負けた対局を相手と一緒に振り返る:感想戦の始め方
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オンラインで一局を終え、自分が負けたとします。盤面を眺めていると、相手から「中盤のあそこが分かれ目だったね」と切り出されます。確かにそうかもしれません。ただ、自分が一番引っかかっていたのは別の場所だったとしたら、会話はそこで少しずれてしまいます。感想戦(終わった対局を並べ直して語り合うこと)は、最初に選ぶ一手で、その後の二十分が学びの場にも、判定の場にもなります。 この記事が確かめるのは、対局後の会話をどの手から始めるとよいかです。「最も大きな悪手から」と考えがちですが、それが最善とは限りません。理由は次の節で考えます。そのうえで、勝った側も負けた側も気まずくなりにくい候補の選び方を、自分で試せる手順にします。 扱うのは、アソバースで対人戦ができる「潮目のオセロ」と「灯りのチェス」です。結果を保証する話ではなく、手順を用意して読者の対局で確かめてもらう形にします。
「ここが悪かったね」から始めない理由
勝った側が最初に悪手を指摘する進め方には、二つの弱点があります。
一つめは、評価が先に出てしまうことです。「悪手」という言葉が最初に置かれると、負けた側は理由を説明する前に、弁解か同意かを選ぶことになります。本当は何を考えて指したのかという、一番役に立つ情報が会話に出にくくなります。
二つめは、悪手が結果から逆算した判定になりやすいことです。終局を知っている目で見れば、負けにつながった手はどれも悪く見えます。ですが指した時点では、他の手も同じくらい良さそうに見えていたかもしれません。結果が出たあとの評価と、指した時点の迷いを混ぜると、振り返りが「正解探し」になります。
終盤から順にさかのぼる方法もあります。最後の局面は印象が強く、話しやすいのが長所です。しかし勝負が決まったあとの手は、すでに差がついた状態での対応であることが多く、そこだけ直しても次の対局につながりにくいかもしれません。逆に序盤から並べ始めると、定跡の暗唱大会になって長引きます。
そこで、始める手の基準を「正しさ」ではなく「二人の記憶に残っているか」に置き換えてみます。
話し始める手の三つの候補
記憶に残る手には、少なくとも次の三つのタイプがあります。
- 迷った手、誰の視点か:指した本人、話せること:検討した選択肢と、選んだ理由
- 驚いた手、誰の視点か:見ていた相手、話せること:予想との差と、そこから何を感じたか
- 流れが変わったと感じた手、誰の視点か:両者、話せること:局面の見え方の違い
迷った手は、考えた過程を話せるのが利点です。理由を言葉にすると、「最初から読めていなかった」のか「読んだが評価を誤った」のかが見えてきます。これは悪手かどうかとは別の情報です。
驚いた手は、相手に気づかされる材料になります。自分では普通に指した手が相手を驚かせていた、あるいは相手の意図が読めていなかった、というずれが出てきます。
流れが変わったと感じた手は、勝敗への影響を重視する見方です。ただしこの感覚は人によってずれやすく、二人が別の手を挙げることも珍しくありません。ずれること自体が話題になります。
三つのどれか一つに絞らず、まず各自が三つとも挙げるのが次の手順の骨子です。
始める手を決める手順
対局が終わったら、盤面を動かしたり評価を口にしたりする前に、次の順で進めてみてください。
- 各自が、紙やメモアプリに三つ書きます。「迷った手」「驚いた手」「流れが変わったと感じた手」を、手数かその場面の短い説明で一つずつです。思い出せなければ空欄で構いません。
- 書いたものを同時に見せ合います。先に片方が見せると、もう一方が合わせてしまうためです。
- 重なった手があれば、そこから始めます。重なりがなければ、負けた側の「迷った手」を先にします。
- 一つの手に使う時間を、先に決めます。たとえば一手三分としておけば、特定の局面に引きずられて長引くのを防げます。
- 三つの手を話したら、最後に「次に似た形が来たらどうするか」を一人一言ずつ言って終わります。
見せ合ったあとの読み方も、先に決めておくと迷いません。
- 「迷った」と「流れが変わった」が一致した場合:両者が重要な局面だと感じていた可能性が高いので、そこを最初に扱います。
- 自分の「迷った」と相手の「驚いた」が一致した場合:意図と受け取り方の差が見えやすい場面です。指した側が理由を、相手が驚いた理由を、順に話します。
- まったく重ならなかった場合:それも一つの情報です。同じ盤を見ていても重要な局面の感じ方が違うので、それぞれの手を一つずつ取り上げます。
手数をどう特定するか
手を挙げるには、どの手かを二人で確認できなければなりません。
「灯りのチェス」には、取った駒と全棋譜の表示があります。メモには手数の番号を書いておくと、並べ直すときに迷いません。チェスの手は標準の代数記法(e4、Nf3 のような書き方)で書けます。ただし長い手順を暗記する必要はありません。挙げる手は一つずつで十分です。
「潮目のオセロ」について、対局後に履歴が一覧で見られるかどうかは、この記事では確認していません。使える機能は作品を開いて確かめてください。見られない場合は、対局中に気になった場面を「角の近くで自分が置いたあの手」のように言葉で残すか、置いた順に手数を数えながら進めると、あとで特定できます。
なお「潮目のオセロ」のヒントと一手戻すは、ひとり対局でのみ使えます。オンラインの対局中に試すことはできません。気になった局面を後日ひとり対局で再現して、理由付きヒントを見てみる、という使い方はできそうです。そのために手順をメモしておく価値があります。
話し方の順番:負けた側と勝った側
始める手が決まっても、話し方で空気は変わります。ここでも順番の工夫が役立ちます。
負けた側:先に理由を、あとで評価を
「ここで間違えました」と先に結論を言うと、会話が反省会になります。代わりに、検討していた選択肢を二つ挙げ、どちらを選んだかを話してみます。「AとBで迷って、Bにしました。理由は〜です」という順です。評価を最後に付けると、勝った側も同じ土俵で考えられます。
勝った側:評価の前に質問を
勝った側が「その手は悪手だった」と言うと、勝者の判定になってしまいます。先に聞くのは次のような問いです。
- 「このとき、どこまで先を読んでいましたか」
- 「他に考えた手はありましたか」
- 「自分のこの手は、どう見えていましたか」
勝った側が自分の読みを先に開示するのも手です。「自分は実はここで不安でした」と言えると、負けた側が話しやすくなります。勝ちが運やミスの結果にすぎなかったという場合もあり、それを認められる人のほうが、相手と長く対局を続けられるでしょう。
注意したいのは、「次はこうすれば勝てる」と助言を押しつけることです。求められていないときは、何をどう考えたかの交換にとどめるほうが、お互いに後味が良くなります。
アソバースで振り返るときの条件
オンライン対戦は「潮目のオセロ」と「灯りのチェス」のみで、確認済みアカウントが部屋を作り、リンクで友達を一人招待します。この仕組みには、振り返りの前提として知っておきたい点がいくつかあります。
- チャットはありません。 フレンド機能とチャットは未提供なので、対局後の会話はアソバースの外で行うことになります。通話や普段使っているメッセージの手段を、対局前に相手と相談しておくと、終局後にそのまま始められます。連絡手段のやり取りは、相手の了承を得てからにしてください。
- 部屋と対戦履歴には期限があります。 部屋は24時間、部屋と対戦履歴は作成から7日後に削除対象です。後日に振り返るつもりなら、気になった手のメモを対局直後に残しておくと安心です。
- 同じ画面で遊べる場合もあります。 「灯りのチェス」には同じ画面でのふたり対局があります。隣に座って対局した場合は、盤を見ながら指で示せるので、最初の一手を決める時間も短くて済みます。
また、遅い時間や疲れているときの対局後は、感想戦が長くなりすぎる傾向があります。「今日は三手だけ話そう」と最初に決めておくのも、続けやすくするコツです。
起こりやすい誤りも挙げておきます。
- 記録せずに記憶だけに頼る。 終局直後は覚えているつもりでも、翌日には場面が混ざりがちです。三つのメモだけは残してください。
- 挙げる手が多すぎる。 五つも六つも挙げると、どれも浅くなります。三つまでが扱いやすい数です。
- 相手の挙げた手を否定する。 「そこは関係ない」と言わず、なぜその手を挙げたのかを先に聞いてみてください。
次の行動
次に対局する前に、相手へ「終わったら三つだけ書いて見せ合いませんか」と声をかけてみてください。メモに使うのは紙でもスマートフォンでも構いません。「迷った手・驚いた手・流れが変わった手」を一つずつ書いて、同時に見せ合うところから始められます。
その後、重なった手があったか、なかったかを記録しておくと、数局のうちに自分たちの会話の傾向が見えてきます。傾向が見えたら、一手に使う時間や話す順番を二人に合う形へ変えてみてください。



