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前職の仕事を職務経歴書に書くとき:守秘義務とAIに貼る情報の線引き

AIを使いこなす

執筆にClaudeを使用しています。

経歴のメモの情報を不透明な付箋で覆い、共有する範囲を整理する場面
記事の内容をもとに制作したAI生成イメージです。実際の製品画面や検証結果の写真ではありません。

前職の仕事は、自分の役割、取り組んだこと、使った手法、成果の大きさまでなら書きやすい情報です。一方、取引先名や社内の非公開数字など、第三者が見て会社や相手を特定できるものは、伏せるか抽象度を上げます。迷ったときは「前職の人がこの一文を読んで、困らないか」で判断してください。 生成AIに貼る場面では、線をもう一段手前に引きます。職務経歴書は応募先に渡す文書ですが、AIへの入力は外部サービスへの送信です。書類に載せる内容でも、元の資料や固有名詞はAIに貼らないのが安全側の運用です。 なお、この記事は適法性を保証するものではありません。実際の義務は、前職との契約や就業規則の文言で決まります。

この記事の目次
  1. 1. 線引きの拠り所は3つ
  2. 2. 書ける・伏せる情報の判断表
  3. 3. AIの「学習に使わない設定」の位置づけ
  4. 4. 固有名詞の伏せ字ルール例
  5. 5. 依頼文と提出前の確認

1. 線引きの拠り所は3つ

契約・就業規則・誓約書

まず雇用契約書、就業規則、入社時や退職時に署名した秘密保持の誓約書を確認します。HiELCC(広島県・今治市雇用労働相談センター)の解説は、弁護士の説明として、従業員には労働契約に付随する秘密保持の義務があるとしています。そのうえで、就業規則への明記や、入社時・在職中・退職時の誓約書を有用な対応として挙げています。何が秘密かは会社の文書で決まっていることが多く、退職時に交わした約束が今も有効な場合があります。

営業秘密に当たるか

同じ解説では、不正競争防止法の営業秘密は、①秘密として管理されている、②事業活動に有用、③公然と知られていない、の3つを満たす情報とされています。これを満たさない情報でも、契約による保護の対象にはなり得ます。「営業秘密ではなさそうだから書いてよい」とは言えません。

個人情報かどうか

顧客名や社員名など、個人を特定できる情報は別の問題です。個人情報保護委員会は2023年6月に、生成AIサービスの利用について注意喚起のページを公開しています。添付資料の中身は本稿では確認できていません。個人情報を含む内容を入力する前に、原文を読んでください。職務経歴書づくりでは、個人名を入力しないのが最も確実です(編集上の提案です)。

2. 書ける・伏せる情報の判断表

以下は編集上の整理で、公的な基準表ではありません。「要確認」は、契約や就業規則を読んで判断してください。

  • 自分の役職・担当業務・期間、職務経歴書:書ける、AIに貼る:貼れる、扱い方:そのまま
  • 会社名・所属部署、職務経歴書:書ける、AIに貼る:伏せる、扱い方:AI上は「前職A社」
  • 取引先・顧客の名前、職務経歴書:伏せる、AIに貼る:伏せる、扱い方:「大手小売業B社」など業種・規模で表現
  • 公開済みの製品・サービス名、職務経歴書:書ける、AIに貼る:伏せる、扱い方:AI上は「製品X」
  • 未発表の製品・計画・価格、職務経歴書:書かない、AIに貼る:貼らない、扱い方:省略
  • 自分の担当範囲の成果(比率・達成率)、職務経歴書:書ける(要確認)、AIに貼る:貼れる、扱い方:「前年比で約1.2倍」など相対値
  • 社内の売上額・単価・原価、職務経歴書:伏せる、AIに貼る:貼らない、扱い方:「数億円規模」など範囲にぼかす
  • 社内システム名・ツール構成、職務経歴書:要確認、AIに貼る:伏せる、扱い方:「基幹システム」など一般名
  • 顧客リスト・個人名・連絡先、職務経歴書:書かない、AIに貼る:貼らない、扱い方:件数や層のみ(「法人顧客約50社」)
  • 社内資料・議事録・仕様書の文面、職務経歴書:書かない、AIに貼る:貼らない、扱い方:自分の記憶とメモから書く
  • 公開済みの受賞・プレスリリース、職務経歴書:書ける、AIに貼る:貼れる、扱い方:公開されている範囲か確認

職務経歴書を作るために、退職後も前職の資料を手元で見返していないか、という点も確認してください。経歴は、自分の記憶と自分で書いたメモから組み立てるのが原則です。

3. AIの「学習に使わない設定」の位置づけ

学習に使われない設定にしても、前職の情報を外部サービスへ送るという事実は変わりません。設定は守秘の代わりにならないので、伏せたものだけを貼るのが一番単純です。

各社の公式ヘルプで確認できた点は次のとおりです(2026年10月28日に閲覧)。

  • ChatGPT:個人のワークスペースのFree、Plus、Proでは、データ共有が既定で有効です。「Improve the model for everyone」をオフにすると、新しい会話は学習に使われません。ただし、高評価・低評価などのフィードバックを送ると、その会話全体が学習に使われる可能性があります。一時チャットは学習に使われませんが、保存すると通常のチャットとして設定に従います。Business、Enterprise、Edu、ChatGPT for Healthcareのワークスペースは、既定で学習に使われないとされています。(OpenAI: Data Controls FAQ)
  • Claude:ユーザーが許可した場合に、会話がClaudeの改善に使われます。シークレットチャットは、モデル改善の設定が有効でも改善に使われません。安全分類器にフラグを立てられた会話は、安全対策などに使われ得ます。また、医療記録、パスワード、機密文書などは共有しないよう案内されています。(Claude Help Center: 機密データの入力と会話の閲覧者)

プランや画面名は変わるため、使う時点で設定画面を確認してください。

4. 固有名詞の伏せ字ルール例

次のルールをメモ帳に書いておき、貼る前に自分の手で置換します。AIに「伏せ字にして」と頼むには元の文章を貼る必要があるので、本末転倒です。

  • 自社名、置き換え:前職A社、補足:業種と規模を添える(「A社(ITサービス、約300名)」)
  • 取引先、置き換え:取引先B社、C社……、補足:業種のみ残す(「B社=小売」)
  • 製品・サービス名、置き換え:製品X、サービスY、補足:機能は一般語で説明
  • システム・ツール名、置き換え:基幹システム/チケット管理ツール、補足:ベンダー名も伏せる
  • 人名、置き換え:上司、メンバー3名、補足:肩書だけ残す
  • 金額、置き換え:数千万円規模/予算比+15%、補足:実額は避ける
  • 日付・案件名、置き換え:2020年度下期/大型案件、補足:年度程度の粒度
  • 地名・拠点、置き換え:関東エリア/海外拠点、補足:事業所名は避ける

以下は説明用の架空の例です。実在の企業・案件ではありません。

  • 元:「○○株式会社向けの在庫管理システム刷新(予算1.8億円)をリーダーとして担当」
  • 伏せ字後:「大手小売業B社向けの基幹システム刷新(数億円規模)を、5名チームのリーダーとして担当」

伏せて具体性が落ちたと感じたら、固有名詞ではなく自分の判断・工夫・数字の変化を厚くします。応募先が知りたいのは、取引先名よりも、あなたが何を考えて何をしたかです。

5. 依頼文と提出前の確認

伏せ字にしたメモができたら、次のように依頼します。これは例文で、実行結果は掲載していません。

以下は職務経歴書用のメモです。固有名詞はすべて伏せ字に置き換えてあります。
- 伏せ字(A社、B社、製品Xなど)は、そのまま使ってください。
- 実名や具体的な金額を推測して補わないでください。
- 事実が不足している箇所は、補わずに「【要確認:○○】」と書いてください。
- 出力は、業務内容(2文)と成果(箇条書き3つ)にしてください。

メモ:
(ここに伏せ字済みのメモ)

提出前には、次の点を自分の目で確認します。

  • AIの出力に、貼っていない固有名詞や数字が混ざっていないか。「【要確認】」の箇所は自分で事実を埋める
  • 判断表で「要確認」とした項目を、契約書や就業規則と照らしたか
  • 伏せた内容を面接で聞かれたときの答えを決めたか(「守秘義務の関係で社名は控えますが、業種は〜」など)
  • 公開情報に基づく記述が、公開されている範囲に収まっているか

契約の解釈や競業避止などの条項で迷うときは、労働相談窓口や弁護士に相談してください。書き方に迷ったら、固有名詞を減らして役割と工夫を増やす方向が、守秘と伝わりやすさの両面で無理のない落としどころです。

出典・参考資料