決まった手順ならエージェントは要らない?固定ワークフローとAIエージェントの使い分け
AIを使いこなすClaudeで執筆し、GPTで自動校閲・修正しています。

結論から言うと、手順を事前に書き出せる作業なら、基本は固定ワークフローで足ります。AIエージェントが向くのは、手順そのものが状況によって変わり、途中の判断が必要な作業です。しかも、その判断を間違えても取り返せる場合に限ります。 「AIに任せる」と言っても、AIを使う場面は二通りあります。一つは、人間が決めた流れの中の一部の工程でAIに文章を読ませたり書かせたりする形です。もう一つは、AI自身が次に何をするか、どのツールを使うかを決めながら進める形です。この記事では前者を固定ワークフロー、後者をエージェントと呼び、選ぶ基準を二軸の表にします。
この記事の目次
二つの違いは「誰が次の手を決めるか」
Anthropicのエンジニアリング記事Building effective agentsは、ワークフローを「あらかじめ決めたコードの経路でLLMとツールを動かすもの」、エージェントを「LLMが自分の進め方とツール利用を動的に決めるもの」と区別しています。同記事は、エージェント型は遅延とコストを払って性能を得る方式であり、段階が増えると誤りが積み重なるおそれがあるとも述べています。そして、できるだけ単純な方法から始め、必要なときだけ複雑にする方針を勧めています。
ここから言える実務上の差は次の通りです。
- 固定ワークフロー:順番、分岐条件、使うツールを人が決める。AIは各工程の中身(要約、分類、下書きなど)を担当する。動きを予測しやすく、テストもしやすい。
- エージェント:AIが途中で計画を立て、ツールを選び、結果を見て次を決める。柔軟だが、毎回同じ動きになるとは限らず、確認すべき範囲も広がる。
「決まった手順ならエージェントは要らない」という問いの答えは、この差から出てきます。順番を人が書けるなら、AIに順番まで決めさせる理由が薄いのです。
手順の固定度×失敗の許容度の判断表
使い分けは二つの問いで決めます。
- 手順の固定度:作業の流れを、始める前に箇条書きで書けますか。
- 失敗の許容度:間違った結果が出たとき、実行前に気づいて直せますか。外部への送信、支払い、削除のように取り返しにくいですか。
- **手順が固定(書き出せる)、失敗の許容度が低い(取り返しにくい):固定ワークフロー+人の承認。 AIは下書きや分類まで。実行は決まった処理が行う、失敗の許容度が高い(やり直せる):固定ワークフロー、または単発のAI呼び出し。** 自動化の効果が出やすい
- **手順が不定(状況で変わる)、失敗の許容度が低い(取り返しにくい):エージェントは調査や提案まで。 権限を絞り、実行前に人が承認する、失敗の許容度が高い(やり直せる):エージェントが有力。** 試行錯誤を許し、結果を人が確認する
右下だけが「エージェントに任せる」と素直に言える領域です。左下は、AIの判断力が欲しいが失敗の代償も大きいので、実行権限を渡さず提案で止めます。
権限を絞り、重要な操作の前に人の承認を挟む考え方は、OWASPのLLM06:2025 Excessive Agencyでも対策として挙げられています。AIに与えるツールと権限を最小限にし、影響の大きい操作には人間の承認を入れる、という趣旨です。
当てはめ例(説明用の例)
以下は編集部が考えた説明用の例で、実際に運用して測定した結果ではありません。
- 毎週の議事録を決まった書式に要約して共有フォルダへ保存、手順の固定度:高い、失敗の許容度:高い(読む人が気づける)、向く形:固定ワークフロー。要約だけAI
- 届いた請求書の金額を会計表に転記して支払い予約、手順の固定度:高い、失敗の許容度:低い、向く形:固定ワークフロー。AIは読み取りまで、金額は人が承認
- 問い合わせメールを「返品」「故障」「その他」に振り分け、手順の固定度:高い、失敗の許容度:中(誤分類は後で直せる)、向く形:固定ワークフロー。分類だけAI、迷う案件は人へ
- 競合3社の最近の発表を調べて比較メモを作る、手順の固定度:低い(探し方が毎回変わる)、失敗の許容度:高い(下書き扱い)、向く形:エージェント。出典URLを必ず付けさせる
- 不具合の原因調査と修正案づくり(作業用ブランチ内)、手順の固定度:低い、失敗の許容度:高い(差分を見て破棄できる)、向く形:エージェント。マージは人が判断
- 顧客への返金可否の判断と実行、手順の固定度:低い、失敗の許容度:低い、向く形:エージェントは事実整理と案の提示まで。実行は人
迷いやすいのは、「手順は固定のはずなのに例外が多い」作業です。この場合は全体をエージェントにせず、例外だけを人かAIに回す構成が現実的です。通常ルートは固定、「ルールに当てはまらない」と判定された件だけ人が見る、という分け方です。
判断に迷ったときの5問チェック
次の質問に、作業ごとに答えてください。
- 手順を10行以内で書けるか。書けるなら固定ワークフローを先に検討する。
- 分岐の条件は「金額が10万円以上」のように、機械的に判定できるか。できるなら条件分岐は人が書く。
- 途中の結果によって、次に調べる場所や使う道具が変わるか。変わるならエージェントの候補。
- 間違いが外部に出る前に、人が差分や下書きを見られるか。見られないなら、エージェントに実行権限を渡さない。
- 同じ入力で毎回同じ結果が必要か。必要なら、固定ワークフローで、AIを使う工程を最小にする。
1と2が「いいえ」、3と4が「はい」、5が「いいえ」なら、エージェントを試す価値があります。それ以外は、まず固定の流れで作るほうが安全です。
AIに判定させる依頼文のひな形
自分の作業をAIに整理させるときは、次のような依頼文が使えます。作業内容は機密を含まない形に書き換えてから貼ってください。この依頼文は未実行の例で、出力の質は使うモデルによって変わります。
次の作業を自動化したいです。固定ワークフローとAIエージェントのどちらが向くか判定してください。
【作業の説明】
(例:毎朝届く注文メールから商品名と数量を抜き出し、在庫表に追記する)
【判定の条件】
- 手順を事前に書き出せるか(はい/いいえとその理由)
- 失敗した場合に実行前に人が気づけるか、取り返しがつくか
- 外部への送信、支払い、削除など、取り消しにくい操作が含まれるか
【出力形式】
1. 「固定ワークフロー」「エージェント」「エージェントは提案まで」のどれか
2. 手順の案(番号付き、AIが担当する工程に「AI」と印を付ける)
3. 人が承認すべき箇所
4. 判断に使った前提のうち、私に確認すべきもの返ってきた手順案は、そのまま採用せず、先ほどの5問と表で自分でも照らしてください。AIは作業の説明が曖昧だと、手順が固定かどうかを楽観的に判定することがあります。入力例を2〜3件添えると、判定の根拠が具体的になります。
エージェントに任せると決めたときの最低限の条件
エージェントを選ぶ場合も、次の三点は先に決めておきます。Anthropicの前掲記事も、エージェントには隔離された環境での十分なテストと適切なガードレールを勧めています。
- 使えるツールを必要なものだけに絞る(読み取り専用から始める)
- 取り消しにくい操作の前に人の承認を挟む
- 終了条件を決める(試行回数の上限、「分からなければ止まって質問する」など)
固定ワークフローで始め、「ここだけは毎回手順が変わって人手がかかる」という工程が見えてから、その工程だけをエージェントに置き換える順序が無理のない進め方です。

