が異なります。Business、Enterprise、ChatGPT for Healthcareのワークスペースではセルフサービスのエクスポートは利用できず、組織が管理するデータへのアクセスはワークスペース所有者に相談する案内です。準備には最大7日かかり、ダウンロードリンクは受け取ってから24時間で失効します(2026年10月に確認)。ファイルにはアカウント情報などの機微な内容も含まれうるため、保管には注意が必要です。詳しくはChatGPT の履歴とデータのエクスポート(OpenAIヘルプ)を参照してください。
- Midjourney:フォルダ機能で作品ごとに生成画像をまとめ、フォルダ単位で一括ダウンロードできます。Using Folders(Midjourney Docs)に手順があります。工程メモと対応させるため、プロンプトはprompts/にも自分で保存してください。
文化庁資料の見方
日本の著作権の考え方を知りたいときは、文化庁の「AIと著作権について」のページから入るのが近道です。このページには、次の資料が並んでいます(2026年10月に確認)。
- 「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)
- 「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月31日)
- 柔軟な権利制限規定の基本的考え方(令和元年10月24日)
ここで扱うのは日本の著作権法です。海外で公開・販売する場合は、その国の制度を別に確認する必要があります。
どこを読むか
制作記録に関係するのは、主に次の2点です。
- AI生成物が著作物にあたるかの考え方:「考え方」本文の「5.(3)生成物の著作物性について」(本文39〜40頁)を読みます。指示の長さや試行回数の多さ、単なる選択だけで創作的寄与が認められるわけではありません。具体的な表現の指示、出力を確認して指示を修正した過程、創作的な加筆修正を記録項目と対応させます。加筆修正した部分に著作物性が認められても、それ以外の部分の著作物性には影響しないと整理されています。
- 類似する既存作品との関係:同資料の「5.(2)生成・利用段階」(本文32頁以降)を読みます。既存作品との類似性と依拠性が論点です。ref/には参照・入力した素材や許諾の情報を残し、terms/ではサービスの利用条件を確認します。サービス規約への適合だけで、他者の著作権を侵害しないと判断できるわけではありません。
「チェックリスト&ガイダンス」本文は、ステークホルダーの立場別に望ましい取組を示す資料です。第1部の「AI利用者(業務利用者)」(本文17頁以降)または「業務外利用者(一般利用者)」(本文23頁以降)を、自分の利用に応じて確認し、自分の運用と照らし合わせてください。
なお、「考え方」自体に法的拘束力はなく、個別の事案は司法判断によるとされています。記録の様式は、原文を読んだうえで項目を足し引きして構いません。
運用:迷わず続けるための手順
- 制作を始める前に作品フォルダを作り、上のファイル構成を空のまま用意します。
- 生成や加筆をするたびに、終わってすぐ3分でテンプレートを埋めます。
- サービスの利用開始時と規約・プランの変更時に、terms/にその時点の規約と確認日を残し、公開前にも利用条件を確認します。
- 月に一度、サービス側の履歴を手元に複製します。ChatGPTのエクスポートは受け取りまで時間がかかるので、早めに申請します。
- 未公開の原稿や他人の依頼内容を履歴に入れる場合は、サービスの設定や契約を確認し、不要なら架空の内容に置き換えます。学習利用をオフにしても、情報が外部に出ないとは限りません。
記録を残す目的は、あとで「自分は何をしたか」を自分の言葉で説明できる状態を作ることです。専門的な判断が必要な場面では、著作権に詳しい専門家に、このログを見せて相談してください。

